【終了】<2026年10月法改正対応>就活ハラスメント・カスタマーハラスメント対策のポイント
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ウェルビーイングの観点で 自社の仕事をとらえ直す〜人に関する開示“TISFD”フレームワークβ版(Beta Version 0.1)を起点として〜【RMFOCUS 第99号】
MS&ADインターリスク総研は2026年7月、ウェルビーイングの専門家であり、公益財団法人Well-being for Planet Earth代表理事の石川善樹氏にインタビューを行った。テーマは、「ウェルビーイングの観点からみた今後のビジネスの在り方」で、開発が進められている人・社会に関する情報開示の国際的枠組み 「TISFD」も踏まえながら話を聞いた。以下、その概要を紹介する。
TISFD(表1)とは、Taskforce on Inequality and
Social-related Financial Disclosuresの略称で、日本語に訳すと、「不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース」となります。気候関連財務情報開示を促してきたTCFD、自然関連のTNFDに続く「人・社会」に関する開示枠組として位置付け
られ、詳細内容の検討が進められています。
| TISFDとは何か |
|---|
| ・企業・金融機関による「人・社会に関する情報」の開示を整理する、新たな国際フレームワーク 正式名称はTaskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures |
| ・気候分野のTCFD、自然分野のTNFDに続く、「人・社会」に関する枠組みとしての位置付け 枠組みは、TCFDやTNFDと同様、ガバナンス/戦略/インパクト・リスク管理/指標・目標の4本柱を基本としている |
| ・企業・金融機関と人との関係を、影響と依存で整理し、そこから生じるリスクと機会を開示 企業活動が労働者、消費者、地域社会などにどのような影響を及ぼすかに加え、事業が労働力、地域社会、社会的信頼や安定性といった人や社会に関わる基盤にどのように依拠しているかを明らかにしようとしている |
(出典:TISFDフレームワークβ版を基にMS&ADインターリスク総研作成)
TISFDはその名前のとおり、「不平等」に対して強い問題意識を持っています。
人権をはじめとする世界的な取り組みがなされてきたにもかかわらず、今なお世界では格差が拡大し、十分な生活水準を確保できない就労者が多数存在します。加えて、AIの進展や気候変動が、雇用、所得などの不均衡をさらに広げるおそれがあります。しかし、企業や投資家がこうした「人に関する問題」を把握するための情報は、現状では断片的で、国際的な比較可能性に乏しい状況にあります。このような社会的背景を踏まえて、TISFDフレームワークによる開示の試みが行われているといえます。
TISFDに関するこれまでの経緯ですが、2024年9月に企業・金融機関・市民社会・労働団体などから成る、国際的なマルチステークホルダー組織が設立され、2026年5月にはフレームワークβ版が発表されました。その後、改訂が重ねられ、2027年末に最終版が公表される予定となっています(表2)
| 時期 | 主な動き・予定 |
|---|---|
| 2024年9月 | 企業・金融機関・市民社会・労働団体などによる国際的マルチステークホルダー組織と してTISFDが設立 |
| 2025年10月 | Conceptual Foundations Discussion Paperを公表 企業・金融機関と人、格差、社会との関係をどうとらえるかという概念の土台を提示 |
| 2026年5月 | フレームワークβ版を公表 ガバナンス、戦略、インパクト・リスク管理など、開示枠組のたたき台を提示 |
| 2026年後半~ 2027年 | フレームワークβ版の改訂(Version0.2、Version0.3)を予定 指標・目標、実務ガイダンスなどを段階的に拡充 |
| 2027年末 | 最終版公表予定 |
(出典:TISFDフレームワークβ版を基にMS&ADインターリスク総研作成)
先ほど述べたように、従来人にまつわる課題は「人権が守られているか」「最低賃金が支払われているか」といった最低基準の観点から語られることが多くありました。しかし、不平等の是正ということを考えると、最低基準を満たしているかどうかだけでは、人々の間にどのような差が存在しているのか、すなわち格差の実態までは見えず、十分ではないと言えます。この課題を補うために、TISFDではウェルビーイングが重要な概念として位置付けられています。ウェルビーイングは直訳すれば「よい状態」であり、人権のような「最低基準」だけでは測れない「格差」や「不平等」を表すことができます。
例えば、賃金であれば、最低賃金を支払っていることだけで
ウェルビーイングな状態とはいい切れません。生活賃金という観
点もありますし、さらに進んで、その人が日常生活や人生設計において、過度な不安がなく暮らし、自ら望む生き方に向かうことが
できているかという観点もあります(これをファイナンシャル・ウェルビーイングと表現することもあります)。同じ企業に属していて
も、ウェルビーイングを実感できている人とそうでない人が存在するかもしれませんし、バリューチェーン上でも同様の格差は起こりえます。
こうした考え方は、フレームワークβ版において「人々の状態」
という概念図として示されています(図1)。この概念図では、まず人権という最低基準が土台にあり、その上に個人のウェルビーイングが位置付けられています。さらに、個人のウェルビーイングは、その人を取り巻く経済や社会の状態が健全であるかどうかにも影響を受けることが示されています。

(出典:TISFDフレームワークβ版より引用、和訳はMS&ADインターリスク総研作成)
このように、ウェルビーイングという概念では、「開示対象と
