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サイバーインシデント発生時の情報開示|初報・続報・記者会見の判断と留意点
サイバー攻撃の被害公表は、被害拡大を防ぎ、信頼を維持するための重要な危機対応である。
第一に、顧客・取引先・株主・従業員などの関係者が、自らの安全確保や追加対応を取れるようにするためである。
たとえば、個人情報流出の可能性があれば、パスワード変更や不審メールへの警戒を促す必要がある。あわせて、提供サービスの停止などを顧客に案内し、混乱を避ける狙いもある。
第二に、法令・規制・契約上の報告義務を果たすためである。第三に、自社の信用維持のためである。事実を隠したまま後から発覚すると、被害そのもの以上に「隠蔽した」という印象が信頼失墜を招く。迅速で誠実な公表は、組織の危機管理能力を示す手段でもある。
なお、公表の目的は「謝罪」だけではなく、何が起き、何に注意すべきか、次にどう対応するかを社会に伝えることにある。
| 位置づけ | 目的 |
|---|---|
| 被害の公表 | サイバー攻撃被害があったことや、どのようなインシデント対応を行ったのかを、被害組織が情報発信する。 法令・ガイドラインに基づく公表のほか、法令などの定めはないものの、被害組織自身の判断で行う公表もある。後者の判断に至る事情はさまざまで、例えば、以下のようなものがある。
|
| 情報共有 | 被害組織で見つかった攻撃技術情報を中心に、非公開の方法で情報共有活動参加組織と共有し、フィードバックを得ることや、早期警戒、共助を目的とする。 未公表の個別攻撃を特定・調査するために必要なインディケータ情報や、被害予防に必要な侵入経路などのTTP※1情報を共有する。 |
| 報告 | 法令に基づき、または任意により、被害事実や対応状況について行政機関に伝えること。 |
| 連絡 | 取引先や顧客等、なんらかの利害関係者に対して攻撃被害が発生したことや、調査結果等を伝えること。個人情報漏えいなどで顧客や取引先に二次被害が発生するおそれがある場合や、調査がある程度終わり、被害内容や取引先へ影響の有無などを伝えるために行う。 |
出典 「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス」をもとにMS&ADインターリスク総研が作成
※1 TTP:Tactics, Techniques, and Procedures の略で、攻撃者の行動パターンや攻撃の進め方を表す用語
サイバーインシデントの発生時にはインシデントレスポンス※2として、被害を受けたシステムの復旧、企業の危機管理対応、事業の復旧の3つが同時並行で進む。また、それぞれが緊密に連携することが欠かせない。
※2 インシデントレスポンス:サイバー攻撃や情報漏えい、システム障害などのインシデント発生時に行う対応のこと

インシデント発生直後は、検知した自組織では混乱が生じ、システム障害の原因が明確でないこともある。ランサムウェア被害の場合、攻撃者からの犯行声明や身代金要求文書(ランサムノート)が見つかれば、原因がサイバー攻撃だと断定できる。ただ、被害範囲の特定には時間を要する。
このように、サイバーインシデント時の広報対応は、通常の新製品発表やイベント告知とは異なり、情報が未確定な中で発信しなければならない点が最大の特徴である。そのため、確認済み事実と未確認事項を明確に分け、断定を避けて伝えることが重要である。
社内のIT部門やCSIRT※3 、危機管理委員会や対策本部は連携して短時間で情報を整理する。開示要否、開示目的、開示主体(単独か関係者と連名にするか)、開示範囲(開示先、開示する情報の範囲)、開示方法(開示方法は後述の第4項参照)、開示の時期(初報、続報のタイミング)といった項目を基本方針として定め、これに則って対応を進める。
※3 CSIRT:Computer Security Incident Response Teamの略。情報セキュリティインシデントに対応するための組織・チームを指す
事故に関する調査の進展や、顧客などのステークホルダへの対応方針が定まったタイミングで適時に情報を開示する。危機時は、広報部門だけでなく、情報システム、法務、経営、外部専門家が連携し、メッセージを一本化することが欠かせない。広報におけるポジションペーパーに則り、何を開示してよいか/開示してはいけないか、問い合わせがあった場合の対応方針等を定め、情報を統制する。
お詫び文章を掲載することは重要だが、感情表現だけで終わらせてはならない。再発防止策と問い合わせ窓口を明示し、実行可能な対応を示すことが、信頼回復につながる。
情報開示に、必ず記者会見やプレスリリースが必要ということではない。状況と目的に応じて、適切な開示方法を選ぶ。
| 位置づけ | 内容 | 狙い | タイミング |
|---|---|---|---|
| オフィシャルサイト掲出 | 発生事案の説明や事案を受けた見解などを自社のオフィシャルサイトに掲載する。 |
(お客さまや取引先が「自分は大丈夫か」を確認できる場所を作る) | 「第1報」は、インシデントを検知後、速やかに掲載する。詳しい原因がまだわからなくても、事故の概要や詳細調査中であることを示す。合理的な理由なく事案発生から第一報までに時間を要した場合、隠蔽が行われていたと評価されるリスクがある。 調査が進み、新しい事実が判明したタイミングや、被害を受けたステークホルダへの対応が決まったタイミングで、その都度掲載する。 |
