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【終了】<BCPセミナー2025>中国におけるBCP整備のポイント~中国拠点及び日本本社の立場から考える~
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2025年 育児・介護休業法等の改正~法改正を機に実効性ある両立支援と職場文化の変革へ~【人的資本・健康経営インフォメーション(2025年8月)】
日本社会では、少子高齢化が急速に進行し、65歳以上の高齢者が総人口の約29%を占めている。
また、労働力人口の減少や、仕事をしながら家族等の介護に従事する「ビジネスケアラー」の増加から、仕事と育児・介護の両立に関心が集まっている。さらに、2030年には介護離職による経済損失が約9兆円にのぼると試算されており、企業経営に直接的な影響を及ぼす可能性が指摘されている。
こうした背景を受け、2025年4月から「育児・介護休業法」の大幅な改正が施行され、併せて「次世代育成支援対策推進法」(以下、次世代法)も改正された。これら一連の法改正は、企業規模を問わずすべての企業に対し、両立支援策の強化と実効性ある運用を求めるものである。
2025年の法改正は、企業活動に多方面で影響を及ぼすものである(表1)。まず、育児・介護休業法では、企業規模を問わず、育児・介護と仕事の両立支援策の強化が義務化された。4月より、すべての企業が、介護離職防止のための雇用環境整備や従業員への個別周知・意向確認などに対応する必要がある。加えて、従業員301人以上の企業には、育児休業取得状況の公表が義務づけられた。10月からは、仕事と育児の両立において、柔軟な働き方実現のための措置の追加や個別の意向聴取配慮が義務となる。
また、次世代法についても、一般事業主行動計画に関する法定義務が強化されている。
今回の法改正は、規模や業種を問わず、あらゆる企業に対応を迫る内容となっている。まず、各社が取り組むべきは、就業規則や休業・休暇制度の見直しである。法改正の内容を正確に把握し、自社の社内制度整備および社内規定の改訂を進める必要がある。
また、従業員への個別周知や意向確認体制の整備も急務である。特に介護分野については、「早い段階(40歳等)での情報提供」が全社義務化され、従業員が介護に直面する前から支援策を伝える仕組みづくりが不可欠となる。とりわけ、中小企業は、これまで以上に柔軟な働き方や休暇取得の促進、社内研修や相談窓口の設置など、実効性ある両立支援体制の構築が急務である。
加えて、301人以上の企業であれば育児休業取得状況の公表、101人以上の企業は行動計画策定・数値目標設定など、企業規模ごとの法的対応も整理して着実に進めなければならない。
なお、法対応だけでなく、属人化防止や代替要員の確保、引き継ぎマニュアルの整備など、現場での実務的な備えも重要である。また、管理職や従業員向けの研修、両立支援制度の活用事例の紹介、よくある質問(FAQ)整備などを通じて、制度が形骸化せず“使われる制度”となるよう、職場文化の醸成にも取り組むことが望ましい(表2)。
企業規模や現状にかかわらず、「まだ大丈夫」と油断せず、自社の制度や体制を速やかに点検し、必要な対応を始めることが不可欠である。今回の法改正は、すべての企業にとって“今取り組むべき” 経営課題であることを強く意識してほしい。
表1 2025年法改正で新たに義務化された主な企業対応一覧
| 改正ポイント項目 | 対象企業 | 内容の概要 | 施行時期 |
|---|---|---|---|
| 介護離職防止のための雇用環境整備 | 全企業 | 研修や相談窓口の設置、事例の紹介、方針の周知のいずれか実施 | 2025年4月1日 |
| 介護離職防止のための個別周知/意向確認 | 全企業 | 直面時の個別周知・意向確認と早い段階(40歳等)での情報提供 | 2025年4月1日 |
| 仕事と育児両立:柔軟な働き方実現のための措置等 | 全企業 | テレワークや短時間勤務、残業制限等の整備と個別周知・意向確認 | 2025年10月1日 |
| 仕事と育児両立:個別の意向聴取・配慮 | 全企業 | 妊娠・出産の申し出時や子が3歳になるまでに働き方等の希望を聴取 | 2025年10月1日 |
| 育児休業取得状況の公表 | 301人以上 | 毎年、育児休業取得率をHP等で公表 | 2025年4月1日 |
| 一般事業主行動計画の策定・数値目標設定 | 101人以上 | 次世代法に基づく行動計画に「育児休業取得率」等の数値目標を記載 | 2025年4月1日 |
表2 企業に求められる両立支援の実務対応・推奨施策一覧
| 対応項目 | 法令対応 | 実効性向上 | 概要 |
|---|---|---|---|
| 就業規則・社内規定の見直し | ● | 法改正内容に沿った就業規則・休業関連制度の整備 | |
| 個別周知・意向確認体制の整備 | ● | 育児・介護対象者への個別周知・意向確認の実施 | |
| 雇用環境整備 | ● | ● | 育児・介護の相談窓口の設置、情報提供体制の強化 |
| 柔軟な働き方の導入 | ● | ● | 育児・介護ともに対応したテレワーク、時短勤務、フレックスタイム等の導入 |
| 企業規模別義務への対応 | ● | 自社規模ごとに必要な法的義務(取得状況公表・行動計画策定等)の履行 | |
| 管理職・従業員向け研修 | ● | ● | 両立支援制度(育児・介護)の理解促進や意識醸成 |
| 属人化防止・代替要員の確保 | ● | 休業・両立時の業務属人化防止、代替要員の確保、業務分担の見直し | |
| 引き継ぎマニュアルの整備 | ● | 休業時の業務引き継ぎマニュアル作成、ノウハウ共有 | |
| 職場文化の醸成 | ● | 両立支援制度の積極的な活用促進、研修や事例共有、FAQ の整備、ロールモデル紹介 |
※「●」は該当する項目
くるみん認定とは、厚生労働省が次世代法に基づき、「子育て支援のための一般事業主行動計画を策定・実施し、その目標を達成した企業」を子育てサポート企業として認定する制度である。
2025年の法改正に伴い、くるみん認定の要件も見直され、一般事業主行動計画の策定や育児休業取得率・時間外労働削減の数値目標の設定など、実効性と透明性を重視した運用が求められるようになった。また、301人以上の企業には育児休業取得状況の公表義務も課され、形式的な制度運用からPDCAサイクルによる継続的改善への転換が不可欠となっている。
くるみん認定の取得自体が直接的に企業価値向上に結びつくわけではないが、社員が安心して働ける環境を整備することは、企業の持続的成長や人材確保、ブランド力の向上に資する取り組みであり、その一環として認定制度の活用が期待される。
こうした認定制度の取得は、もはや一部の先進企業だけでなく、多くの企業が積極的に取り組むようになっている(表3)。実際に、くるみん認定や健康経営優良法人認定などの取得企業数は年々増加しており、企業イメージの向上や採用活動へのプラス効果を実感している企業も多い。
表3 主な認定制度と取得状況
| 認定制度 | 認定数 | 主体 |
|---|---|---|