なる人が実際にどのような状態にあるのか」を重視します。人に関する開示では、女性管理職比率、有給休暇取得率、育児休業取得率などが重要な指標ですが、一般的にはこれらは数値の開示のみで終わってしまい、その数値の結果として人々の状態がどうなっているかはわかりません。女性管理職のうち、どれだけの人がウェルビーイングを実感しているのか。男性管理職との間にウェルビーイングの差はないのか。育児休業は本人や家族のウェルビーイングに資する制度として機能しているのか。ウェルビーイングの視点は、こうした「質」に着目する問いを生み出します。
なお、ウェルビーイングとは、厳密な単一の定義を持つ概念ではありません。TISFDのフレームワークβ版 も、ウェルビーイングを一義的に定義するというより、ウェルビーイングと関連する事項を紹介し、企業が自らの文脈において「何をよい状態とみなすのか」を考えるためのヒントを提示しているにとどまります。
特に注目すべきなのは、「システムレベル」という視点です。
これは、人の問題や格差の問題を、自社の従業員や直接の取引先に限定してとらえるのではなく、自社の事業が組み込まれているバリューチェーン全体、さらにはそれを支える地域社会や社会の基盤との関係の中でとらえようとするものです。つまり、個別の企業活動の影響だけでなく、雇用、地域の持続可能性、社会的信頼、制度の安定性といった、事業の前提となる環境まで視野に入れて考える点に特徴があります。
自社の事業が、自社で働く人々や地域社会のウェルビーイングに支えられているという関係は、短期的な数値の変化だけでは十分に把握できないため、中長期的な時間軸の中でとらえる必要があります。
こうした議論は、新たな開示のテーマとして受け止められがちですが、日本企業は「三方よし」に代表されるように、以前よりこうした視点を持って経営をしてきたと私は考えています。これまで企業が掲げてきたミッション、ビジョン、バリューを、ウェルビーイングや「システムレベル」の観点から再解釈する作業として理解するのが適切ではないでしょうか。
これは、TISFDの問題意識を理解するうえで最も重要な論点の一つです。
例えば、地方に重要な工場や部品供給を担う町工場を抱える製造業を想定してみましょう。当該地域で少子高齢化と人口流出が進む中で、若年層が地元産業に魅力を感じなくなれば、将来的に自社の事業に必要な人材は確保できなくなります。地域の活力低下は、単なる社会問題にとどまらず、工場の雇用維持や供給継続性の問題として企業に跳ね返ります。つまり、地域社会のウェルビーイングは、企業にとって外部の問題ではなく、事業継続の基盤そのものといえるのです。
さらに、投資家からの要請という側面も見逃せません。年金基金のような長期投資家は、個別企業の短期収益だけでなく、社会全体の安定や成長可能性を重視します。
例えば、TISFDの設立機関の一つで、世界の約5,000の資産運用会社、アセットオーナーなどの機関からなり、総運用資産額が139.6兆米ドルにのぼっているPRI(国連責任投資原則)1)を見てみましょう(表3)。PRIでは、短期的で、部分最適を偏重するような企業や業界の行動によって、経済パフォーマンスの低下や社会・環境への悪影響を招くという問題意識から、システムレベルリスクへの対応2)を極めて重要視しています。
| [1] 私たちは、ESG課題を投資分析および意思決定プロセスに組み込みます。 |
| [2] 私たちは、積極的な所有者となり、ESG課題を所有方針および所有実務に組み込みます。 |
| [3] 私たちは、投資先の主体に対し、ESG課題に関する適切な開示を求めます。 |
| [4] 私たちは、投資業界における本原則の受容と実施を推進します。 |
| [5] 私たちは、本原則の実施における有効性を高めるために協働します。 |
| [6] 私たちは、それぞれが本原則の実施に向けた活動と進捗について報告します。 |
(出典:PRI「責任投資原則」を基にMS&ADインターリスク総研作成)
PRIには各国の年金基金や運用会社が署名しており、日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が代表として挙げられます。数多くの投資家が、長期目線で企業の業績を見ていることに鑑みれば、企業としてもシステムレベルでのウェルビーイングという観点を無視できないことがわかるでしょう。
最も理解しやすいのは、調達や供給のリスクです。例えば、自社から離れた場所にある工場や、原材料を輸入している産地において労働者のウェルビーイングが低下し、当該地域から人口が流出した場合を考えてみます。その結果、当該地域での労働力の確保が難しくなれば、企業は従来の調達先から安定的に部品・原材料を確保できなくなります。
代替調達先が見つからない場合には供給が不安定化しますし、代替先が見つかった場合でも、調達コストが上昇したにもかかわらず価格転嫁が難しい場合には、企業の利益率が圧迫されます。
さらにいうと、社会全体で低賃金や不安定な就労、地域での生活基盤の悪化が広がると、家計の経済的安定と購買力が損なわれます。そうなると、とりわけ低所得層を中心に消費が抑制され、総需要が低下し、結果として業績悪化という形で企業に返ってきます。
以上のように、中長期的な影響を考慮すると、ウェルビーイングを軽視することで、目に見えにくいかたちで将来の経営リスクが蓄積されるといっても過言ではありません。
この問いに対する答えは、三つあります。
一つ目は、自社の仕事の「手触り感」が生まれることです。
現代の企業活動は複雑化・専門化が進み、従業員は自らの担当領域に限定して仕事をしがちです。その結果、自社の事業の 全体がどのように連続しており、どのような人々に支えられているのかが見えにくくなっています。TISFDの観点で事業を見直すことは、その全体像をもう一度描き直すことにほかなりません。 自社の仕事が、どの地域で、どのような人々の営みに支えられて成り立っているのかを理解することは、従業員にとって、日々の業務を単なる担当作業としてではなく、より大きな価値創造の一部としてとらえ直す契機になります。すなわち、仕事に「手触り感」が生まれてきます。