| プレスリリース | 記者クラブの加盟社などに配布、またはメールなどで送信する。 |
| 広範囲な被害に及び、社会的な影響が大きい可能性があると判断した段階で実施する。(個人情報が大量に漏えいしている可能性がある、等) |
| 記者会見 | 記者クラブや用意した会場で、さまざまなメディアの記者を集め、説明や質疑応答に対応する。 会社の代表者(社長や役員)が登壇・説明する。 | 経営としての責任を示し、深刻な事案に対して丁寧に説明・謝罪する。 | 重大事故・大規模被害など、社会的関心が高く、代表者の説明が必要なときに実施する。ただし、事実関係(原因や被害の全体像)がある程度判明していない状況で実施しても記者からの質問に十分答えられず、逆効果になるおそれがある。 |
ここまで有事における情報開示を説明してきたが、より理解を深めるために、平時の段階における情報開示との違いを述べる。
平時にサイバーセキュリティへの対応状況を開示することの意義は、社会的信用を獲得し、事業の成長につなげることである。例えば、取引先や顧客から選ばれるための信頼獲得や、取引維持のためにサイバーセキュリティ管理体制の要件を満たしていることを示す目的がある。
これに加え、投資家や株主に対する公表は、自社のサイバーセキュリティガバナンスの実効性を示すことでESG投資※4につなげることを目的とする。
信用格付け会社では、サイバーセキュリティの管理体制単独で評価することはないが、ESGのうちのG:Governance(企業統治)の観点で、アナリストによる経営陣へのヒアリングや公開情報(事業計画、管理・監査体制等)に加え、外部パートナーと連携したセキュリティ診断の結果を用いるケースがある。
※4 ESG:投資先を選ぶ際に、利益だけでなくE:Environment(環境)、S:Social(社会)、G:Governance(企業統治)の3つを重視し、環境や社会への配慮、経営の健全性が高い企業を評価して投資する考え方。
平時から、想定されるインシデントごとの公表文案、承認フロー、問い合わせ窓口、社内連絡網を整えておく必要がある。あわせて、広報・法務・情報システム・経営層が連携できる体制を作り、誰が何を判断するかを明確にしておくことが重要である。
さらに、第一報で伝えるべき項目を整理し、定期的に訓練を行うことで、実際の発生時にも迷わず対応できる。準備の有無が、炎上の抑制と信頼維持を大きく左右する。
MS&ADインターリスク総研株式会社は、サイバーインシデント発生時の初動対応の体制整備と、サイバー攻撃によりシステムが利用停止に陥った事態を想定した事業継続計画(BCP)策定をご支援いたします。
また危機発生時において求められる、事実確認、情報共有、意思決定、対策実行、情報開示に関するトレーニングを企画し、お客さまの実践力を検証します。




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【終了】アーカイブ配信<人手不足対策セミナー>超実践的 人材が育つ組織マネジメント
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みんなで街のレジリエンスを高める「流域治水」とは?水災害激甚化に立ち向かう新たな挑戦 ―【連載企画】流域治水とグリーンインフラ(Eco DRR)に関するアンケート調査結果を読み解く 第1回
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不審者対応コンサルティング
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不審者侵入と事件発生への備えとは?企業・施設が今見直すべき対策
国内では毎年のように、商業施設や学校施設などで不審者が侵入する事件が発生しています。
2025年には、東京都内の小学校に男2人が侵入し、教職員などに重軽傷を負わせる事件が発生しました。この事件を記憶されている方も多いのではないでしょうか。
| 発生年 | 場所 | 内容 |
|---|---|---|
| 2020年 | 商業施設 | 女性が男に刺殺される |
| 2021年 | 鉄道施設 | 鉄道の車内で乗客が刃物で襲われ7人が重軽傷を負う |
| 2023年 | 学校施設 | 卒業した少年が学校に侵入し、教員を切りつける |
| 2024年 | 商業施設 | 男性がスプレーまかれたと通報、利用者が目の痛み訴える |
| 2025年 | 学校施設 | 教職員など4人が侵入してきた男2人に暴行される |
| 2026年 | 商業施設 | 男が催涙スプレーのようなものを噴射し20人以上が搬送される |
出典:報道をもとにMS&ADインターリスク総研が作成
このように、不審者による侵入事件や傷害事件などは、いつ、どこで発生するかを予測することができません。商業施設のように不特定多数の人が出入りする施設では、不審者の侵入を完全に防ぐことは困難です。
こうした施設で事件が発生した場合、現場に混乱が生じ、避難時に利用者や従業員が負傷するなど、二次被害が発生するおそれがあります。さらに、学校施設では利用者の大半が子供であるため、避難誘導は通常よりも難しくなります。したがって、いかに迅速かつ的確な初動対応を行えるかが非常に重要です。
このため、事業者の皆さまは、不審者の侵入事件や傷害事件などへの未然防止策を講じると同時に、事件が発生した場合に備える必要があります。
不審者の侵入事件等が起きることを前提に備えるにあたっては、日ごろから「不審者をどのように発見するのか、事件が発生した場合、どのように対応するか」を明確にしておくことが重要になります。
