PLレポート 食品安全(2026年1月)
2026.1.5
- 「PL レポート(食品安全)」は年4回発行します。食品衛生や食品安全に関する最近の主要動向を国内トピックスとして紹介するとともに、解説コーナーでは「食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策」と題し解説を行います。
国内トピックス:最近公開された食品衛生・食品安全に関する主な動向をご紹介します。
○ 2026年3月末期限:機能性表示食品の初回自己点検報告
—届出者が今すぐ確認すべきこと
2024年8月の食品表示基準改正および2025年4月の告示により、機能性表示食品の届出者には、届出事項の遵守状況について定期的に自己点検・評価を行い、その結果を消費者庁へ報告することが義務付けられた。初回の自己点検等報告は、届出番号が付与された日から起算して1年以内が期日であり、2025年3月31日までに届出番号が付与された機能性表示食品の初回報告期日は、2026年3月31日である。本稿では期日が迫る自己点検報告で、届出者が確認すべきポイントと注意点を整理した。
◆ 自己点検のポイント
届出者は届出様式の「様式Ⅶ 自己点検等報告」「別紙様式(Ⅶ)遵守の状況等の自己点検及び評価に関するチェックリスト」を使い、自己点検を行う。自己点検の結果は「機能性表示食品届出データベース」から報告する。
遵守状況の確認が必要な主な項目は以下のとおり。
① 安全性・機能性に関する新たな知見の収集と報告
届出をしている機能性関与成分について、安全性や機能性に関して新たな知見が出ていないかを確認する。機能性の評価に変更が生じるような否定的な知見が新たに得られた場合は、研究レビュー(システマティックレビュー、SR)を再度実施する必要がある。新たな知見について消費者庁長官に報告する必要が生じた場合、変更届出または撤回届出にて対応する。
② 生産・製造及び品質の管理
- 製造管理体制の確認(特にサプリメント)
天然抽出物等を原材料とする錠剤・カプセル剤等の場合、法令で定められたGMP基準に準拠した製造管理・品質管理の体制が確保されているかを確認する。
この項目については、2025年1月に消費者庁が公表した自己点検表※1を活用することができる。 - その他
機能性関与成分を含む原料の規格書等を適切に保管しているか、届出食品の規格が適切に定められているか、機能性関与成分について定期的に検査をしているか等を確認する。
機能性関与成分の定期的な検査については、毎年該当する期間内に試験検査を実施し、自己点検報告の際に試験成績書を提出する必要がある。例えば、今まで2年に1回の検査頻度であった場合は、自己点検に合わせて年1回の頻度で検査をし、結果を提出する必要がある。
③ 健康被害の情報の収集と報告
健康被害が発生した場合、消費者や医療従事者からその情報を収集し、適切に消費者庁長官や都道府県知事等に提供しているかを確認する。
◆ 自己点検に関する注意事項
- 届出が公表された状態であれば、販売の有無関係なく自己点検の対象となる。届出はしたが発売していないものや、終売予定のものも自己点検結果の報告が必要。撤回届出がされたものは自己点検報告が不要となる。
- 自己点検等報告は原則として届出データベースを使って行うが、期日までに行われない場合は、システム上の制限がかかり、対象商品のデータについて操作ができなくなる。点検結果報告期限を超過した場合は速やかに消費者庁に連絡する。
- 期日までに自己点検等報告の提出が無い届出は、機能性表示食品としての要件を欠くこととなり、容器等に機能性表示をして販売することができなくなる。
食品表示法第6条に基づき、機能性表示食品の要件を欠いた食品を販売した場合は指示、指示に従わない場合は命令を受けることとなる。指示または命令については食品表示法第7条に基づき公表される。
自己点検は、制度の信頼性を確保するための事業者の責務である。2025年11月末には、消費者庁が機能性表示食品の自己点検等報告に関する説明会※2を開催し、自己点検の具体的な方法等を示すとともに早めの対応を呼びかけている。GMP基準の自己点検表や機能性表示食品の届出等に関する手引き※3、機能性表示食品に関する質疑応答集※4等も活用し、期限に余裕をもって準備を進めることが推奨される。
※1)「天然抽出物等を原材料とする錠剤、カプセル剤等食品として届け出られた機能性表示食品の製造又は加工の基準に準拠した体制に係る自己点検表について」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms205_251126_01.pdf
自己点検表
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/assets/food_labeling_cms205_251126_02.docx
※2)機能性表示食品の自己点検等報告に関する説明会
https://www.caa.go.jp/notice/entry/043906/
※3)機能性表示食品の届出等に関する手引きhttps://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/assets/food_labeling_cms205_251001_41.pdf