二つ目は、社外への説明に説得力が生まれることです。
現在も、多くの企業は統合報告書などを通じて自社の価値創造ストーリーを示しています。しかし、それらの多くは抽象的であり、実際にどのような人々や地域との関係のなかで価値が生まれているのかまでは伝わりにくいのが現状です。TISFDの枠組みを通じて、自社事業がどのような人や地域に依拠しているのか、 そこでどのようなリスクと機会が生じているのかが見えてくると、説明の内容に具体性が生まれます。これにより、投資家に対する中長期的な事業の持続可能性に対する説得力が増すことが期待されます。
さらに大きな文脈で言えば、いま2030年にゴールをむかえるSDGsの次なる国際アジェンダとしても、「ウェルビーイング」に注目が集まっています。そういう意味では、TISFDはBeyond
SDGs時代の「情報インフラ(ビジネス共通言語)」として大いなる役割を果たすことになるでしょう。
三つ目は、「次の一手」が見えやすくなることです。
全体像を把握すると、どこに構造的な脆弱性があるのか、どこに改善余地や成長機会があるのかが見えてきます。社内制度と現場実感のずれ、調達先で起きている問題、地域との関係の希薄化など、従来は見過ごされてきた論点が浮かび上がる可能性があります。これは、経営課題の発見や優先順位づけ、さらには具体的な対応策の検討といった「次の一手」につながります。
近年の潮流を一言で表すなら、WX(ウェルビーイング・トランスフォーメーション)と呼ぶべき動きの進展です。
これまで企業変革は、主としてサステナビリティの文脈で語られてきました。しかし現在は、そこに「この意思決定は、誰のどのようなウェルビーイングに影響するのか」という問いが含まれ始めています。経営判断、人事制度、報酬制度、働き方改革、商品・サービス設計など、あらゆる領域にウェルビーイングの観点が追加されつつあります。
例えば、人事評価制度を見直す場合でも、単に制度と実態の
整合性や生産性向上だけではなく、それが従業員の日々の働き方や安心感、ファイナンシャル・ウェルビーイングにどのような影響を及ぼすかが問われるようになります。
米調査会社のギャラップ社がウェルビーイングの要素(表4)として掲げているような、ウェルビーイングの考え方というのは、これまでにもありましたが、最近では一歩踏み込んで企業のウェルビーイング経営を支援するガイドや事例集の整備も進んでいます。こうした動向を踏まえると、TISFDは企業変革の潮流の中にあると見るべきです。
| 要素 | 定義 |
|---|---|
| キャリア・ ウェルビーイング | 日々の過ごし方や、毎日していることを好きでいられること |
| ソーシャル・ ウェルビーイング | 人生において強い人間関係と愛情を持っていること |
| ファイナンシャル・ ウェルビーイング | 自分の経済生活をうまく管理すること |
| フィジカル・ ウェルビーイング | 健康であり、日々のことをこなすのに十分なエネルギーを持っていること |
| コミュニティ・ ウェルビーイング | 自分が住む地域とのつながりや関わりを感じていること |
(出典:GALLUP「The Five Essential Elements of Well-Being」4)を基にMS&ADインターリスク総研作成)
まず強調しておきたいのは、現時点でのTISFDを、実務マニュアルとして読むべきではないということです。フレームワークβ版は、あくまで概念整理と開示の方向性を示した初期段階の文書であり、指標や目標、詳細な実務ガイダンスが記載されているものではありません。実際、フレームワークβ版では、今後の検討課題として、不平等に関する整理の深掘り、重要性判断 (マテリアリティ)の取り扱い、システムレベルリスクの把握方法、シナリオ分析、指標・目標の整備といった論点を挙げています。
そのため、現段階で企業担当者が取るべき姿勢は、細かい開示の方法論を検討することではなく、自社の事業をウェル ビーイングの観点からとらえ直すことだといえるでしょう。
その際には、最初から自社の全事業を網羅的に把握しようとするよりも、まず主力事業や象徴的な事業を一つ選んで始めてみることをお勧めします。その事業が、どのような人々によって支えられ、どのような地域、取引先、またはどのような制度の上に成り立っているのかを整理していくことで、自社の事業の輪郭が見えやすくなります。
重要なのは、可能な限り現場に直接触れることです。人に関する問題は、机上の資料や集計データだけでは十分に把握できません。調達先、工場、地域拠点、販売現場などを実際に見ることで、数字だけでは見えない実態や温度感が浮かび上がってきます。TISFDは人に関する開示である以上、「開示対象となる人の顔が思い浮かぶかどうか」が、大きな分かれ目になります。
TISFDを新しい開示義務としてとらえるのではなく、自社の事業を支えている人や社会との関係を見つめ直し、これからの戦略や改善の方向性を考えるための契機として位置付けてもらうことを期待しています。
参考文献・資料等
1)PRI「About the PRI」<https://www.unpri.org/about-PRI>(最終アクセス2026年8月21日)
2)PRI「ACTIVE OWNERSHIP 2.0: THE EVOLUTION STEWARDSHIP URGENTLY NEEDS」P3, 2019年11月
3)PRI「What are the Principles for Responsible Investment?」<https://www.unpri.org/about-PRI/what-principles-for-responsible-investment>(最終アクセス2026年8月21日)
4)GALLUP「The Five Essential Elements of Well-Being」<https://www.gallup.com/workplace/237020/five-essential-elements.aspx>(最終アクセス2026年7月23日)