特に、子どもや女性の来訪が多い施設では「前兆事案」を見逃さないことも大切です。前兆事案とは、子供や女性を対象とした性犯罪等の前兆とみられる、声掛け、つきまといなどの行為を指します。これには、刑罰法令に触れない程度のものも含まれます。
施設の周辺の徘徊、特定の利用者への執拗な関心、写真撮影といった行為など、1つ1つは直ちに問題行動に見えなくても、このような行為が重なることで、不審者の侵入や傷害事件などが発生する前兆となり得ます。

こうした前兆を確実に把握するためには、次のような点を準備しておくことが有効です。
前兆事案を把握できたとしても、その後の対応手順が定まっていなければ、事件を未然に防げないおそれがあります。また、事件が発生した場合には、二次被害を防止し、速やかに警察へ引き継ぐことが必要です。
そのため、施設の特性に応じた不審者・事件対応マニュアルを作成し、関係者間で「誰が」「いつ」「何をするか」を明確にしておくことが重要です。さらに、マニュアルに沿った手順や知識を適切に身に付け、誰もが同じ水準で安定して対応できるようにすることも重要です。
マニュアルに盛り込む項目としては、次のようなものが挙げられます。
不審者の侵入や事件の発生はいつ起こるかわからないものの、発生頻度が高くないことも事実です。その一方で、実際にそれらの事件が発生すると、想定外のことが起こる可能性があります。
こうしたことから、マニュアルを作っただけでは、いざというときに適切に対応できないおそれがあるため、定期的に訓練を実施することで対応能力を高めていく必要があります。
実際に、学校施設では不審者対応マニュアルを整備したり訓練を実施したりしていたことで、被害を最小限に抑えられた事例もあります。
訓練の実施にあたっては、次のような点を確認しておく必要があります。

そして特に重要となるのが、訓練後の「振り返り」です。
情報伝達に問題がなかったか、判断に迷った場面はなかったか、マニュアルに不足はなかったかなどを振り返り、課題点や改善点を洗い出します。振り返りを踏まえて体制を見直すことで、実際の緊急時に対応できるようになります。
商業施設や学校施設などで不審者の侵入や傷害事件などが発生した場合、死傷者が出るだけでなく、その後の風評被害が生じることで、長期間にわたって悪影響を及ぼし続ける可能性があります。
被害を最小限に抑えるためには、マニュアルの作成などの「侵入前の対策」と訓練を通じて会得する「事件発生後の対応」の両輪で考える必要があります。
不審者の侵入や事件の発生に備えるためには、次の3つの視点が重要です。
万が一の事態に備えて、平時から実効性のある体制づくりを進めていきましょう。
MS&ADインターリスク総研では、学校施設・商業施設・大規模集客施設の防犯体制強化を支援する「不審者対応コンサルティング」をご提供しています。
不審者侵入時の初動対応から、不審者対応マニュアル策定、防犯リスクサーベイ、従業員向けセミナーまで、施設ごとの実態に即した不審者対応・防犯体制の構築を支援させていただきます
お気軽にご相談ください。
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サステナビリティ推進による「価値創出プロセス」可視化支援サービス
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自然の力を生かした防災・減災と損害保険会社の役割【リサーチレター(2026年7月)】
近年、気候変動の進行などにより、台風や豪雨、それに伴う洪水や土砂災害等、自然災害の激甚化と頻発化が問題となっている。国連防災機関(UNDRR)が発行した「Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction 2025」によると、1970年から2000年の間、自然災害によって生じた直接的な損失額は年間平均700億~800億ドルだったが、2001年から2020年の間には、1,800億~2,000億ドルとなった(物価調整済みの値)。それだけでなく、より広範な社会・生態系の損失を考慮に入れると、推計される損失額は、年間およそ2.3兆ドルに達する。
また、国内では環境の変化だけでなく、地方の過疎化や高齢化、インフラの老朽化等により、地域社会の脆弱性も高まっている。これまで、防災・減災対策はダムや堤防、護岸等のグレーインフラが中心となっていた。しかし、これだけではリスクを十分にコントロールできない局面が増えている。加えて、整備や維持のコスト、生態系への影響も課題となっている。
こうした背景から「自然に根ざした解決策(NbS)」や、その一つであるグリーンインフラを既存のグレーインフラとともに活用することが進められている。洪水緩和、土砂流出防止、気温調整等の防災・減災機能だけでなく、生物多様性保全、地域住民のウェルビーイングなど、多くの便益をもたらすものとして注目されているからだ。
日本では2015年以降、国の計画や戦略の中にグリーンインフラが盛り込まれ、近年は社会実装に向けた取組みが進められている。防災・減災や地域づくりの手法の一つとしての期待は大きい。