| 健康経営優良法人認定 | 2025認定 ・大規模法人 3,400社 ・中小規模法人 19,796社 | 経済産業省 |
| くるみん認定 | 令和7年2月時点 ※公表数 ・プラチナくるみん認定 714社 ・くるみん認 4,943社(累計) | 厚生労働省 (次世代育成支援対策推進法) |
| えるぼし認定 | 令和7年2月時点 ・プラチナえるぼし認定 73社 ・えるぼし認定 3,382社(累計) | 厚生労働省 (女性活躍推進法) |
認定制度の取得は、法令遵守の証明にとどまらず、「両立支援に積極的な企業」であることを社外に示すメッセージとなる。この認定を戦略的に活用して、自社の取り組みや両立支援制度の内容や実績を、「両立支援のひろば」や自社ホームページ、SNS、会社案内、採用広報などを通じて積極的に情報発信することで、「働きやすい会社」としてのイメージを広く訴求できる。
これにより、求職者や取引先からの信頼を獲得し、優秀な人材の採用・定着、顧客やパートナーからの評価向上など、企業価値の向上につなげることが期待される。
仕事と育児・介護の両立を支援する環境の整備は、社員のモチベーション向上や人材流出防止、求職者からの評価向上といった観点からも重要である。認定の取得や制度の整備だけでは十分とはいえず、実際に従業員が制度を利用しやすい職場文化を根付かせることが不可欠である。
そのため、ロールモデル社員の紹介、FAQ や相談窓口の整備、管理職向け研修、両立支援制度の活用の社内事例共有などを通じ、「誰もが活用できる当たり前の制度」として両立支援策が社内に定着するよう努めることが望ましい。近年は制度の活用状況が重視される傾向にあり、制度が形骸化すれば社員のモチベーションやロイヤルティの低下、人材流出といったリスクにつながることが懸念される。したがって、制度のハード面とともに職場文化の醸成というソフト面からのアプローチを強化することが、組織の持続的な成長や安定した人材確保につながると考えられる。
今回の育児・介護休業法等の改正は、企業が「選ばれる存在」となるための大きな転機である。単なる法対応にとどまらず、従業員一人ひとりが安心して仕事と家庭を両立できる環境を構築し、持続的な人材確保と企業価値の向上を目指す視点が求められている。
両立支援には、制度整備(ハード)と職場文化(ソフト)の両輪が不可欠である。法令遵守を基礎としつつ、認定取得による取組水準の向上を進め、さらに実際に従業員が制度を利用しやすい雰囲気を醸成することが肝要である。経営トップによる積極的なメッセージ発信や経営層のコミットメント、ロールモデルとなる社員の登用、SNS 等を活用した社外発信といった取り組みは、職場文化の醸成や企業のブランド力向上に寄与するものとなる。
また、定期的なアンケートやフォローアップを実施し、従業員の声を制度運用や職場づくりに反映させることが、実効性ある両立支援の実現に不可欠である。こうした取り組みを通じて、「両立支援制度は特別なことではなく、誰もが自然に利用できる当たり前の制度である」という職場文化を醸成し、両立支援は全従業員のためのものであるという認識を浸透させていくことが重要である。
今後、企業を取り巻く社会環境はさらに多様化・流動化していくことが予想されるが、法改正を前向きに捉え、両立支援を戦略的に推進し、持続的成長と競争力強化につなげていくことが求められる。
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ESGリスクトピックス(2025年8月)
サステナビリティ情報開示 日本IR協議会が2025年6月12日に公表した「第30回IR活動の実態調査」によると、国内上場企業のIRやサステナビリティへの対応の意識がさらに向上したことが分かった。一方で、本業のビジネスへの統合や企業価値向上への寄与についての説明で課題も浮き彫りになった。 調査結果によると、ESGなどの非財務情報開示を「実施している」と回答した企業が75.9%と前回調査から2.4ポイント増加。また、ESG・SDGsと関連付けた開示やマテリアリティの特定と企業価値向上への貢献などの開示も着実に増加していた。さらに、「非財務情報を中長期的な経営戦略のKPI(成果指標)と結び付けて説明している」との回答も同5.8ポイント増の44.8%だった。これらから、非財務情報・ESG情報の開示および経営戦略への統合などの開示が充実する傾向が分かる。 一方で、非財務情報の開示や投資家などとの対話に関する課題認識の質問では、「本業のビジネスと非財務情報とを分かりやすく関連付けること」(60.0%)が前回同様に最多。次に「自社のESGへの取り組みが、中長期的に会社の業績といった経済的な貢献につながる蓋然性について、説得力のある証明を行うこと」(57.9%)が続き、多くの企業が開示の「質」と「説明力」を課題と感じていた。ESG取り組みが企業価値向上にどのように寄与するかの説明の必要性を認識し、非財務情報と財務的成果の関連付けに苦慮する姿が浮かび上がる。 さらに、東証プライム上場で時価総額上位の企業から有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示で適用が義務付けられたSSBJ基準への対応について、2027年3月期の適用時期に先立って任意に開示すると回答した企業は「2026年3月決算から」が2.6%、「2025年3月決算から」も1.2%だった。一方、「未着手」との回答が50%。そのうち、プライム市場上場企業19.8%、スタンダード・グロース・その他市場上場企業30.2%だった。少数の先行企業が任意適用に向けて動き始めた半面、大半は義務化の先送りを見越した“様子見”姿勢のようだ。この姿勢の違いは、将来的なレピュテーションリスクや投資家からの信認格差につながる懸念もある。 そのほか、統合報告書の作成企業の割合は同 8.6 ポイント増の52.5%で、初めて過半数を超えた。ただし、「作成にあたる人員が不足していること」(46.4%)や、「ステークホルダーのニーズが充足されているか不明瞭であること」(41.6%)などを課題に抱える企業が多かった。 本調査は2025年3月から4月にかけて、3月末時点の全上場会社4,113社を対象に以下について調査を実施。回収率は23.4%(962社)だった。 【参考情報】 TNFD・自然資本 自然関連情報開示の促進・発展を目的として、2025年6月30日、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)と国際非営利団体のGlobal Reporting Initiative(GRI)は、企業の生物多様性・自然関連情報開示の好事例をまとめた事例集を公表した。事例集では、下表に示す7社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)の評価事例が紹介されている。 出典:GRI & TNFD case studiesガイダンス情報をもとにMS&ADインターリスク総研作成 特にEnelは、依存・インパクトの大きい拠点であるホットスポット評価を、5つのステップ(どこの土地を占有しているか(STEP1)、占有している土地は自然を改変しているか(STEP2)、重要な種が生息しているか(STEP3)、インパクトの強度はどの程度か(STEP4)、事業との関連性はどの程度か(STEP5))で行っており、これから自然関連課題を検討する企業に対して参考となる事例として紹介されている(図1)。 <図1 依存・インパクトの大きい拠点(ホットスポット)の特定プロセス(Enel)> 出典:GRI & TNFD case studies資料より抜粋 リスク・機会の評価については、本事例集で紹介されている先進開示企業であっても具体的な手法は開発途上であり課題であると言及されている。各社の評価方法と課題として以下が述べられている。 出典:GRI & TNFD case studiesガイダンス情報をもとにMS&ADインターリスク総研作成 本事例集は、自然関連課題の評価手法や開示方法、開示にあたっての現状の課題等について具体的に把握することができるため、これから自然関連情報開示を検討する企業、または開示のステップアップを検討している企業は確認することが推奨される。 【参考情報】 SDGs 2025年版「持続可能な開発報告書」が2025年6月24日に発表され、世界と各国の持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた現状と課題が明らかになった。この報告書は、国連の関連組織である「国連持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」が毎年公表するものであり、今年は昨今の国際情勢がSDGsの達成にどのような影響を及ぼしているかに焦点を当てて分析している。 報告書によれば、ウクライナやガザでの戦争、米国のSDGsに対する反対姿勢、世界的な国際援助の削減が、SDGs達成の大きな障害となっているとされている。特に、国連加盟国間の対立やパリ協定などの多国間合意の弱体化がSDGs達成への大きな壁となっている。 SDGsの169のターゲットのうち、2030年までに達成が見込まれるのはわずか17%であり、残りの83%は進捗が限定的か停滞している。報告書では、2015年からの進捗に基づくと17のゴールはいずれも2030年までに達成されないと見込まれている。特に、目標2(飢餓をゼロに)、目標11(住み続けられるまちづくりを)、目標14、目標15(海洋と陸地の環境保護)、目標16(平等と公平)について軌道から大きく外れていると指摘された。これらの目標が達成困難な理由として、COVID-19による経済停滞、貧困の拡大、自然災害の頻発、紛争による資源逼迫、国際協調の停滞などによる影響だと考えられる。日本のSDGs達成度は、世界167ヵ国中19位と比較的高い評価を受けているものの、昨年よりもランクが1下がった。日本の目標達成状況のうち大幅に遅れているのは、目標5(ジェンダー平等)、目標12(生産と消費)、目標13(気候変動)、目標14と15(海洋と陸地の環境保護)であり、これらの分野での積極的な取り組みが求められている。 この報告書は、世界および各国がSDGs目標をどの程度達成しているかを示すものであり、企業活動は国のスコアに間接的に影響を与えている。したがって、自社のサステナビリティ活動は、日本のSDGs達成の一部と捉えることができる。日本企業はこの結果を真摯に受け止め、SDGs達成に向けた対応を強化し、国際的な基準に基づく対策を推進することが求められている。特に遅れが見られる目標については、企業ごとのガバナンスや進捗状況を見直し、より野心的な取り組みを講じることが期待される。 出典: 2025年版「持続可能な開発報告書」(https://dashboards.sdgindex.org/ )をもとにMS&ADインターリスク総研作成 【参考情報】 ジェンダー 世界経済フォーラム(WEF)が2025年6月11日に発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2025」によると、日本の男女間の格差は依然大きく、スコアが世界平均以下と低迷していることが明らかになった。 レポートによると、日本の「平等スコア」(男女平等達成度)は総合で0.666。前年比で0.003ポイント改善したものの、順位は前年と同じ118位(148か国中)。今年も、主要7カ国(G7)で最下位となった。なお、世界全体のスコアは0.688で、日本は下回った。同スコアは、「1」が完全に平等な状態を示す。 カテゴリー別では、教育や健康分野で例年通り、格差が比較的小さい。順位は、教育が72位(前年66位)、健康が50位(同58位)だった。一方で、依然深刻なのは経済と政治の両分野だ。レポートが「スコアの改善が顕著」と評した経済だが、順位は依然112位(同120位)にとどまる。労働参加率や賃金などが若干改善したものの依然低水準。とりわけ、女性管理職比率の低さは際立っており、前年より3ランク上昇したものの127位と低位に沈んだ。例えば、経済協力開発機構(OECD)の20年当時の統計で、フルタイム正社員の男女賃金差は22.1%と先進国中で最低クラスだった。経済参画において女性の能力発揮を阻害する社会構造的問題が根強く残ることが推察できる。 また、例年、全体スコアの引き下げ要因となっている政治は総合で0.085と前年(0.118)から大きく後退、順位も12位ダウンの125位だった。昨年のレポートでは、23年9月の第2次岸田内閣で女性が5人入閣したことなどを受けて政治のスコアは過去最高値を記録。しかし、24年11月発足の石破内閣で女性閣僚が2人に減ったことなどで一転した。女性の国会議員比率のスコアも0.186と低く、意思決定層での男女不平等が顕著と評価された。 日本政府は25年6月、格差改善を目指して「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)2025」を決定している。▽女性役員比率の向上▽女性活躍推進法の延長・強化▽賃金格差の是正と支援――などを重点項目に挙げた。 一方、今回のレポートでトップはアイスランドで16年連続。次いでフィンランド、ノルウェーと続き、上位はEU加盟国が目立つ。また、米国も所得格差や健康寿命に課題があるものの、教育は完全平等で、経済参加も高水準を維持した結果、前年より1ランク上昇の42位だった。 WEFは、同レポート初版の2006年から現在までに格差が改善したペースを前提にすると「世界のジェンダー平等達成にはあと123年かかる」と指摘し、極めて緩慢な改善状況に警鐘を鳴らしている。 上位の国では、2023~2024年にかけて以下のような政策が打ち出している。 (出典:下記1~3をもとにMS&ADインターリスク総研作成) 1.Reuters(2023年3月4日)「Spain announces law promoting gender parity in politics and business」 【参考情報】 サイバーセキュリティ 個人情報保護委員会は2025年6月10日、委員会の所掌事務の処理状況について毎年国会に報告する資料「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」(以下、「本報告」という。)を公表、個人情報の漏えいが過去最多となったことが明らかになった。 