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MS&ADインシュアランスグループ リスクマネジメント情報誌 【RMFOCUS 第99号】
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健康経営優良法人2027 ~認定制度の変更点と今後の方向性~ 【人的資本・健康経営インフォメーション(2026年9月)】
2026年8月17日より健康経営優良法人2027の申請が開始された。前回の健康経営優良法人2026において大規模法人部門3,761社、中小規模法人部門23,077社が認定され(2026年5月12日時点)、制度開始以降、申請企業数・認定企業数ともに右肩上がりで増加している。大規模法人では、既に対象企業の約1/3が認定を受けており、今後もさらに認定企業は増加することが見込まれ、より健康経営の取り組みが一般化することが予想される。
一方で、中小規模法人では、認定企業数自体は増えているものの対象企業数に対する割合でみると1%にも達していない。経済産業省および認定事務局では、①インセンティブ等による動機づくり、②中小企業向けのメリットや取り組みの情報発信、③経営支援機関等との連携によるサポート体制の整備を軸に、新たに健康経営に着手する法人の裾野拡大に向け取り組んでいく方針としている。
また、健康経営優良法人認定の設問(アンケート項目含む)においては、扱われるテーマが多岐にわたり、求められるレベルの高度化も進んでいる。テーマについては、新たな法制度や中長期的な政策の方向性が反映されることが多く、特に大規模法人部門ではその傾向が強い。
さらに、経済産業省は、健康経営が資本市場等において適切に評価される環境整備を進めており、企業による情報開示の充実・標準化も重要な政策課題として位置付けている。こうした中、今年度、健康経営に関する情報開示の指針(仮称)の策定を進めており、次年度以降の設問に反映される可能性も高い。
今年度のスケジュールは概ね昨年度と変わりない。8月17日(月)に「健康経営優良法人2027」の申請が開始され、大規模法人部門は2026年10月9日(金)17時、中小規模法人部門は2026年10月16日(金)17時が締め切りとなる。
今年度も認定申請料の変更はなく、大規模法人部門は税込88,000円(グループ会社との合算で申請する場合は、1法人あたり税込16,500円を加算)、中小規模法人部門は税込16,500円となる。なお、大規模法人部門においては、認定審査を受けず、健康経営度調査票に回答するだけでも、評価や順位を記したフィードバックシートを受領することができる(その場合、認定申請料は不要)。
健康経営銘柄に継続的に選定されている企業をさらに評価・ブランド化する仕組みとして、「健康経営銘柄Premier(プレミア)」が新設された。健康経営銘柄に複数回選定されるなど、長期間にわたり高い水準で健康経営を実践してきた企業を評価することで、健康経営の質のさらなる向上を促すことを目的としている。また、新たなロゴやPR資材、優先的な事例紹介等を通じて、他企業のロールモデルとなる取り組みを社会へ発信することを想定している。
選定要件は、①健康経営銘柄に通算10回以上選定、②当該年度も健康経営銘柄に選定、③地域や取引先企業等への健康経営の普及活動を実施していることの3点である。次年度以降は、ホワイト500の認定継続を条件として「Premier」の称号を維持できる仕組みとなっている。
政策的に企業の取り組みを促進したいテーマについて、先進的・実効的な取り組みを行う企業を選定し、「テーマ別ベストプラクティス」として公表する仕組みが新設された。対象テーマは、①女性の健康保持・増進、②仕事と介護・治療・子育ての両立支援、③睡眠の質向上、④高年齢従業員に配慮した健康づくり・職場環境整備、⑤その他の5つである。大規模法人部門から10社、中小規模法人部門から40社の選定が予定されており、当該法人の優れた取り組みの発信を通じ、他企業への波及効果が期待される。
なお、テーマ別ベストプラクティス選定へのエントリーを申し込む設問は各部門のアンケート項目に設定されており、優良法人認定や銘柄・ホワイト500等の選定には影響しない。この仕組みは、総合評価かつ画一的な基準で運営される認定制度とは対照的に、企業独自の取り組みを評価しようという議論を背景に生まれたものであり、多くの企業の積極的な挑戦が期待される。
従来、評価項目「適切な働き方の実現」の取り組みとして、「労働時間の適正化」「休暇の取得促進」「柔軟な働き方の実現」が設定されていたが、「休暇の取得促進」「柔軟な働き方の実現」を問う設問が、評価項目「ワークライフバランスの実現に向けた取り組み」として再構成された。
また、「労働時間の適正化」は評価項目「長時間労働者に対する取り組み」とあわせて、評価項目「長時間労働の予防と事後対応」として整理された。大規模法人部門では、「労働時間の適正化」(予防)と「長時間労働者への取り組み」(事後対応)の双方を実施することで適合となる。一方、中小規模法人部門では、今年度はいずれか一方への取り組みにより適合となるが、次年度は双方への取り組みが求められる予定である。
優良法人の認定要件に大きな変更はなく、必須項目・選択項目(17項目中14項目の適合が必要)ともに昨年度通りである。一方、ホワイト500認定にかかる設問においては、要件追加や設問の整理が実施されている。(表1)
ホワイト500の必須要件として、従来のグループ会社と取引先等への健康経営の普及・支援に加え、派遣社員等と従業員家族への健康支援が新たに追加された。後者は、これまでも認定要件外の設問として設定されていたが位置づけが高められた形である。新Q20では派遣社員等と従業員家族への健康支援、新Q21ではグループ会社と取引先等への普及・支援の実施状況が確認されている。