NbSは、自然の持つ多機能な特性を生かし、生物多様性や気候変動だけでなく、防災・減災や食料問題、人間の健康増進などといった、複数の社会課題を同時に解決することを目指す取組みである。2009年にIUCN(国際自然保護連合)が提唱し、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の目標8・11にも、この要素が盛り込まれている。また、NbSの中には「生態系を基盤とした防災減災アプローチ(Eco-DRR)」「気候変動適応策(EbA)」「グリーンインフラ」なども含まれる。
| NbSアプローチのカテゴリ | 例 |
|---|---|
| 生態系回復アプローチ | 生態系再生 生態工学 など |
| 問題別のアプローチ | 生態系を基盤とした防災・減災(Eco-DRR: Ecosystem-based Disaster Risk Reduction) 生態系を基盤とした気候変動適応(EbA: Ecosystem-based Adaptation) など |
| インフラに関連するアプローチ | グリーンインフラストラクチャー 自然インフラストラクチャー |
| 生態系を基盤とした管理アプローチ | 統合的な沿岸管理 統合的な水資源管理 |
| 生態系保全アプローチ | 保護地域管理を含むエリアに基づく保全アプローチ(政府等による保護区域・OECM) |
出典:吉田尚也編(2021).『BIOSITY No.86 NbS 自然に根ざした解決策 生物多様性の新たな地平』.ブックエンド
日本でも2015年以降、国の計画や戦略の中でグリーンインフラが位置づけられ、近年は社会実装に向けた取組みが進んでいる。国土交通省は、その定義を「自然の多様な機能を活用した社会資本」とした。このように、防災・減災にとどまらず、快適な地域づくりやウェルビーイング向上にもつなげようとしている。2020年に「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム」が設立されたほか、2026年1月には「『グリーンインフラの活用が当たり前の社会』の実現」を目指す、2030年までの計画「グリーンインフラ推進戦略2030」が策定された。本計画では2050年の「『自然共生社会』の実現」に向け、環境整備策やグリーンインフラの実装事業に個別のKPIが設定※1されている。
※1)前者に「政令市が存在する全都道府県でGI(筆者注:グリーンインフラ)に関する融資又は金融商品を1件以上創出」など。後者に「グリーンインフラ官民連携プラットフォーム会員のうち、雨庭に関連する取組みをした会員数を500者にする」など。
NbSの中でも、グリーンインフラには、雨水をためる、しみこませる、流れを緩やかにするなどの働きにより、洪水や土砂災害の被害を和らげる効果が期待されている。
東京都内では、市民参加のもとで雨庭※2などの小規模グリーンインフラを面的に広げ、水災リスクの低減を図る取組みが行われている。海抜が低いなどの要因から都市型水害のリスクが高い墨田区では、かねてから雨水を貯める設備(雨水タンク等)を設置してきた。それだけでなく、雨どいプランター、薄型雨庭など、すき間を生かした小規模グリーンインフラモデルを住民参加型で設置した。さらに、それらの運用実態や効果を検証するために、水位・温度をモニタリングし分析を行っている。

その結果は区の「すみだ雨水活用ガイド」や助成制度(浸透ます・トレンチへの拡充)に反映されている。雨水タンクの水位をリアルタイムで見える化し、豪雨前の事前排水を促す仕組みづくりも進めており、下水道の負荷軽減に資する「分散型インフラ」のモデルとなっている。
この他にも、武蔵野台地の「雨にわ」事業は、局地的大雨が増えるなか、護岸工事などの「雨をはやく流す」対策の限界を踏まえ、宅地レベルで雨を貯めて浸透させるNbSの普及・実証がある。世田谷・武蔵野の2地域で、調査・計画から施工・維持管理・モニタリングまで一連のプロセスを実施した。それを通じて定量データを蓄積している。また、行政による技術指標(「世田谷区雨水流出抑制施設技術指針」)の整備も進んでいる。さらに、NPOや地域の財団法人が主催するワークショップなどに、未就学児から高齢者まで300名以上が参加し、防災意識と生物多様性への理解を高めている。
※2)住宅や事業所の敷地の一角に設置される、雨水を貯留・浸透させるための植栽のこと。
ある金属加工機械メーカーは、事業所の設備更新に伴ってグリーンインフラを整備した。同事業所は広大な敷地面積を持ち、ここでの雨水貯留対策は、周辺住宅地へ与える影響が大きい。また、敷地森林の約8割が単一種の人工林となっており、グリーンインフラ整備による生物多様性の回復も効果的であった。そこで、在来種中心の多様な植栽を含めた、バイオスウェル※3と雨庭を整備した。地内に降った雨を敷地内で浸透・浄化させ、地域の水害・水質リスクを抑えつつ、休憩に使える緑地として従業員に開放している。これにより、雨水管理機能、環境・生物多様性配慮、従業員の健康・コミュニケーション促進を、一つの取組みで同時に実現した。加えて、雨水浸透・貯留の様子が可視化されたことは、従業員の防災意識向上にもつながるとしている。企業での「人的資本」向上という価値も生み出しうると評価されている事例である。
※3)砂利を敷き詰めた、深さ70cm程度の側溝。雨水を貯留し、ゆっくりと地中に浸透させる効果がある。雨庭に比べ、水質浄化機能が強調されることが多い。
世界銀行は、自然災害の激甚化によって保険金請求が地理的または部門的に集中すると、損害保険会社の収益性や補償能力の低下につながる可能性があると指摘した(2022)。背景には、自社の財務負担の増加と、保険料引き上げの必要性という2つの要因がある。財務負担が増すにつれて保険料が上昇していき、ニーズの高まりと相反して、財務的に加入しづらくなる可能性がある。すると、保険普及率が低下し、顧客数は減少してしまう。
