コラム/トピックス

食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策 【第3回】仕向地と日本との食品規制の違いと調査・対応のポイント

2026.1.30

はじめに

今年度の解説コーナーでは、日本の加工食品を海外に輸出する事業者が直面する食品安全上のリスクを理解していただき、その対策やポイント等の解説を連載しています。

第1回では、国内外の食品マーケットの動向、日本の加工食品の輸出状況とその特性や強み、加工食品の輸出に伴う主なリスクについて解説しました。
(【第1回】加工食品の海外輸出の現状とリスク対策の重要性:https://rm-navi.com/search/item/2215

第2回では、国内外の食品事故の事例収集や活用方法を紹介し、事故情報をもとに自社のリスク管理体制を強化する重要性を述べました。
(【第2回】国内外の事故事例とリスク情報の調査・活用:https://rm-navi.com/search/item/2341

第3回となる今回は、仕向地における規制の調査方法や対応ポイントについて解説します。国内の規制に準拠していたとしても、仕向地の規制に違反すると、輸出品の差し止めやリコール、ブランド毀損などにつながります。仕向地毎に異なる規制について、どのように調査・対応すべきかを学ぶことで、しかるべき対策を講じることが期待されます。

1.主な輸出先の規制概要と日本との違い

さまざまな規制の違いがある中で、今回は、健康危害に直結する原材料に関する規制とパッケージ表示に関する規制の違いについて日米欧で比較します。

(1)原材料に関する規制

健康危害のリスクに影響を及ぼす原材料の規制の一例として、食品添加物(成分および使用基準)や残留農薬基準に関するものが挙げられます。

食品添加物は、各国とも「ポジティブリスト制」(許可された添加物以外は使用不可となる制度)ですが、各国でポジティブリストとして指定された食品添加物が異なることに留意が必要です。なお、米国ではネガティブリスト(使用禁止成分リスト)も存在します。

残留農薬も、各国ともポジティブリスト制であるものの、各国で農薬成分や含有量の上限が異なることから、国内で調達する農水産物に含まれる農薬成分や残留量に留意が必要です。

表1:日本と米国・EU の原材料に関する規制の違い(例)

規制項目 日本 米国 EU
食品添加物 食用赤色 104 号は使用可
(指定添加物として認可)
※ソーセージやかまぼこ等
に使用される合成着色
料のことを指し、フロキ
シンBと呼ばれる
左記添加物は使用不可 左記添加物は使用不可
残留農薬 トマトに含まれる農薬成分
(アクリナトリン)の残留
量は0.5ppm以下
トマトに含まれる左記農薬
成分は不検出
トマトに含まれる左記農薬
の残留量は0.01ppm以下
(一律基準値)

(2)パッケージ表示に関する規制

健康危害のリスクに影響を及ぼすパッケージ表示の規制の一例として、アレルゲン表示や栄養成分表示が挙げられます。

アレルゲン表示は、日本では義務表示と推奨表示の品目に区分されている一方で、米国や EU は義務表示のみです。また、日本の義務表示の対象ではない品目が米国や EU では義務表示の対象となるものもあります。

栄養成分表示については、日本では表示対象ではない項目があったり、栄養成分のうち一部のものはより細分化した形で表示することが求められていることが特徴です。なお、栄養成分表示は、各国とも下表 2 の丸番号順に記載することが法令で規制されています。

表2:日本と米国・EU のパッケージ表に関する規制の違い(例)

規制項目 日本 米国 EU
アレルゲン
表示
◆ 義務表示8品目
① 小麦、② えび、③ かに、
④ そば、⑤ 卵、⑥ 乳、⑦ 落
花生、⑧ くるみ
◆ 推奨表示20品目
アーモンド・あわび・いか・
いくら・オレンジ・カシュ
ーナッツ・キウイフルーツ・
牛肉・ごま・さけ・さば・大
豆・鶏肉・バナナ・豚肉・マ
カダミアナッツ・もも・や
まいも・りんご・ゼラチン
◆ 義務表示9項目
① 小麦、② 甲殻類(えび、
かに、ロブスター等)、③ 卵、
④ 魚類(バス、ヒラメ、タ
ラ等)、⑤ 落花生、⑥ 大豆、
⑦ 乳、⑧ 木の実(アーモン
ド、くるみ、ペカンナッツ
等)、⑨ ごま
◆ 義務表示14項目
① 穀物(大麦、オーツ麦、
小麦、ライ麦、これらの交
雑種)、② 甲殻類、③ 卵、④
魚類、⑤ 落花生、⑥ 大豆、
⑦ 乳、⑧ 木の実(アーモン
ド、くるみ等、計9種類)、
⑨ ごま、⑩ 軟体動物、⑪ マ
スタード、⑫ セロリ、⑬
ルピナス、⑭ 二酸化硫黄およ
び亜硫酸塩(10㎎/㎏または
10㎎/L以上)
栄養成分
表示
義務表示5項目
① エネルギー、② たんぱく
質、③ 炭水化物、④ 脂質、
⑤ 食塩相当量(ナトリウム)
義務表示10項目(細分化す
ると15項目)
① エネルギー、② 総脂質(③
飽和脂肪酸、④ トランス脂
肪酸)、⑤ コレステロール、
⑥ ナトリウム、⑦ 総炭水化
物(⑧ 食物繊維、⑨ 糖類、
(⑩ 添加糖))、⑪ たんぱく
質、⑫ ビタミン D、⑬ カル
シウム、⑭ 鉄、⑮ カリウム
義務表示5項目(細分化す
ると7項目)
① エネルギー、② 脂質(③
飽和脂肪酸)、④ 炭水化物
(⑤ 糖類)、⑥ たんぱく質、
⑦ 食塩