本報告は、個人情報保護委員会が法令に基づき作成し、国会へ提出する公式な年次行政報告書であり、個人情報保護委員会の活動状況や個人情報保護の現状を示す公的資料である。個人情報の漏えい等について、人数、種類(顧客情報、従業員情報またはその他の情報)、形態(電子媒体または紙媒体)、漏えい元、原因別に確認することができる。 本報告によれば、法令上報告が義務付けられている「漏えい等事案※1に関する報告の処理件数」が19,056件、前年度12,120件と比較すると57%増となり、過去最多を記録した。なお、19,056件は「漏えい等事案」の件数であり、実際に漏えい等した人数※2ではない。例えば、1件の事案で50,001人以上が漏えい等した事案はこのうち144件ある。 漏えい元に着目すると、報告者からの漏えい等の総件数9,494件のうち、最も多かった原因は、7,923件(83.5%)の誤交付・誤送付・誤廃棄であり、ヒューマンエラーに起因するものが多い。また、委託先からの漏えい等の総件数2,248件のうち、最も多かった原因は、1,429件(62.8%)の不正アクセスであり、報告者からの漏えい等とは傾向が異なる。 個人情報の漏えい等が増加の一途をたどる中、その防止のための施策を推進することが急務である。個人情報取扱事業者等は、組織内の運用プロセスや教育・訓練の見直しにより、漏えい等の原因として最も多いヒューマンエラーの防止のための施策を実施することが望ましい。また、委託先からの漏えい等の原因として最も多い不正アクセスを防止するため、委託先選定時のセキュリティ要件の明確化や定期的な監査・点検を行うことが推奨される。 <個人データ及び保有個人情報の漏えい等事案の状況(漏えい等元及び漏えい等原因)> (期間:令和6年4月1日~令和7年3月31日) 出典:個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」をもとにMS&ADインターリスク総研作成 1)「漏えい等事案」には、「漏えい」のほか、「滅失」、「毀損」の事案及びこれらのおそれがある場合を含む。 【参考情報】 ガバナンス 金融庁は2025年6月2日、「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」(以下、「事例集」という)を公表した。本事例集は、取締役会の実効性向上に積極的に取り組む東京証券取引所プライム市場またはスタンダード市場に上場している18社へのヒアリング結果を集約・分析したものである。 本事例集では、取締役会の機能強化に向けて、「戦略的アジェンダセッティング」「リスクテイクを支える環境整備」「実効性の高いモニタリングを実現するコミュニケーションの深化」の観点から、さまざまに工夫された取り組みを整理している。特に社外取締役に対しては、社内取締役との間の情報の非対称性を解消すべく、事務局が追加的な配慮をしている場合が多く、事務局との適切な距離感を保ちつつ、必要な情報提供が受けられるよう、社外取締役からの能動的な働きかけも有用と指摘している。 出典:金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」の3頁をもとにMS&ADインターリスク総研作成 本事例は上記のほかにも、「コーポレートカルチャー」「レジリエンス」「人的資本経営」「女性活躍推進」等、多岐にわたる取り組みも紹介している。 金融庁によると、本事例集は最終版ではなく、今後、企業と投資家の議論の場を設けること等を通じて、継続的に質を高め、更新していくことを想定。コーポレートガバナンス改革の実質化に向けて、関係者と連携しつつ、企業の取締役会の機能強化に関する取り組み事例の収集や共有を継続していくという。 企業の置かれた環境やこれまでの歴史等はさまざまであり、取締役会の機能強化に向けた取り組みにベストプラクティスがあるものではない。一方、各社の課題において共通する部分も多い中で、本事例集で紹介された取り組み例は、参考になる部分は少なくない。今後、本事例集は随時更新されていく予定であるため、その動きを注視されたい。 【参考情報】 コンプライアンス 労働施策総合推進法が改正され、2025年6月11日に公布された。 本改正は、近年、カスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」という)や職場に出入りする学生を含む求職者等へのセクシャルハラスメント(以下、「就活セクハラ」という)が社会問題化していることを受け、誰もが安心して働ける職場環境の実現を目的として行われた。本改正により、カスハラおよび就活セクハラへの対策が、企業に義務付けられることとなる。本改正法は、公布の日から起算して1年6月以内で政令で定める日に施行となる。 いずれのハラスメントにおいても、企業が講ずべき具体的な措置の内容等は、今後、指針が示される予定であるが、これらの問題の重大さから、すでに対応を進めている企業や業界団体も少なくない。 企業においてはパワハラやセクハラの対応と同様、これらのハラスメントへの対応として、 を実施していくことが求められる。法規制を踏まえた制度整備にとどまらず、現場で機能する仕組みとして根付かせることが肝要であり、また、本問題を重大な人権侵害問題として捉え、対応していくことが企業には期待される。 【参考情報】
○ 国内企業の非財務情報開示が充実も、本業寄与の「説明力」が課題、IR実態調査
2025年6月12日付 日本IR協議会HP: https://www.jira.or.jp/activity/research.html
○ TNFD・GRI 生物多様性・自然関連情報開示に関する事例集を共同発表
-*-*-*-*-
企業名
セクター
依存、インパクトの評価方法
CDL
不動産
Ecopetrol
石油・ガス
Enel
公共事業
Iberdrola
公共事業
JSWSteel
金属・鉱業
Reckitt
消費財
Vale
金属・鉱業


STEPは当社が附番
企業名
セクター
リスク・機会の評価方法と課題
CDL
不動産
Ecopetrol
石油・ガス
Enel
公共事業
Iberdrola
公共事業
JSWSteel
金属・鉱業
Reckitt
消費財
Vale
金属・鉱業
2025年6月30日付 Global Reporting Initiative HP: https://www.globalreporting.org/news/news-center/gri-and-tnfd-advance-nature-reporting-through-practical-guidance/
○ 2025年版「持続可能な開発報告書」:SDGs達成への課題と企業への示唆
-*-*-*-*-
世界での達成状況
日本での達成状況
目標
状態
進捗
状態
進捗
1
貧困をなくそう
大きな課題が残る
停滞
ほぼ達成
達成
2
飢餓をゼロに
大幅な遅れ
停滞
大幅な遅れ
後退
3
すべての人に健康を福祉を
大幅な遅れ
改善
ほぼ達成
改善
4
質の高い教育をみんなに
大きな課題が残る
停滞
少々課題が残る
停滞
5
ジェンダー平等を実現しよう
大きな課題が残る
改善
大幅な遅れ
改善
6
安全な水とトイレを世界中に
大きな課題が残る
停滞
少々課題が残る
改善
7
エネルギーをみんなにそしてクリーンに
大きな課題が残る