新Q20・新Q21はいずれも充足することが求められる。新Q20については、今年度は派遣社員等・従業員家族いずれかへの取り組みで適合するが、次年度以降は双方への取り組みが求められる予定である。したがって、ホワイト500を継続的に目指す法人においては、今年度の要件充足だけでなく、次年度を見据えて対応を進めることが望ましい。
「健康経営の推進方針の浸透」と「従業員への健康経営の理解・促進」に関する4つの設問が離れて設定され、内容も一部重複していたことから、評価項目「従業員への健康経営の理解・促進」として2つの設問に再構成された。新Q30では健康経営に関する情報発信方法や内容、新Q31では従業員・管理職の巻き込みや理解を深める工夫の有無を確認する。昨年度追加された新Q70「継続的な取り組みによる健康風土の醸成状況の確認」とあわせ、方針の周知から従業員の理解や組織風土への定着状況までを一体的に確認する構成となった。
評価項目「受診勧奨の取り組み」の適合条件が変更され、新Q34「任意健診・検診の勧奨」と新Q35「定期健診等の結果に基づく二次検診の勧奨」のいずれの取り組みも必要となった。
「経済財政運営と改革の基本方針2026」において睡眠対策を含む健康経営の推進に言及されるなど、睡眠が従業員の健康やパフォーマンスを支える重要な要素として、政策上も重視されている。こうした背景から、従来「従業員の生産性低下防止のための取り組み」の一部とされていた「睡眠障害や睡眠の質向上に向けた取り組み」に関する設問が分離・新設された。具体的な取り組みとして、睡眠に関する教育・情報提供に加え、睡眠改善を目的としたウェアラブルデバイス等の活用を含め、近年のサービス・施策の多様化を踏まえた選択肢が設定されている。


出典:ACTION!健康経営(https://kenko-keiei.jp/)
優良法人認定の認定要件およびブライト500等の認定要件ともに、大きな変更は見られなかった。(表2)一方、注目すべき点としては以下の項目が挙げられる。
経済産業省では、デジタルヘルスの推進に向け、PHR(Personal Health Record)をはじめとする個人の健康データを活用できる環境整備を進めている。大規模法人部門では、既に設問に設定されているが、中小規模法人部門でも、今年度よりPHRデータの活用状況を把握するための設問がアンケート項目として新設された。現時点では認定要件ではなく、実態把握を目的としている。しかし、過去、アンケート項目として設定された設問がその後、認定要件に追加された事例もある。そのため、中小規模法人においても、アプリなどを活用しながら健康データをどのように従業員の健康保持・増進や施策の改善につなげるかという視点を持ち取り組むことが望まれる。


出典:ACTION!健康経営(https://kenko-keiei.jp/)
今年度の改定では、認定要件そのものの大幅な変更というよりも、設問構成の整理や設問(アンケート項目含む)を通じて今後の政策課題を先行的に把握しようとする動きがみられた。特にアンケート項目は、将来的に認定要件等へ反映される可能性があるため、現在の認定要件だけに着目するのではなく、政策的な動向を踏まえ中長期的な観点で自社の健康経営を企画・推進することを推奨する。
なお、認定取得を目指す企業は、認定そのものやホワイト500等の評価獲得だけを目的とせず、定期的に自社の取り組みを点検・見直す機会として本制度を活用すべきであることは、改めて付言したい。
大規模法人では、特に人的資本経営との一体的な推進が重要となる。健康経営を福利厚生施策として捉えるのではなく、人的資本への投資を通じて企業価値の持続的向上を支える取り組みとして位置付け、経営トップが関与する体制の下で、推進することが求められる。
今年度は、派遣社員等と従業員の家族への健康支援が新たにホワイト500要件に設定され、健康経営の対象を自社従業員からグループ会社、取引先、家族等へスコープ拡大の方向性も一層明確となった。今後、こうした「社会への波及」に関する評価水準はさらに高まる可能性がある。
また、投資家をはじめとするステークホルダーに対しては、健康経営への取り組みが人的資本や企業価値にどのような影響を与えているのかを説明することが重要となる。そのために、まずは、「自社固有の経営課題・健康課題は何か」「その解決のために何を実施したか」「どのような成果が生じたか」「それが企業価値にどのようにつながるのか」という戦略的なストーリーを整理することが求められる。そして、健康診断結果や生活習慣等の健康指標だけでなく、アブセンティーイズム、プレゼンティーイズム、ワーク・エンゲージメント等の指標を継続的に把握し、施策との関係を検証し、定量・定性の双方から説明できる状態を構築する必要がある。
情報開示にあたっては今年3月に改訂された人的資本可視化指針や今後公開予定の健康経営に関する情報開示の指針(仮称)を参照いただきたい。
中小規模法人部門では、今年度の認定要件に大幅な変更はみられなかった。一方、大規模法人部門では、「睡眠」「自社従業員以外への健康支援」等のテーマが設問に追加・拡充されている。昨年度の「仕事と育児・介護との両立支援」の評価項目追加にもあるように、これまでも、大規模法人部門で先行して設問設定されたテーマが、その後、中小規模法人部門にも反映されてきた。そのため、中小規模法人においても、大規模法人部門の改定内容を今後の中小規模法人部門の改定を見通す先行情報として確認し、今できる準備を行っておくことを推奨する。
また、今年度はPHRデータの導入状況に関する設問がアンケート項目に追加されるなど、中小規模法人においても取り組みの高度化が意識されている。具体的な施策を検討する際には、経済産業省・認定事務局からの発信や自治体・保険者等が作成する事例集を参照し、自社の課題や規模に応じて取り入れられる取り組みを検討・導入することも有効である。
中小規模法人では、まずは認定の取得・継続を一つの足掛かりとしつつ、自社の経営課題・健康課題に応じた目標を設定した上で、段階的に取組水準を高めていくことが重要である。その積み重ねにより、従業員の健康保持・増進にとどまらず、働きやすさや働きがいの向上、人材の定着・採用等への波及を通じて、人手不足をはじめとする経営課題の解決につなげていくことが期待される。