これは災害の激甚化・頻発化と、保険に加入できないことの悪循環を招く。この状態に陥ると、損害保険会社の損失は増え、十分な補償を受けられない主体が社会全体で拡大することになる。そして企業や個人の経済的負担と、それに伴う社会的な悪影響が増加する。
さらに、再保険コストの上昇や引受制約の強まりも、長期的な事業継続性の懸念へとつながる。そこで、災害発生前のリスク評価やリスク低減支援など、リスク自体の低減への関与が重要な経営課題となる。
このように、自然災害による影響やリスクが大きいゆえに、保険セクターはその対策として自然資本の損失を低減する役割を期待されている。自社の収益性向上の戦略と、自然を回復させる取組みが重なるためだ。期待される内容とそれに付随する機会は、大きく3つに分類できる。
現在、ネイチャーポジティブ※4に向けて自然を再生するために提供される資金は、自然の状態を悪化させる資金の流れに比べて不足している。NbSへの資金拠出は世界全体で推定2,000億ドルとされているが、これは必要な資金の約3分の1である。反対に自然にマイナスの影響を与える資金は、7兆ドルにも及んでいる。(UNEP、2023)
損害保険会社の事業によって、自然資本へ直接的に損害を与えるリスクは少ないとされる。しかし、企業への保険引受や投資が、自然への悪影響につながる可能性はある。一方で、自然の保全によってレジリエンスを高めることは、損害保険事業をするうえでのリスクを低減し、事業活動への好影響をもたらすことができる。顧客企業が災害に遭うリスク(物理的リスク)や自然への配慮に欠けた事業への訴訟リスク(移行リスク)などが、保険金の支払い増加(金融リスク)として自社に降りかかる可能性を低減できるからだ。そこで、ネイチャーポジティブな事業活動を行う企業への投資や、保険契約でのインセンティブの設定などが検討、推進されている。
他にも、自然保護や生態系回復のプロジェクトを支える保険の試みも、海外ではみられる。こうした取組みは、プロジェクトの継続性を高めることにつながる。
※4)「2030年までに自然の損失を止め、反転させる。そして、2050年までに完全回復を達成する」ための国際目標。
世界銀行(2022)や環境防衛基金(2025)のレポートでは、損害保険会社が保有しているであろう自然災害リスクのデータや解析モデルの活用が訴えられている。これにより、NbSによって「どの程度リスクが下がるのか」や、NbSが「投資に見合うのか」を示せる可能性がある。NbSは、防災・減災に有効とされながらも「どの程度リスクが下がるのか」「投資に見合う効果があるのか」が見えにくく、導入の大きな障壁となっている。環境防衛基金の同レポートでは災害(洪水・内水・高潮・土砂災害など)のハザードモデルや保険金支払データ、リスクマップ作成能力はこの「見えにくさ」を解消する役割を担いうるとしている。
環境省は「ネイチャーポジティブ経済移行戦略ロードマップ(2025-2030年)」(2025年)の中で、ネイチャーポジティブ経済への移行を訴えている。それに向けた道筋の一つとして、「情報開示の促進とネイチャーファイナンスの拡大による、ネイチャーポジティブ経営の拡大・深化」を提示した。
環境省によると、企業が自然関連財務情報の開示(TNFD)などに取組み始めている一方で、その成果が資金調達や需要拡大、企業価値向上に十分つながっていない。また、金融機関や投資家も評価指標が未整備なため、投融資判断が難しい現状があるという。これらを受けた課題として生物多様性・自然資本に関する「データ整備」や「価値取引を見据えた価値評価」等を挙げており、損害保険会社によるデータやモデルの提供が貢献できる可能性がある。
海外では、既に商品設計への反映を行っている事例もある。ある損害保険会社は、「グリーンルーフ」と呼ばれる、屋根に植物を植え雨水を貯留する設備を整えた顧客を、保険料割引の対象とする制度を設けている。同社はアプリを活用して、自宅の安全度を検証できるサービスも提供している。水災や火災、防犯等のテーマに関する質問に回答すると、スコアに応じてランクが付与される。こうした情報をもとに割引率が決まり、スコアを改善するためのアドバイスも得られるという。
先述のように、NbSは企業単独ではなく、流域や地域単位などの広範囲での取組みが必要になる。自治体、企業、住民と幅広い接点を持つため、地域の関係者をつなぐ役割も期待される。
その一例として、海外で森林の保全と農業再生を目的としたプロジェクトに損害保険が関与したケースがある。この事例は、「侵略的外来種」「湿地の管理」「人間と野生生物の衝突」などの課題の解決を目指したものだ。この活動を継続していくための施策として、保険制度のパイロットテストを実施している。このケースでは、ある損害保険会社が団体保険を組成した。同社は保全事業者へ向けて、対象区域内での小麦やコメ等の作物への動物からの被害をカバーする、損害賠償責任保険を提供している。このプロジェクトが成果をあげられず、野生生物による農作物被害を発生させてしまった賠償責任に対して、補償するものだ。これにより、失敗した際の金銭的なリスクを軽減でき、自然保護・回復に取組みやすくなる。住民は、政府や自治体などによる補助金よりもはるかに簡単な手続きで、迅速に補償を受けられる。これは、保全活動への社会的受容性を高める効果がある。今後は自治体や政府による保険加入が検討されているそうだが、こうした組織にとっても、補助金制度の維持管理に必要な手間や経費を削減できるメリットがある。さらに、保険料を支払ったとしても、補助金にかかっていた支出が削減されることによって余剰が生まれる可能性もある。