改善
少々課題が残る
改善
8
働きがいも経済成長も
大きな課題が残る
停滞
少々課題が残る
改善
9
産業と技術革新の基盤をつくろう
大きな課題が残る
改善
達成見込み
改善
10
人や国の不平等をなくそう
有効なデータ
11
住み続けられるまちづくりを
大きな課題が残る
停滞
達成見込み
改善
12
つくる責任つかう責任
大きな課題が残る
停滞
大幅な遅れ
改善
13
気候変動に具体的な対策を
大きな課題が残る
停滞
大幅な遅れ
停滞
14
海の豊かさを守ろう
大幅な遅れ
停滞
大幅な遅れ
停滞
15
陸の豊かさも守ろう
大幅な遅れ
停滞
大幅な遅れ
停滞
16
平等と公平をすべての人に
大幅な遅れ
停滞
少々課題が残る
停滞
17
パートナーシップで目標を達成しよう
大きな課題が残る
停滞
大きな課題が残る
改善
2025年6月24日付 2025年版「持続可能な開発報告書」:https://dashboards.sdgindex.org/
2025年7月1日付 PR TIMES:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000077.000027673.html
○ 男女格差ランキング、日本は今年もG7最下位、根強い政治・経済の低迷が全体引き下げ
-*-*-*-*-
EU
上場企業取締役のジェンダーバランス改善指令
全取締役の女性比率33%以上を求める。
賃金透明性指令
従業員100人超企業に男女賃金格差の定期公表義務化。
スペイン
男女同数法(平等な代表法)
政党の選挙候補者を男女各40%以上、上場会社の取締役会で女性40%以上などを義務化。
生理休暇の法制化
体調不良を伴う場合に有給休暇が取得可能。
米国
賃金透明化法(ニューヨーク、カリフォルニア、コロラド各州など)
求人票への給与下限・上限明示などを義務化。
妊娠労働者公平法(連邦法)
妊娠中・出産後労働者への合理的配慮を企業に義務付け。
https://www.reuters.com/world/europe/spain-announces-law-promoting-gender-parity-politics-business-2023-03-04/
2.欧州理事会プレスリリース(2023年4月24日)「Gender pay gap: Council adopts new rules on pay transparency」
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2023/04/24/gender-pay-gap-council-adopts-new-rules-on-pay-transparency/
3.Sustainable Japan(2023年4月26日)「EU給与透明性指令が成立。前職給与確認禁止。男女賃金格差の当局報告義務も」
https://sustainablejapan.jp/2023/04/26/eu-pay-transparency-directive/89368
2025年6月11日付 世界経済フォーラムHP:https://www.weforum.org/publications/global-gender-gap-report-2025/
○ 個人情報の漏えい、過去最多 個人情報保護委員会が年次報告を公表
-*-*-*-*-


2)「漏えい等した人数」とは、漏えい等した個人情報によって識別される特定の本人の数であり、人数が確定できない場合は、漏えい等した可能性のある本人を含む最大人数としている。
個人情報保護委員会「令和6年度個人情報保護委員会年次報告」: https://www.ppc.go.jp/files/pdf/070610_annual_report.pdf
○ 金融庁「取締役会の機能強化の取組みに関する事例集」を公表
-*-*-*-*-
戦略的アジェンダ
セッティング
ている。アジェンダを一度見直して終わりにするのではなく、常に現状を
評価し、絶え間なく会議の実効性を追求すべきとの声。
シップは重要。
依拠する。取締役側が事務局に能動的に働きかけることも必要。
リスクテイクを支
える環境整備
等を通じた事務局機能の強化の取り組みが行われている。
門間の垣根が高いが、事務局が関係部署の結節点となり、横ぐしを刺して
機能強化を図る取り組みが見られた。
用して、課題を特定し改善するため、定点観測を行いつつ着手の容易な部
分から漸進的に取り組んでいる事例があった。
実効性の高いモニ
タリングを実現す
るコミュニケーシ
ョンの深化
と事務局とのコミュニケーションを強化することにより、意見を入念に把
握し、情報の非対称性の解消に努めている。
間の確保に向けた進捗管理の工夫を行い、取締役、経営陣、事務局間での
コミュニケーションの深化を図っている事例が多い。
流機会を設定している事例があった。事務局が社外取締役の知見を最大限
活用する姿勢も有用。
2025年6月2日付 金融庁HP: https://www.fsa.go.jp/singi/follow-up/siryou/20250602/05.pdf
○ カスハラ対策や就活セクハラ対策を企業に義務づける改正法が成立
-*-*-*-*-
2025年6月11日付 厚生労働省HP: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00003.html
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海洋関連課題の概説と国際的な動向 ―国連海洋会議での議題を含めたポイントの紹介-【サステナブル経営レポート(2025年8月)】
2025年6月、第三回国連海洋会議(UN Ocean Conferece:UNOC3)がフランス・ニースで開催された。ニューヨーク(2017年)、リスボン(2022年)に続く3回目の開催であり、フランスとコスタリカの2ヵ国の共催によって「海洋の保全と持続可能な利用に向けた行動の加速とあらゆる主体の動員」をテーマに実施された。
会議の場では、海洋に関するあらゆる課題について議論された。例えば以下のようなテーマである。
本稿においては、これまで議論されてきた海洋関連課題の国際的な動向の中で企業の事業活動に関連するテーマを中心に概説し、UNOC3で示された直近の海洋関連の動向や議題を紹介する。
地球の約7割を占める海洋に関して、これまで幅広いテーマで国際的な議論が行われてきた。国際的な目標の一つである2030年のSDG14(海の豊かさを守ろう)の達成のためには科学的な知見の蓄積や協力が不可欠であるとして、2017年12月の国連総会において「国連海洋科学の10年」と称し、2021年~2030年の間、海洋関連課題に集中的に取り組むことが宣言された。2025年はちょうどその中間年にあたる。さらに2022年には生物多様性条約のもとでグローバル生物多様性枠組み(GBF)が採択され、2030年までに陸域と海域のそれぞれ30%を保護する(30by30)などの目標も定められた。
UNOC3においても随所でSDG14のターゲット(下表)に触れながら、その達成に向けた議論が行われた。