※健康経営®は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
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【終了】アーカイブ配信<人手不足対策セミナー>超実践的 人材が育つ組織マネジメント
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ミドル・シニアの健康研修パッケージ
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女性の健康研修パッケージ
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【終了】<人手不足対策セミナー>超実践的 人材が育つ組織マネジメント
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MS&ADインシュアランスグループ リスクマネジメント情報誌 【RMFOCUS 第98号】
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小規模事業場におけるストレスチェック義務化対応のポイント【人的資本・健康経営インフォメーション(2026年7月)】
2025年5月に改正労働安全衛生法が成立し、労働者数50人未満の事業場(以下、「小規模事業場」という)におけるストレスチェックの実施が義務化されることとなった。また、令和8年6月10日付官報(号外第128号)により、施行日は2028年4月1日であることが示された。これは、従来努力義務とされていた小規模事業場においても、メンタルヘルス対策を実効的に進める必要があるとの国の判断に基づくものである。
ストレスチェック制度は、労働者に自身のストレスの状態に気づくきっかけを与え、必要に応じて医師による面接指導や職場環境改善につなげることを目的としており、2015年12月1日より50名以上の事業場においては既に実施が義務付けられている。
今回、小規模事業場へ実施義務が拡大された背景には、図1のとおり精神障害の労災支給決定件数が増加傾向にある中で、小規模事業場では、メンタルヘルス対策やストレスチェックの実施率が十分とはいえない状況がある。


出典:厚生労働省「令和6年度過労死等の労災補償状況」
令和6年厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス対策に取り組んでいる割合は、労働者数30~49人の事業場では69.1%、10~29人の事業場では55.3%にとどまっており、さらにストレスチェックを実施している事業場は、労働者数30~49人、10~29人のいずれの規模でも6割弱程度と低調である。
しかし、小規模事業場にとってのメンタルヘルス対策やストレスチェックの実施は、単なる法令対応ではなく、事業継続性を高める施策としても重要である。小規模事業場を対象とした調査ではないが、平成28年度厚生労働省「病休と復職支援に関する調査と分析」によれば、従業員にメンタルヘルス不調が生じた場合、1回目の平均的な休職期間は107日(約3.5カ月)とされている。さらに、復職後に再休職するケースも約半数とされ、仮に少人数体制の事業場でこのような事態が起きた場合、大規模な事業場に比べ事業運営における人的影響は大きくなると考えられる。
一方で、令和3年度厚生労働省「ストレスチェック制度の効果検証に係る調査等事業」報告書によれば、ストレスチェック受検者の約7割が「自身のストレスが分かったこと」を有効と評価している。また、医師による面接指導を受けた者の過半数が、その面接を有効と回答している。これらを踏まえると、ストレスチェックはメンタルヘルス不調の早期発見や早期対応につながることが期待される。ひいては、小規模事業場における従業員の長期休業リスクの低減を通じて、人材確保・定着や経営安定化に資する可能性がある。
そこで、本稿ではストレスチェック制度の概要を説明しながら、厚生労働省が公表した「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」(以下、「実施マニュアル」という。)を踏まえ、小規模事業場に求められる対応と実施のポイントを解説する。
本章では、小規模事業場におけるストレスチェック制度の概要について解説する。特に断りがない場合、以下の記載は実施マニュアルに基づく小規模事業場向けの内容である点にご留意いただきたい。
ストレスチェックの対象者は、一般定期健康診断と同じく「常時使用する労働者」であり、実施マニュアルでは、以下のいずれかの要件を満たす者とされている。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の4分の3以上であること。
※なお、1週間の労働時間数が通常の労働者の4分の3未満である労働者であっても、上記の①の要件を満たし、労働時間数が通常の労働者のおおむね2分の1以上である者に対しても、ストレスチェックを実施することが望まれる。
なお、健康診断とは異なり、従業員に受検義務はないものの、実効性を確保するためには全員の受検が望ましい。
小規模事業場におけるストレスチェックの基本的な流れは図2のとおりである。


出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)」を基にMS&ADインターリスク総研にて作成