出典:IUCN WCCでの講演と講演資料を基に筆者作成
NbSによる便益は、実際に取組みを行った地点だけでなく広範囲に及ぶことがある。このため、費用を負担しない人も恩恵を受けやすく、投資が進みにくい課題が生じる(フリーライダー問題※5)。また、効果が現れるまでに時間がかかることもある。こうした問題が、各地で大規模なNbSを推進するにあたっての妨げになっている。災害後の補償を中心に発展してきた保険の仕組みに対して、予防的な措置へはインセンティブや商品の設計が進みづらい面もある。さらに、効果は地域や設計によって変わるため、評価方法や基準作りも重要になる。
※5)NbSを活用した水害の減災を目指す取組みによる、保険金支払いの削減を例として考えてみる。湿地帯の再生や雨庭の設置による効果は、事業の実施主体や土地の提供者以外も享受できる。そうした企業や住民に保険を提供している損害保険会社は、NbSの設置や維持管理と、それに伴う業務にかかるコストを負担せずに利益を得られる。また、湿地帯や雨庭で植生や生物が定着し、生物多様性の効果が発現するには一定の期間を要する。施工後、維持管理の段階に何らかの理由で取組みから外れ、保険契約も共に失うことがあれば、その後に契約する損害保険会社が効率的に利益を得る可能性がある。
気候変動による自然災害の頻発化・激甚化や生物多様性の損失は、損害保険事業の持続性に直結する課題であり、「補償」だけでは対応しきれなくなることも考えられる。
様々な企業・機関からの報告を踏まえると、損害保険会社は自社の引受・投資能力、保有データ、顧客チャネルを生かし、予防・低減の側面へ積極的にコミットする戦略が不可欠である。資金供給、公的資金と民間資金を組み合わせたプロジェクト化支援や新たな保険商品の開発、効果の「見える化」への支援、流域単位・地域連携による実装が重要である。
一方、単独の損害保険会社だけでは採算や持続性を確保しにくい。したがって、自社事業と並行して自治体や企業と協働しながら、自然の力を生かした防災・減災を広げていくことが不可欠だ。
【参考文献】
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脱炭素経営チェックシート【2026年 簡易版】無料ダウンロードページ
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全社的リスク管理(ERM)の形骸化を防ぐ10の視点と改善のポイント
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日本経済の変遷と人手不足時代の人財戦略:AI活用と人的資本経営の展望
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トラックの死角 ―車両や歩行者を脅かす「見えない危険」―【InterRisk Asia Report(2026年7月)】
2023年発表のWHOの推計によると、2021年における東南アジア各国の人口10万人当たりの道路交通事故死亡率および推定死者数は下表のとおりです(数値の不正確性によりブルネイを除外、参考として日本の数値も掲載)。東南アジア9カ国の中ではタイの死亡率が最も高くなっており、タイにおける道路交通事故の深刻さが分かります。また、東南アジア各国の死亡率はおおむね高く、各国において交通事故が課題となっていることが示唆されています。
| 順位 (2021年死亡率) | 国名 | 死亡率 (人口10万人当り) | 推定死者数 |
|---|---|---|---|
| 1 | タイ | 25.4 | 3,113 |
| 2 | ミャンマー | 19.3 | 17,229 |
| 3 | カンボジア | 18.8 | 1,217 |
| 4 | ベトナム | 17.7 | 4,680 |
| 5 | ラオス | 16.4 | 31,063 |
| 6 | マレーシア | 13.9 | 11,062 |
| 7 | インドネシア | 11.3 | 3,113 |
| 8 | フィリピン | 9.7 | 17,229 |
| 9 | シンガポール | 1.9 | 110 |
| ― | 日本 | 2.7 | 3,304 |
出所:WHO Global Status Report on Road Safety 2023を参考にMS&ADインターリスク総研作成
Thailand Road Safety Collaborationのデータによると、登録車両1万台あたりのトラック事故率は、2012年から2022年にかけて大きく変動しています。事故率は2018年に48.23件とピークに達しましたが、その後減少し、2022年には30.04件となっています。こうした変動は、道路の安全性が運転者の行動、道路状況、交通量、そして各県ごとの環境の違いといった複数の要因に影響されることを示しています。事故の重大な要因でありながら見落とされがちなのが、トラックの死角です。ここは運転者の視界に入らない場所であり、警告なしに深刻な事故を引き起こします。