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む陸上活動によるあらゆる海の汚染を防ぎ、大きく減少する
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に対する重大な悪影響を回避し、健全で生産的な海洋のための回復措置を講じる
14.3 あらゆるレベルでの科学的な協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限に抑え、対処する
14.4 2020年までに、過剰漁業、違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)、破壊的な漁業慣行を根絶し、科学的根拠に基づいた管理計画を実施することにより、水産資源を最大持続生産量を生み出せる水準まで回復させる
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、入手可能な最良の科学情報に基づき、沿岸域及び海域の少なくとも10%を保全する
14.6 2020年までに、過剰漁獲等につながる漁業補助金を禁止し、IUU漁業につながる補助金を撤廃し、新たな補助金の導入を控える
14.7 2030年までに、持続可能な漁業管理、養殖業、観光業などを通じて、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国における海洋資源の持続可能な利用による経済的便益を増大させる
14.a 海洋の健全性を向上させ、開発途上国の開発に対する海洋生物多様性の貢献を高めるため、科学的知識の向上、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う
14.b 小規模零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する
14.c 海洋及びその資源の保全と持続可能な利用のための法的枠組みを規定する国連海洋法条約に反映された国際法を実施することにより、海洋及びその資源の保全と持続可能な利用を強化する
海洋関連の課題は様々だが、SDG14でも挙げられている通り、プラスチックや栄養汚染などを含む陸上由来の汚染、海洋由来の汚染、海洋生態系の破壊、海洋酸性化、IUU漁業、海洋資源の減少などがその一部として挙げられる。また、気候変動の影響によるサンゴ礁の白化や海洋生態系の生息域の変化なども、国際的な海洋関連課題の一つと言える。
これらの課題に対応するため、例えば海洋におけるプラスチック濃度のデータ取得の精緻化やサンゴ礁の現在の状態といった海洋データの取得や科学的知見の向上、IUU漁業の根絶のための漁業の適正な規制と持続的な管理をサポートする取り組みの実施、海洋に関係深い産業の自然に与えるインパクトや取り組みといった内容が、国連海洋会議においても種々のイベントで協議された。
ブルーエコノミーは、「海洋生態系の健全性を維持しながら、経済成長、生計の向上、雇用のために海洋資源を持続的に利用すること」と定義されている※2。具体的には、漁業や水産養殖、海運、サンゴ礁やマングローブなどを始めとする沿岸・海洋観光、洋上風力や海水淡水化、海底の資源採掘といった事業が深く関係していると言える。これらの産業セクターは、海洋の資源や景観などの生態系サービス※3に依存し、インパクトを与えている。与えているインパクトを回避・低減し、修復・再生していくことは、自らの産業のためにも重要な取り組みである。
観光セクターにおいては、6月7日にUNOC3の特別イベントの場において、持続可能な沿岸・海洋観光を構築するための「海洋観光協定(Ocean Tourism Pact)」が発足された※4。これは、フランス政府、持続可能な開発と国際関係研究所(The Institute for Sustainable Development and International Relations)、海洋と気候プラットフォーム(Ocean & Climate Platform)の3機関によるものである。同協定では、2021年にCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)にて発表された観光における気候変動対策に関するグラスゴー宣言や観光分野におけるプラスチック廃棄物削減を目的とした国際的な取り組みといった行動を推進していくとしている。
魚、カメ、サンゴ礁、海洋哺乳類などの海洋生態系や海そのものの景観、またそれらを楽しむためのレクリエーション(シュノーケリング、ダイビング、カヤック等)は、観光セクターが深く依存している生態系の文化的サービスと言える。沿岸・海洋の観光セクターは、年間1兆5,000億ドルの利益を生み出し、世界中で5,200万人の雇用を支えており、重要な海洋関連セクターの一つであると言える。
2022年2月から3月にかけて開催された第5回国連環境総会(UNEA5.2)において、海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(条約)、いわゆる「国際プラスチック条約」を政府間で議論・採択していくことが決定された。同条約はライフサイクル全体におけるプラスチックの環境への影響を削減することを目的に、生産、使用、廃棄等各段階でどういった国際的な取り組みを推進していくかを定めることとしている。
本来2024年11月に開催した INC5(政府間交渉委員会第5回会合)において本条約は採択される予定であったが、いくつかの条文において参加国の意見がまとまらず、2025年8月に改めての最終化を予定している※5。
交渉が難航している条文の一つに、プラスチックの生産量の上限制限を設けるか否かがあり、特に産油国を中心に反対の声が上がっている。海洋のみならず幅広いセクターに関係するプラスチック問題において、世界的な目標を定めてそもそもプラスチックの生産を抑制するのか、使用または廃棄の段階での取り組みに注力することとなるのか、プラスチック条約の最終化においてどのような結論が下されるかについては、注視する必要がある。
今回の国連海洋会議に合わせて、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は新たに2つのセクターガイダンスを正式に公表した。今回公表されたガイダンスは海洋に深く関係する漁業、海運業が対象であり、関連するセクターの企業はガイダンスを参照することで、自社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)の特定や取り組みの検討に役立てることができる。
例えば海運業は国際貿易上重要な役目を持っている一方で、航行そのものや操業によるGHG排出、平時および事故発生時の海洋汚染(海中騒音を含む)、SOx・NOx(硫黄酸化物・窒素酸化物)等による大気汚染、水中騒音や海洋の生物との衝突、バラスト水や船体付着等による外来種の越境移動など、運航の過程で様々な環境社会へのインパクトの可能性を抱えている。こういった自社と自然との関係性の把握は、自然関連のリスク・機会の特定のための第一歩となる。
TNFDはセクターガイダンスの公表に合わせて、海洋関連データ取得の課題に関するディスカッションペーパーも公表しており、以下の課題を挙げている。