まず、事業者はストレスチェック制度導入の方針を社内で示し、制度の企画・運営を担う実務担当者を選任する。その後、実務担当者を中心に外部機関と相談しながら、実施計画や運用方法を決定していく。具体的には、調査票の内容や配布・回収方法、受検期間を定め、従業員に案内して回答してもらう。なお、回答率が低い場合には、受検期間中に受検を促すことも必要となる。受検期間終了後、あらかじめ定めた基準により高ストレス者と判定された従業員の中から、実施者が面接指導の必要性を判断し、対象者へ通知する。通知を受けた対象者は、自身の判断で面接指導を申し出るかどうかを決定する。申出があり面接が実施された場合、事業者は面接指導医師から結果の通知とその後の就業上の措置に関する意見を受け、就業上の措置を決定するという流れである。
なお、図2のとおり、ストレスチェックの結果による集団分析とその結果を用いた職場環境の改善は努力義務であるものの、前述した人材の定着や経営安定化の観点からは積極的に取り組むことが推奨される。
ストレスチェックの実施にあたっては、表1に示す役割を担う者が必要となる。小規模事業場にとっては、これらの役割を担う人材をどのように確保するかが大きな課題となることが想定され、外部への委託が現実的な選択肢となるだろう。特に、実施者は「医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師」、面接指導医師は「産業医、あるいは、所定の講習を受講した面接指導実施医師」のように指定された有資格者に限られるため注意が必要である。
| 役割 | 担当者 | 主な実施事項 |
|---|---|---|
| 実施責任者 | 事業者(経営層) |
|
| 実務担当者 | 衛生推進者等 |
|
| 実施者 | 医師、保健師など、法令上の要件を満たす資格者 ※外部機関への委託可 |
|
| 実施事務従事者 | 事業者が指定するもの ※外部機関への委託可 | 【実施者の指示によって以下の事務を担当】
|
| 面接指導医師 | 産業医、産業医の要件を備えた医師等 ※外部機関への委託可 |
|
出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)」を基にMS&ADインターリスク総研株式会社にて作成
なお、面接指導医師は厚生労働省所管の支援機関である地域産業保健センターへ依頼し、無料で産業保健サービスを受けることも可能である。ただし、1事業場あたり2回、労働者1人あたり2回までとの利用回数制限がある。また、ストレスチェック制度の施行後は多数の小規模事業場から依頼が殺到し、面接の実施までに時間を要することも想定されるため、外部機関へ有償で委託することも検討すべきである。
労働安全衛生法に基づくストレスチェックでは、「仕事の要因」、「心身の反応」、「周囲のサポート」の3領域について確認する必要がある。実施マニュアルでは、これら3領域を網羅している「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)での実施が推奨されている。なお、同調査票の簡易版である23項目でも法令上は実施可能だが、集団分析の精度が下がるため、職場環境改善には活用しにくくなる点に留意が必要である。
また、調査票の配布・回収方法については、現在はストレスチェックシステムでの実施が一般的となっている。この場合、従業員がPCやスマートフォンで回答し、集団分析結果の確認やデータ保存もシステム上で行えることが多い。なお、外部委託機関によっては紙の調査票を配布・回収する方法もあるが、個人の回答内容や結果を事業者や実務担当者が確認できないよう、実施方法を工夫する必要がある。
前章ではストレスチェックの基本的な流れや注意事項について解説した。本章では小規模事業場において特に留意すべきポイントを解説する。
第一に、小規模事業場では、従業員のプライバシー保護を最優先にストレスチェックを実施する必要がある。ストレスチェック結果は慎重な取り扱いが必要な個人情報であり、原則として事業者が個人結果を直接入手しない運用が求められる。また、面接指導の申出勧奨も、対象者であることが他の労働者に推測されない方法で行う必要がある。小規模事業場でこのような運用体制を社内人員のみで整備するには、プライバシー保護上のリスクと運用負担が大きい。そのため、実施マニュアルでは、実施事務の大半を外部機関へ委託することが推奨されている。具体的には、外部機関が提供するシステムを使用するなどして、個人結果は外部機関や面接指導の要否を判断する実施者のみが閲覧できるようにするなどの対応例が示されている。
第二に、小規模事業場では外部機関への委託が実質的に不可欠となるため、委託先の選定が重要である。これを受けて、実施マニュアルでは外部機関に対して実施体制、実施方法、料金体系等を整理した「サービス内容事前説明書」の作成と事業者への提出を求めている。そのため、候補となる外部機関から「サービス内容事前説明書」を入手し、下表の視点で自社の実施環境や予算等に合致するか確認するとよい。
| 視点 | 選定のポイント |
|---|---|
| 実施体制 |
|
| 実施方法 |
|
| 料金体系 |
|
| ストレスチェック以外のサービス有無 |
|
| 情報管理体制 |
|
出典:厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)」を基にMS&ADインターリスク総研株式会社にて作成
とりわけ、表1で示した実施に必要な役割について、一般に小規模事業場では実施者や面接指導医師を担当できる産業医等の産業保健スタッフがいないため、外部機関においてこれらの有資格者による役割が提供可能かどうかを確認することが重要である。また、ストレスチェック実施にあたり、準備に伴う事務負担(例:システム利用の場合、従業員情報の登録等)が発生するため、併せて実施事務従事者の役割も提供可能か確認することを推奨する。
第三に、高ストレス者が安心して面接指導を申し出られる環境を事業者が整備することが重要である。ストレスチェックの結果、高ストレスと判定され、面接指導の対象となった労働者については、できる限り面接指導を受けることが望ましいものの、面接指導を受けるかどうかはあくまで本人の判断となる。もし、面接指導を申し出たことを理由に、本人に対する懲罰的措置や退職勧奨等の不利益な取り扱いが行われれば、労働者は制度を信頼できなくなる。その結果、ストレスチェックの意味は失われ、健康障害や離職の防止に資することはなく、人材確保・定着や経営安定化という本来の目的も達成できなくなるだろう。