日本貿易振興機構や食品産業センター、農林水産省の資料に基づき、当社にて作成

2.仕向地の規制の調査方法

上記で示したように、日本と仕向地毎に規制内容に違いがあります。以下に、各組織・団体が公表している仕向地の規制に関する主な情報源(資料名・概要・URL)の一例を示します。

表3:仕向地の規制に関する主な情報源

組織・団体 資料名 概要 URL
日本貿易振
興機構
日本からの輸
出に関する制
各国・地域の輸入に関する諸規制について
品目、国・地域ごとに確認できる。
(参照できる諸規制の一例)
  1. 食品規格
  2. 残留農薬および動物用医薬品
  3. 重金属および汚染物質
  4. 食品添加物
  5. 食品包装(食品容器の品質または基準)
  6. ラベル表示
  7. その他
https://www.jetro.go.jp/industry/foods/exportguide/
食品産業セ
ンター
海外食品添加
物規制早見表
着色料・乳化剤・調味料等の食品添加物に
ついて、10 か国・地域での使用可否を一覧
で確認できるとともに、それぞれの使用基
準(食品毎の使用量の上限)についても比
較している。
https://yushutukisei.com/food_additives_list/
農林水産省 諸外国におけ
る残留農薬基
準値に関する
情報
コメ、青果物、茶等の主要15品目におい
て、日本で残留農薬基準値の設定がある農
薬成分に対して、国際基準(Codex)を始
め、20か国・地域で比較している。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/zannou_kisei.html
農林水産物・食
品輸出の際に
輸出国政府当
局が要求する
可能性のある
証明書等につ
いて
各農林水産物や加工食品に対して、輸出手
続きや証明書等が仕向地や品目等により、
要求されるものが異なることから、証明書
類等を棚卸した上で、俯瞰できるように一
覧表にしている。
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_info/seido/

3.仕向地の規制を踏まえた加工食品の製造に関する留意ポイント

上記で得られた調査結果を踏まえ、輸出する商品を製造する場合に留意すべきポイントの一例を、以下の2パターンで示します。

① 日本の商品をパッケージ表示のみ変更し、輸出する場合
②新たに仕向地用の商品を製造し、輸出する場合

表4:仕向地へ輸出する商品を製造する場合に留意すべきポイントの一例

ステップ 主な作業(共通) ① 表示のみ変更 ② 新規製造
1.食品規制の
調査
  • 仕向地の規制(輸出
    に必要な添付書類含
    む)調査
2.リスク評価
  • 添加物・残留農薬の
    許容差、アレルゲン
    の有無、栄養表示算
    出方法を評価
  • 現行商品の配合成分が仕
    向地の規制を満たすかを
    確認
⇒満たさない場合は、輸出
の検討を終了するか、新
規製造(もしくは既存製
品の改良)による輸出の
検討に移行する
⇒満たす場合はパッケージ
表示の差分(アレルゲン
や栄養成分表示等)の洗
出しを行う
  • 代替添加物の使用可否
    や配合変更の影響(食
    味や色味・保存性等)
    の評価
  • 原材料候補の残留農薬
    リスク(産地や季節に
    応じた農薬使用等)の
    評価
3.リスク評価
を踏まえた
検査や試験
  • 必要な分析検査(残
    留農薬、アレルゲン
    検査、栄養分析等)、
    試作試験
  • 国内との差分について分
    析・検査等(アレルゲ
    ン、残留農薬、栄養成分
    値の再計算等)
  • 調達原材料の受入検査
    体制の確認
  • 製造ライン変更の要否
  • 最終商品の試作・保存
    試験
4.仕様書・表
示案作成
  • 現地語での商品仕様
    書やパッケージ表示
    版下(ゲラ)の作
    成、輸入業者等の確
    認依頼
5.製造準備
  • 製造指示書作成や使
    用包材(現地語のシ
    ール)、使用原材料の
    準備
  • 原材料の仕向地用の分
    別保管

※特別な留意点はないものの、製造準備以降のステップ(製造・出荷)においても、もちろん抜け漏れのない対応が求められます。

おわりに

仕向地ごとの規制の理解は、海外輸出における食品安全の実現に向けて、根幹をなす重要なポイントです。規制の違いを正確に把握し、適切な調査・対応を継続することで、輸出に伴うリスクの低減と信頼性の高い事業運営が可能となります。

次回(第4回)は、これまでのリスク対策を抜け漏れなく、かつ体系的に運用するための食品安全マネジメントシステム(FSMS)の活用方法について解説する予定です。

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