また、科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブ(Science Based Targets Network:SBTN)は2025年3月、海洋域に関する科学的根拠に基づく目標設定手法を公表した。現時点で海洋域の目標は①乱獲の回避と削減、②海洋生息地の保護、③ETP種(海洋漁業における絶滅危惧種や保護対象種)のリスク低減という3つが設定されており、漁業・養殖業の企業が参照できるようになっている※6。
今回の第三回国連海洋会議は、フランス南東部の沿岸にある都市ニースで6月9日から5日間にわたって開催された。本会場(ブルーゾーン)はニース港に設けられ、各国代表、プレス、メディアおよび国連に承認された組織(研究機関、国際機関、NGOなど)のみ参加できる。一方、本会場から徒歩30 分程度には誰でも入場可能な別の会場(グリーンゾーン)が設けられ、15種のパビリオンで展示、ワークショップ、パネルディスカッションなど様々なサイドイベントが開催された。


【写真】サイドイベント会場の様子
本会場では公式の会議であるPlenary meetingsとOcean Action Panelsの2種類の会議が行われ、各国連加盟国の海洋課題へのコミットメントの発表や対話が実施された。また、公式の会議とは別に、多様な主体による様々なサイドイベントが実施された。
Ocean Action Panelsにて議題となったのは、以下の10の海洋行動である。
筆者が参加したサイドイベントの議論を踏まえ、今回の会議のポイントと考えられる議題を紹介する。
UNOC3の注目点の一つに、国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定:Marine Biological Diversity of Areas Beyond National Jurisdiction)の批准国の数が60を充足するかがあった。BBNJ協定は、「いずれの国の管轄にも属さない区域(Areas Beyond National Jurisdiction)」における海洋生物の多様性についても、その保全及び持続可能な利用に関するルールが必要として2023年に採択された協定である。この協定は批准国が60ヶ国を超えた120日後に発効することとなっており、今回のUNOC3までに批准国が規定数を超えることが一つの目標とされていた。
同協定は30by30達成においても重要となる公海の保護区の設定や海洋遺伝資源の利用(利益の公正かつ衡平な配分を含む)、環境影響評価の実施など、公海上の様々なルール設定のために必要であり早期の発効が望まれている。
本会議を経て、署名国137ヶ国、批准国51ヶ国(2025年6月20日時点)と、5月末の21ヶ国から大きく数字は伸ばしたものの60ヶ国には満たない結果となった※7。ただし議会承認手続きに向けて準備中の国も多く、早晩、発効するものと推察される。日本は現在批准に至っていないが、環境省が2025年6月に「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」 を公表するなど、関連する取り組みを進めている※8。このガイドラインは公海等における、または公海等に潜在的な影響を及ぼす可能性のある活動の実施の決定を行う前に、当該活動の環境影響評価を事業者が実施する際の手続きを定めている。
海洋保護区(Marine Protected Areas)に関するイベントでは、保護区を設定する重要性や、適切な保護区の設定のために海洋生態系のデータを取得することが強調されていた。一方で保護区の管理に関する規制・ルール作りが明確でないこと、また保護区での海洋環境のモニタリングが困難であることが課題として挙げられていた。前者に関しては実際に海洋保護区内での底引き網漁などがこれまでもたびたび問題となっており、本会議においてはフランスやイギリスなどが一部の保護区で禁止する方針を発表している※9。また本会議中に、2018年に創設した「海洋パネル」が、自国海域領域の100%を持続可能に管理することにコミットする「100%アライアンス」を正式に発足した※10。
他のサステナビリティ課題と同様に、会議中多くのイベント内において「海洋生態系を含む海洋関連データの取得」とそれに基づく「科学的な知見」、これらの学術的領域と「国際的/地域的な規制」、「資金動員」などの連携が重要であることが言及された。
先ほど紹介したTNFDのディスカッションペーパー内でも、科学的知見を得るための海洋関連データの取得が重要な課題として挙げられている。生態系データの取得方法として例えば衛星データが挙げられるが、衛星データはサンゴ礁の状態などの沿岸の生態系データの取得に役立つ一方で、水中の状況を捉えることは困難である。また、衛星画像に限らず海洋関連のデータを一度取得して以降、継続的にデータを取得し続けることがコストなどの関係で困難であることも課題の一つとされている。
海洋関連データをテーマにしたイベントは多く確認され、例えば中国アフリカ海洋科学ブルー経済協力センターらが開催するイベントにおいては、海水温や波の状態等をブイによってモニタリングし、データを公開するツール「Coastal city Ocean-based Solution Toolkit for sustainable development(COAST)」を発表した。
またNPI(Nature Positive Initiative)※11は、6月9日に海洋における「ネイチャーポジティブ」の測定に関する合意形成に向けたパートナーシップを発表した。同イニシアティブは2025年1月に陸域の自然の状態を評価するためのState of Nature(SON)指標のドラフト版を公表しており、海洋においても「ネイチャー・ポジティブ」を正確かつ有意義に測定するための指標について議論し、重要なデータとモニタリングのギャップ、および優先課題を特定するため、活動を進めていくとしている。
本会議のイベント上で、特に海と関連深いセクターとして、海運、漁業、金融等に関するイベントが多く確認された。
海運セクターについては大きくGHG排出、スクラバー、水中騒音によるかく乱といったインパクトに関する議題が特徴的だった。海運セクターの大きな課題の一つであるGHG排出については、海運セクターだけでなく次世代燃料を使用する船舶の造船、港湾における次世代燃料補給(バンカリング)拠点や港湾施設そのものの陸上電力供給システムなどを通じたカーボンニュートラル化など、サプライチェーンを通じた協力的な取り組みが必要であるということが強調されていた。
また(2)の海洋関連情報の収集ともつながる話題として、海運セクターなどの保有する船舶を利用した大規模なデータ収集も言及されていた。こういったデータ収集の例として、「10,000 ships in the ocean initiative」が挙げられる。同イニシアティブは、リアルタイムの天気や海洋データを提供する観測機器を搭載した船舶の数を、商業船を巻き込んで2035年までに10,000隻にすることを目標にしている。