例えば、2025年にChachoengsao県で発生した事故では、学校前の赤信号で停車していた複数の車両に10輪トラックが追突し、多くの児童や保護者が負傷しました。車間距離が近いために視界が制限されていたこと、そしてトラック特有の制動距離(ブレーキが効き始めてから止まるまでの距離)の長さが原因で、時間内に減速することができませんでした。また、都市部でも同様に、左折しようとするトラックの左側を追い越そうとしたバイクが衝突する事故が多発しています。これは、バイクがトラックの死角に入り込んでしまうことが原因です。どちらのケースも根本的な原因は同じで、「お互いの姿が見えていない」ということです。
トラックの死角とは、車両の周囲に位置し、フロントガラス越しやミラーを通しても運転者が確認できないエリアのことです。これには前方、左側、右側、そして後方のすべてが含まれます。トラックはその大きさゆえに視界が限定されており、運転者の視線が届かない範囲がいくつも存在します。もし他の車両や歩行者がこれらのエリアに入り込んでしまうと、運転者はその存在に全く気づかない可能性があります。
トラックが関与する事故は、その重量と衝撃力の強さから、通常よりも重大な結果を招くことが少なくありません。多くの場合、死角が要因となって、本来なら軽微な状況が深刻な事故へと一変してしまいます。トラックの死角は、主に以下の4つのエリアで構成されています。

トラックの運転席は高い位置にあるため、車両のすぐ目の前にある対象物を確認することが困難な場合があります。


| リスク | 避けるべき行動 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
前方死角 トラックの直前にいる小型車やバイクが前方死角に入る |
| トラックの運転者がミラー越しにこちらの車全体を確認できるくらいの距離を保つ |
制動距離 トラック特有の大きい制動距離(ブレーキが効き始めてから完全停止するまでの距離)により、運転者が前方車両に気付いた場合でも、停止が間に合わない | トラックの前に入り込んだ直後に急ブレーキをかける | 追い越しを終えて車線に戻る際は、十分なスペースを空けてから戻るようにする |
サイドミラーからドアのあたりにかけたエリアは、運転者の視認性が非常に限られています。トラックの右側の車線を走行する必要がある場合は、このエリアに留まらないようにすることが重要です。


| リスク | 避けるべき行動 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
右方死角 トラックの側面にいる小型車やバイクが右方死角に入る |
|
|
側面衝突 トラックが右側に車線変更をしようとした際、並走している車両に気づかず右側面から衝突する |
トラックの左側は運転席から離れているため、右側より運転者の視認性が非常に限られています。


| リスク | 避けるべき行動 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
左方死角 トラックの側面にいる小型車やバイクが左方死角に入る。左方は死角が最も大きくなることが多い。 |
|
|
側面衝突 トラックが左側に車線変更をしようとした際、並走している車両に気づかず左側面から衝突する。 | ||
左折巻き込み トラックが左折しようとした際、並走しているバイクに気付かず左側面に巻き込む。 |
トラックの運転者からは、真後ろを走る車両がほとんど見えない場合があります。特に荷台に荷物を積んでいるあるいは後部が塞がっている場合、後方の視界が完全に遮られることがあります。後方からの追突事故は発生件数が多く、重大事故につながるケースも多く見られます。


| リスク | 避けるべき行動 | 取るべき行動 |
|---|---|---|
死角 トラックの真後ろの視認性は非常に限られている。 |
|
|
後方衝突 車間距離を詰めすぎると、トラックがブレーキをかけた際に対応できず、後方から衝突する。 | ||
左折巻き込み トラックが左折しようとした際、並走しているバイクに気付かず左側面に巻き込む。 |
プーケットの交差点で、10輪トラックが右折するために赤信号で止まっていたところ、同じく右折しようとした54歳の女性が運転するバイクが近づき、トラックの直前に停止しました。信号が青に変わった瞬間にトラックが発進しバイクと衝突しました。バイク運転者の女性はトラックの左前輪に轢かれ、その後に負傷が原因で亡くなりました。監視カメラの映像により、バイクがトラックのフロント部分の死角に入っていたため、運転者からは全く見えていなかったことが確認されました。大型トラックはその車高の高さと設計上、車両のすぐ近くにいる人や物、特に小さなバイクなどは運転席から完全に隠れてしまいます。バイクがトラックのすぐ近くに停車すると、こうした「死角」による深刻な危険を招くことがあります。
このようなリスクを減少するために、大型トラックの直前で停車することを避け、安全な距離を保ちつつ、トラックの運転者から認識できる位置に停車あるいは走行しましょう。同時に、トラックの運転者は発進前に周囲の状況を注意深く確認し、ミラーや視覚補助装置(カメラなど)を効果的に活用する必要があります。また、信号が変わった瞬間に急発進することを避けてください。
バンコクで発生したもう一つの事故は、6輪トラックがピックアップトラックと警察の検問所に衝突し、3人が負傷したという事故でした。運転者は、「スマートフォンを拾おうとして下を向いていた」と供述しました。また、別の車両が視界を遮っていたことも重なり、前方の検問所に気づくのが遅れたと認めています。運転者の体内からアルコールは検出されませんでしたが、この事故は「不注意によって道路状況への認識が失われる」という、行動面における盲点を示しています。たとえ一瞬のわき見であっても、特に重量があり制動距離が長い大型トラックを運転している場合、危険の察知は困難になります。大型車ゆえに、わずかなミスが重大な事故に直結しやすく、取り返しのつかない事態を招く可能性があります。
