ESGリスクトピックス(2026年11月)
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TNFD開示が前年比で倍増 『ステータスレポート2026』の調査結果
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緑が水災害を防ぐ?グリーンインフラが持つ投資価値とは ―【連載企画】流域治水とグリーンインフラ(Eco DRR)に関するアンケート調査結果を読み解く 第2回
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WBCSDが代替化学原料のサステナビリティ評価ガイダンスを公表、共通指針として注目
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SSBJ基準の有価証券報告書開示、時価総額1兆円以上企業は準備着手100%|日本IR協議会調査
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緑川・白川流域に学ぶ「流域治水」最前線 ―認知度53.1%に達した背景にある官民連携の力―【リサーチレター(2026年10月)】
| 部課名 | 役職 | 氏名 敬称略 |
|---|---|---|
| 国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所 流域治水課 | 課長 | 河東 立 |
| 国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所 流域治水課 | 専門官 | 宮崎 純志 |
| 国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所 流域治水課 | 流域調整係長 | 川原 顕太郎 |
| 国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所 河川管理課 | 課長 | 藤野 隆 |
| 国土交通省 九州地方整備局 熊本河川国道事務所 河川管理課 | 第一係長 | 前田 慎一郎 |
| 熊本県 土木部 河川港湾局 河川課 | 課長補佐(計画調査担当) | 宮田 一起 | 熊本県 土木部 河川港湾局 河川課 計画調査班 | 技師 | 福島 秀斗 |
| 熊本県 知事公室 危機管理防災局 防災推進課 | 主幹(地域防災推進担当) | 甲斐 博旨 |
| 熊本県 農林水産部 農村振興局 農村計画課 調査計画班 | 主幹(調査計画担当) | 池部 亘一郎 |
| 熊本県 農林水産部 農村振興局 農村計画課 | 技師 | 古閑 心太郎 |
| 熊本県 農林水産部 農村振興局 農地整備課 | 参事 | 村田 龍星 |
緑川・白川流域では、菊陽町の「広報誌による防災特集【図表1】」、熊本河川国道事務所主催の「緑川フェスタ【図表2】」、阿蘇市や大津町による「ハザードマップの全戸配布」など、きめ細かな周知活動が重ねられてきた。

熊本河川国道事務所の担当者は、高い認知度の背景として、熊本県が全国的に見ても水災害の発生頻度が高い地域であることを挙げ、「当事者意識の高さが影響しているのではないか」と分析する。加えて、水災害を経験した地域では地区単位の防災協議会が組成される例も多く、こうした地域コミュニティの活動が認知の土壌を形成しているとの見方も示された。例えば、平成28年熊本地震や令和2年7月豪雨における球磨川水災害を目の当たりにして、町内自治会・自主防災クラブ・民生委員児童委員協議会・社会福祉協議会・大江小学校父母と教師の会などが集まって作られた「大江校区防災連絡会」がある。厳しい災害経験を、地域の力に変えてきた熊本の姿勢がうかがえる。他の流域よりも高い認知度を示した結果は、こうした一つひとつの積み重ねが着実に実を結んでいる証左と言える。
また、自然豊かな地域資源を活用し、市境を超えた交流ができる「かわまちづくり」の取組みもあり、住民が川に親しみ、治水に関心を寄せるきっかけとして、「かわまちづくり」は重要な役割を果たしているという。整備された河川空間で防災学習やイベントを行うことで、治水への関心が育まれ、地域の防災意識が高まっていく好循環が、熊本ではすでに生まれ始めている。まさにハード対策とソフト対策の両面で取り組む「流域治水」の理想的な形の一つである。