※4)機能性表示食品に関する質疑応答集https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/notice/assets/food_labeling_cms205_251001_43.pdf
解説コーナー:食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策
【第3回】仕向地と日本との食品規制の違いと調査・対応のポイント
はじめに
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今年度の解説コーナーでは、日本の加工食品を海外に輸出する事業者が直面する食品安全上のリスクを理解していただき、その対策やポイント等の解説を連載しています。
第1回では、国内外の食品マーケットの動向、日本の加工食品の輸出状況とその特性や強み、加工食品の輸出に伴う主なリスクについて解説しました。
(【第1回】加工食品の海外輸出の現状とリスク対策の重要性:https://rm-navi.com/search/item/2215)
第2回では、国内外の食品事故の事例収集や活用方法を紹介し、事故情報をもとに自社のリスク管理体制を強化する重要性を述べました。
(【第2回】国内外の事故事例とリスク情報の調査・活用:https://rm-navi.com/search/item/2341)
第3回となる今回は、仕向地における規制の調査方法や対応ポイントについて解説します。国内の規制に準拠していたとしても、仕向地の規制に違反すると、輸出品の差し止めやリコール、ブランド毀損などにつながります。仕向地毎に異なる規制について、どのように調査・対応すべきかを学ぶことで、しかるべき対策を講じることが期待されます。
1.主な輸出先の規制概要と日本との違い
さまざまな規制の違いがある中で、今回は、健康危害に直結する原材料に関する規制とパッケージ表示に関する規制の違いについて日米欧で比較します。
(1)原材料に関する規制
健康危害のリスクに影響を及ぼす原材料の規制の一例として、食品添加物(成分および使用基準)や残留農薬基準に関するものが挙げられます。
食品添加物は、各国とも「ポジティブリスト制」(許可された添加物以外は使用不可となる制度)ですが、各国でポジティブリストとして指定された食品添加物が異なることに留意が必要です。なお、米国ではネガティブリスト(使用禁止成分リスト)も存在します。
残留農薬も、各国ともポジティブリスト制であるものの、各国で農薬成分や含有量の上限が異なることから、国内で調達する農水産物に含まれる農薬成分や残留量に留意が必要です。
表1:日本と米国・EU の原材料に関する規制の違い(例)
| 規制項目 | 日本 | 米国 | EU |
|---|---|---|---|
| 食品添加物 | 食用赤色 104 号※は使用可 (指定添加物として認可) ※ソーセージやかまぼこ等 に使用される合成着色 料のことを指し、フロキ シンBと呼ばれる |
左記添加物は使用不可 | 左記添加物は使用不可 |
| 残留農薬 | トマトに含まれる農薬成分 (アクリナトリン)の残留 量は0.5ppm以下 |
トマトに含まれる左記農薬 成分は不検出 |
トマトに含まれる左記農薬 の残留量は0.01ppm以下 (一律基準値) |
(2)パッケージ表示に関する規制
健康危害のリスクに影響を及ぼすパッケージ表示の規制の一例として、アレルゲン表示や栄養成分表示が挙げられます。
アレルゲン表示は、日本では義務表示と推奨表示の品目に区分されている一方で、米国や EU は義務表示のみです。また、日本の義務表示の対象ではない品目が米国や EU では義務表示の対象となるものもあります。
栄養成分表示については、日本では表示対象ではない項目があったり、栄養成分のうち一部のものはより細分化した形で表示することが求められていることが特徴です。なお、栄養成分表示は、各国とも下表 2 の丸番号順に記載することが法令で規制されています。
表2:日本と米国・EU のパッケージ表に関する規制の違い(例)
| 規制項目 | 日本 | 米国 | EU |
|---|---|---|---|
| アレルゲン 表示 |
◆ 義務表示8品目 ① 小麦、② えび、③ かに、 ④ そば、⑤ 卵、⑥ 乳、⑦ 落 花生、⑧ くるみ ◆ 推奨表示20品目 アーモンド・あわび・いか・ いくら・オレンジ・カシュ ーナッツ・キウイフルーツ・ 牛肉・ごま・さけ・さば・大 豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マ カダミアナッツ・もも・や まいも・りんご・ゼラチン |
◆ 義務表示9項目 ① 小麦、② 甲殻類(えび、 かに、ロブスター等)、③ 卵、 ④ 魚類(バス、ヒラメ、タ ラ等)、⑤ 落花生、⑥ 大豆、 ⑦ 乳、⑧ 木の実(アーモン ド、くるみ、ペカンナッツ 等)、⑨ ごま |