このような事故を防ぐために、運転者は運転中のスマホ操作を避けて常に道路状況に集中する必要があります。また、安全な車間距離を保ち、特にリスクの高い場所では危険を予測することが重大な衝突事故を防ぐための不可欠なステップとなります。
トラックが行き交う道路では、全ての道路利用者の意識と協力が欠かせません。トラックはその大きさ、重量、そして視界の狭さゆえに、特有のリスクを伴います。これらを正しく理解し、尊重することが重要です。以下のチェックリストは、乗用車やバイクや自転車の運転者、そして歩行者がトラックの近くで安全に活動するための推奨事項をまとめたものです。
道路における安全は、「あなたがトラックを見ているか」ではなく、「トラックの運転者があなたを見ているか」によって決まります。運転者、歩行者において、トラックの視界の限界を正しく理解し、それに応じて行動を調整することが重大な事故の防止につながります。十分なスペースを空ける、死角を避ける、予測可能な動きを心がけるといった小さな積み重ねが、道路全体の安全性に大きな影響を与えます。
| 観点 | チェック項目 | ||
|---|---|---|---|
| 乗用車 | 取るべき行動 | □ | トラックとの距離を十分に確保する。 |
| □ | 追い越しの際、トラックを完全に追い越してから元の車線に戻る。 | ||
| □ | トラックのウィンカーや動きなどを確認しながら運転する。 | ||
| □ | 車線変更や追い越しの際、ウィンカーで明確な合図を出す。 | ||
| □ | トラックが右左折や車線変更できるよう、十分にスペースを空ける。 | ||
| 避けるべき行動 | □ | 継続的にトラックと並走する。 | |
| □ | 至近距離でトラックの直前へ割り込む。 | ||
| □ | トラックの視界が限られている、あるいは死角エリアに継続的に留まる。 | ||
| □ | 「トラックの運転者からは自分が見えている」という思い込み。 | ||
| バイク | 取るべき行動 | □ | トラックが明確に認識できるエリアを走行する。 |
| □ | トラックとは通常よりも距離を置き、特にタイヤの周辺には近づかないようにする。 | ||
| □ | トラックが右左折の合図を出した場合、速度を落とし、警戒を強める。 | ||
| □ | 交差点や交通渋滞ではさらに警戒する。 | ||
| 避けるべき行動 | □ | トラックの右側からの追い越し。 | |
| □ | トラックの視界が限られている隙間や狭いスペースを走行する。 | ||
| □ | 継続的にトラックと並走する。 | ||
| □ | トラックの死角エリアに停車する、または留まること。特に信号待ちの際は注意が必要。 | ||
| 歩行者 | 取るべき行動 | □ | 安全を確保できない場合、または視界が限られている場合、トラックが完全に通り過ぎていくまで待機する。 |
| □ | 道を渡る際は常に横断歩道を利用する。 | ||
| □ | トラックの前を横断する際は、運転者とアイコンタクトを交わし、こちらの存在に気づいていることを確認してから渡る。 | ||
| □ | 右左折しているトラックに注意。特に交差点ではさらに注意が必要。 | ||
| 避けるべき行動 | □ | 至近距離でトラックの直前を横切る。 | |
| □ | トラックの前、横、またはタイヤの近くで立つ。 | ||
| □ | 「トラックの運転者からは自分が見えている」という思い込み。 | ||
| □ | 「トラックも乗用車と同じ速度で止まれる」という思い込み。 | ||
トラックは、都市部や経済圏を結ぶ主要ルートを中心に、タイの交通システムにおいて重要な役割を担っています。しかし、その車体の大きさや重量、制動距離の長さ、限られた視界といった特性により、制御が難しく、事故が発生した場合にはより深刻な被害につながりやすい傾向があります。主要なリスク要因の一つがトラックの死角であり、これは運転者から見えない車両周辺を指します。そのため、他の道路利用者が運転者に気づかれないまま近くに来てしまう可能性があります。
死角に起因する事故は、車両やバイクがトラックに近づきすぎたり、トラックと並走し続けたり、十分な目視確認を行わないまま車線変更したりする場合に多く発生します。これらのリスクは、交通量が多い状況、道路状態が悪い状況、または運転者が速度や車間距離を誤って判断した場合に、さらに高まります。
道路の安全性を向上させるためには、トラック運転者、乗用車の運転者、バイクの運転者、歩行者など、さまざまな立場からトラックの限界を理解することが重要です。安全のための行動としては、十分な車間距離を保つこと、死角となるエリアを避けること、合図を明確に出すこと、そして周囲が予測しやすい運転を心がけることが挙げられます。
最終的に、道路の安全は交通ルールを守ることだけでなく、他の道路利用者が常に自分を視認しているとは限らない、という点を認識することにも左右されます。より広い車間距離を確保する、より安全なタイミングで車線変更や移動を行うといった行動の小さな調整が、事故の発生率と被害の深刻度の双方を大きく減らすことにつながります。
【Reference】
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