金融機関・保険セクターに関連するイベントの一つとして、AXA Climateらは沿岸の洪水リスク緩和に寄与するサンゴ礁の価値を評価して保険に組み込む事例や、マングローブを回復するプロジェクトを実施している地元の漁師をハリケーンから保護するための保険事例など、海洋生態系の与える生態系サービスや、生態系の保全と関連付けられるような保険のデザインをいくつか紹介していた。
OECDは、海洋関連の産業が生み出す年間経済価値が2030年までに3兆ドルに達する可能性があると予測している※12。今後ますます産業が発展していく中で、健全な海洋を保ちながら事業活動を行っていくため、ブルーエコノミーの実現が望まれる。
本稿では海洋関連の国際的な課題の概説と、6月のUNOC3において議論されたテーマや発表された内容を紹介した。直近の国際的な動向として、国際プラスチック条約の最終化において決定される条項や、BBNJ協定の発効のタイミングなどが引き続き注目される。
本年度のUNOC3は、各国政府の海洋に関するコミットメントの発表など政策的な行動から、科学者らによる海洋研究、産業セクターの立ち位置など、海洋の保全と持続可能な利用に向けて様々な議論が行われ、海洋保護区の拡大や海洋汚染への対策、脆弱な島嶼国への資金動員などを組み込んだ「ニース海洋行動計画」を採択して閉会した※13。
特に海洋に深く関係する企業においては、自社が依存し、インパクトを与えている海洋環境の健全性を保ちながら事業活動を実施していくために、TNFDやSBTNにおいて発行されているガイドライン等を参照しながら自社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)を特定・管理し、インパクトを低減するような取り組みに努めていくことが求められる。
またUNOC3において日本の参加者や日本が主導するイベントが少なく、プレゼンスがあまり感じられなかったことは残念であった。日本は地理的にも海洋国家であることから、持続可能な海洋国際政策において、よりイニシアチブを取ることが期待される。
1)国連開発計画(UNDP)HP:https://www.undp.org/ja/japan/sustainable-development-goals/
2)世界銀行 HP:https://www.worldbank.org/en/programs/problue
3)食料や水の供給、気候の安定など、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵みのこと。
4)IDDRI HP:https://www.iddri.org/en/about-iddri/press-releases/launch-ocean-tourism-pact
5)国連環境計画(UNEP)HP:https://www.unep.org/inc-plastic-pollution/session-5
6)SBTN HP:https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/sbtn-launches-first-ocean-science-based-targets-for-seafood/
MS&ADインターリスク総研 RM NAVI「SBTNが初の海洋域に関する目標設定手法を公表」(2025/5):https://rm-navi.com/search/item/2155
7)United Nations Treaty Collection HP:https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=XXI-10&chapter=21&clang=_en
8)環境省「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」:https://www.env.go.jp/content/000320443.pdf
9)Client Earth HP:https://www.clientearth.org/latest/press-office/press-releases/uk-and-france-pledge-to-ban-bottom-trawling-in-protected-areas-lawyers-call-for-enforcement/
10)High Level Panel for A Sustainable Ocean Economy HP:https://oceanpanel.org/100-alliance/
11)「ネイチャー・ポジティブ」という言葉の定義や整合性等の調整を推進し、ネイチャーポジティブ達成に向け広範で長期的な取り組みを支援することを目的としているイニシアティブ。
12)OECD HP:https://www.oecd.org/en/publications/the-ocean-economy-to-2050_a9096fb1-en.html
13)United Nations HP:https://press.un.org/en/2025/sea2231.doc.htm
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【終了】サステナビリティで稼ぐ、企業の “サステナビリティリレーションズ戦略”
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脱炭素/カーボンニュートラル支援(セミナー・勉強会/脱炭素研修・ワークショップ/Scope1,2算定)
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脱炭素/カーボンニュートラル支援(サプライチェーン対応・SBT認証取得・削減計画策定)
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脱炭素/カーボンニュートラル支援(CFP/省エネ・再エネ/クレジット)
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【終了】<実践!健康経営セミナー>健康経営優良法人2026の動向と対応~今後の健康経営の方向性を探る~
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コメ価格の高騰と長期推移からみる農業の課題とアグリテックの必然
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人的資本の情報をSSBJ基準で開示する際のポイントは?専門家がわかりやすく解説(SSBJ基準解説・後編)
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安全運転教育の有効性を高めるには?―交通事故ゼロを目指して企業が取り組むべきことを専門家がわかりやすく解説―
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今知っておきたいカーボンプライシング①-日本の制度の現状とこれから
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