そのため、事業者が面接指導の結果を踏まえて必要な措置を講じる際には、医師の意見を参考にしつつ、本人の意見を丁寧に聴き、管理監督者とも連携しながら、労働時間の短縮、業務負荷の軽減、配置転換等について慎重に進める必要がある。併せて、面接指導の申出窓口だけでなく、外部の相談窓口についても周知し、労働者が複数の相談先を持てるようにしておくことが望ましい。公的な相談窓口としては、厚生労働省の「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳」等が挙げられるため、労働者へ案内可能な機関を事前に確認することが推奨される。
第四に、ストレスチェックの実効性を高めるためには、集団分析を行い、その結果を踏まえて職場環境改善につなげることが重要である。ただし、集団分析は原則として10人以上の集団で行うものであるとされている。10人未満では個人が特定されるおそれがあり、実施は推奨されていないため、注意が必要である。なお、職場環境改善については、集団分析の結果だけでなく、管理監督者が日常の職場管理で把握している情報や労働者の意見も踏まえて進めることが望ましい。改善取り組みの事例として、業務負荷のストレスが高いという結果を受けて業務効率化を進めた例や、職場環境によるストレスが高い(夏場の高温状態)という結果を受けてスポットクーラーを導入した例がある。
本稿では、小規模事業場におけるストレスチェック義務化対応に向けて、ストレスチェック制度の基本と対応のポイントについて整理した。
ストレスチェックは、従業員が自身のストレスに気付く機会を定期的に設け、早めに対処するきっかけをつくることで、メンタルヘルス不調の未然防止につながることを目的としている。ひいては、人材の確保・定着や経営の安定化にも資する制度である。
このように、小規模事業場にとっても意義のある制度である一方、実施にあたっての体制整備や外部機関の選定、プライバシー保護の取り組みなどには一定の負担がかかることが予想される。そのため、外部機関への委託を前提に、法令に則って確実に実施することが現実的な目標となるだろう。
一方で、ストレスチェックの回答率向上、医師による面接指導以外の相談窓口の整備、集団分析に基づく職場環境改善の実施といった取り組みは、必ずしも義務ではないものの、ストレスチェックの実効性を高めることが期待される。今回の義務化を機に、経過措置期間である今から情報収集や運用方法の検討を積極的に進め、ストレスチェックを健康で生産性の高い職場環境づくりにつなげていきたい。
【参考文献】
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大企業の福利厚生の満足度を調査 20代女性の期待と不満とは?
本調査では、回答者が勤務する企業の福利厚生に対して満足しているかどうかについて聞きました。「やや満足」と「とても満足」の合計は50.7%、「あまり満足していない」「全く満足していない」「強く不満であり、転職を検討する要因の一つである」の合計は49.3%でした(図表1)。


図表2は、図表1のデータから、福利厚生に対して、「全く満足していない」「強く不満である、転職を検討する要因の一つである」とした回答者の割合を性別年代別で示しています。ここでは20代女性の12.0%が「強く不満である、転職を検討する要因の一つである」と回答していることがわかります。


本調査では回答者が就職・転職を検討する際に、その企業の福利厚生の有無・内容を重視するかどうかについて聞いています。その結果、「重視する」と「やや重視する」の合計は77.6%となりました(図3)。


図表4は、図表3のデータから、福利厚生の有無・内容を「重視する」とした回答者の割合を性別年代別で示しています。ここでは20代女性の31.2%が「重視する」と回答しています。以上のことから、20代女性は勤務先の福利厚生に対する期待が高いため、不満も抱きやすいことが推測されます。


それでは、20代女性はどのような福利厚生を希望しているのでしょうか。本調査では、回答者に具体的にどのような福利厚生を重視しているのかを聞いています。本稿では、女性の年代別(20代、30代、40代)の回答結果を紹介します(図表5)。
設問に挙げた主な福利厚生について、重視する度合いは年代によって異なりますが、20代女性は他の年代と比べて重視する度合いが全体的に低い傾向がみられました。前述のとおり、福利厚生の有無・内容を最も重視するのが20代女性であることを考慮すると、この結果は、20代女性が設問に挙げられた主な福利厚生以外のものを企業に期待している可能性が考えられます。


本調査の結果から、20代女性は勤務先の福利厚生に対する期待が高く、そのため不満も抱きやすいという事が推測されることについて述べました。また、この層は、いわゆる一般的な福利厚生に加えて、さらに付加価値のある制度を求めていることがうかがえます。例えば本調査の設問には含まれていなかった、美容、ヘルスケア、女性特有の健康課題解決(フェムテック)などが当てはまるかもしれません。
福利厚生の充実は社員の定着やモチベーション向上にも影響するといわれています。企業が優秀な人材を採用・定着させるためには、性別や年代ごとの多様なニーズを把握し、それに応じた福利厚生制度の整備が重要です。今後は、社員の声を定期的に反映させる仕組みや、時代の変化に合わせた新たな制度の検討も求められるでしょう。
【参考文献】
・住友生命保険(2024)『企業の福利厚生制度に関するアンケート調査結果』
・生命保険協会(2024)『生命保険事業概況』
・生命保険文化センター(2023)『2022(令和4)年度生活保障に関する調査』
・日本経済団体連合会(2020)『第64回福利厚生費調査結果報告』
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