◆ 義務表示14項目 ① 穀物(大麦、オーツ麦、 小麦、ライ麦、これらの交 雑種)、② 甲殻類、③ 卵、④ 魚類、⑤ 落花生、⑥ 大豆、 ⑦ 乳、⑧ 木の実(アーモン ド、くるみ等、計9種類)、 ⑨ ごま、⑩ 軟体動物、⑪ マ スタード、⑫ セロリ、⑬ ルピナス、⑭ 二酸化硫黄およ び亜硫酸塩(10㎎/㎏または 10㎎/L以上) |
| 栄養成分 表示 |
義務表示5項目 ① エネルギー、② たんぱく 質、③ 炭水化物、④ 脂質、 ⑤ 食塩相当量(ナトリウム) |
義務表示10項目(細分化す ると15項目) ① エネルギー、② 総脂質(③ 飽和脂肪酸、④ トランス脂 肪酸)、⑤ コレステロール、 ⑥ ナトリウム、⑦ 総炭水化 物(⑧ 食物繊維、⑨ 糖類、 (⑩ 添加糖))、⑪ たんぱく 質、⑫ ビタミン D、⑬ カル シウム、⑭ 鉄、⑮ カリウム |
義務表示5項目(細分化す ると7項目) ① エネルギー、② 脂質(③ 飽和脂肪酸)、④ 炭水化物 (⑤ 糖類)、⑥ たんぱく質、 ⑦ 食塩 |
日本貿易振興機構や食品産業センター、農林水産省の資料に基づき、当社にて作成
2.仕向地の規制の調査方法
上記で示したように、日本と仕向地毎に規制内容に違いがあります。以下に、各組織・団体が公表している仕向地の規制に関する主な情報源(資料名・概要・URL)の一例を示します。
表3:仕向地の規制に関する主な情報源
| 組織・団体 | 資料名 | 概要 | URL |
|---|---|---|---|
| 日本貿易振 興機構 |
日本からの輸 出に関する制 度 |
各国・地域の輸入に関する諸規制について 品目、国・地域ごとに確認できる。 (参照できる諸規制の一例)
|
https://www.jetro.go.jp/industry/foods/exportguide/ |
| 食品産業セ ンター |
海外食品添加 物規制早見表 |
着色料・乳化剤・調味料等の食品添加物に ついて、10 か国・地域での使用可否を一覧 で確認できるとともに、それぞれの使用基 準(食品毎の使用量の上限)についても比 較している。 |
https://yushutukisei.com/food_additives_list/ |
| 農林水産省 | 諸外国におけ る残留農薬基 準値に関する 情報 |
コメ、青果物、茶等の主要15品目におい て、日本で残留農薬基準値の設定がある農 薬成分に対して、国際基準(Codex)を始 め、20か国・地域で比較している。 |
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/zannou_kisei.html |
| 農林水産物・食 品輸出の際に 輸出国政府当 局が要求する 可能性のある 証明書等につ いて |
各農林水産物や加工食品に対して、輸出手 続きや証明書等が仕向地や品目等により、 要求されるものが異なることから、証明書 類等を棚卸した上で、俯瞰できるように一 覧表にしている。 |
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/seido/ |
3.仕向地の規制を踏まえた加工食品の製造に関する留意ポイント
上記で得られた調査結果を踏まえ、輸出する商品を製造する場合に留意すべきポイントの一例を、以下の2パターンで示します。
① 日本の商品をパッケージ表示のみ変更し、輸出する場合
②新たに仕向地用の商品を製造し、輸出する場合
表4:仕向地へ輸出する商品を製造する場合に留意すべきポイントの一例
| ステップ | 主な作業(共通) | ① 表示のみ変更 | ② 新規製造 |
|---|---|---|---|
| 1.食品規制の 調査 |
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― | ― |
| 2.リスク評価 |
|
の検討を終了するか、新 規製造(もしくは既存製 品の改良)による輸出の 検討に移行する ⇒満たす場合はパッケージ 表示の差分(アレルゲン や栄養成分表示等)の洗 出しを行う |
|
| 3.リスク評価 を踏まえた 検査や試験 等 |
|
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| 4.仕様書・表 示案作成 |
|
― | ― |
| 5.製造準備 |
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― |
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※特別な留意点はないものの、製造準備以降のステップ(製造・出荷)においても、もちろん抜け漏れのない対応が求められます。
おわりに
仕向地ごとの規制の理解は、海外輸出における食品安全の実現に向けて、根幹をなす重要なポイントです。規制の違いを正確に把握し、適切な調査・対応を継続することで、輸出に伴うリスクの低減と信頼性の高い事業運営が可能となります。
次回(第4回)は、これまでのリスク対策を抜け漏れなく、かつ体系的に運用するための食品安全マネジメントシステム(FSMS)の活用方法について解説する予定です。
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