住民が川に親しみ、治水に関心を寄せるきっかけの好例の1つとして、熊本河川国道事務所主催の「緑川フェスタ」がある。建設業関連の民間事業者も多数参加し、川遊びや建設機械の展示など、行政単独では出しにくい「親しみやすさ」を演出している。令和7年度の来場者数は約700人であった。日常に防災を溶け込ませるイベントに民間事業者が参加することは、地域への情報発信力にもつながっており、着実に認知拡大を後押ししている。
アンケート調査では依然として46.9%が「言葉を知らない」と回答しているが、これは裏を返せば、まだまだ伸びしろがあるということでもある。担当者らは「事実として受け止め、学校への出前授業を通じて、家庭内に広がるなどの地道な周知を続けることが重要」と口をそろえる。「流域治水」という言葉自体が令和2年に生まれた比較的新しい概念であり、平成29年改訂の学習指導要領には反映されていないことも一因に挙げられ、次の指導要領改訂(令和8年)で「流域治水」という言葉が盛り込まれ、次世代教育が進むことも期待されるなど、広い視野で可能性を語られた。
緑川・白川流域では、小学校での「VR・ARを活用した体験型防災訓練」や阿蘇ジオパーク推進協議会※1と連携した情報発信など、住民の関心を引く工夫が重ねられている。毎年、日吉東小学校の4年生を対象に継続的な防災学習を実施しており、参加した子どもたちのアンケートでは理解度の向上が確認されているという。また、大江小学校では、実際に水災害を経験した地域住民が講師を務めるなど、地区防災協議会と一体となった取組みも進んでおり、次世代への着実なバトンリレーが行われている。
国土交通省が創設した「流域治水オフィシャルサポーター制度」に登録する民間事業者との連携も着実に広がりつつあり、「5年前にはなかった動きが、ここ数年で急速に広がってきている」との実感が語られた。行政と民間事業者がタッグを組む土壌が、熊本にはすでに育っている。
一方、「流域治水に協力・参加したいものはない」とする層が43.7%に上る現状について、「治水は行政が担うものという受け止めが根強く、住民が自分ごととして捉えにくいことが背景にあるのではないか」と分析しつつも、「まずは知ってもらうことが第一歩であり、認知度の高さは、その土台がすでに整っていることの表れ」との前向きな受け止めも示した。自治体ごとの浸水リスクの違いによって住民の関心度に温度差が生じることは「当然のこと」とした上で、各自治体のまちづくりの方向性に寄り添いながら、流域治水の視点を織り込んでいく取組みを着実に進めると語られた。

※1)阿蘇地域の自然環境や草原景観、湧水などの地域資源を保全・活用し、その魅力を伝えることで、持続的な地域づくりを進めるための協議会。
-*-*-*-*-白川水系では、上下流の交流促進や河川の利活用による地域活性化、景観向上を通じた都市空間づくりが進み、緑川水系でも整備が完了した御船町の御船地区のほか、宇土市の走潟地区、甲佐町の甲佐地区においても「かわまちづくり」事業が展開されている。
担当者は、「かわまちづくり」は地域や自治体からの要望を起点に立ち上がる事業であるとし、整備後の利活用状況や住民満足度を通じて、その多面的な価値を評価していると説明。継続的な維持管理を地域主体が担っていく体制づくりが今後の課題であるとしつつ、「賑わいの創出を通じて維持管理へのメリットを実感してもらうことが事業継続の鍵になる」との考えを示した。
甲佐地区では、野球場やサッカーグラウンドを整備した河川敷の利用人数が年々増加している。さらに、家族連れの利用空間を求める声が上がったことから、下流に幅広い年齢層の住民が憩う場を整備する計画が進んでいる。
また、都市・地域再生等利用区域の指定を受けた白川の一部区間や阿蘇立野ダム周辺では、河川区域内での営利活動も可能となっており、民間事業者が参画しやすい環境整備も進んでいる。
緑川水系における治水事業の歴史は古く、加藤清正が天正16年(1588年)に本格的に始めたとされている。なかでも、轡塘(くつわども)により、河川の合流点の堤防間(高水敷)を広くとり、水勢を弱めて洪水をゆるやかに流すための工夫が凝らされている。こうした歴史的な治水施設の保全が市町村によって進められてきた。



また、熊本河川国道事務所とNPO法人「天明水の会」が連携して、緑川下流域にある天明中学校での講義が行われるなど、地域コミュニティと連携した自然資本の保全活動も進む。同講義では、上流にある森林整備活動も行われ、森林が持つ水源涵養機能の維持によって、流域全体の水災害リスクが低減されることを学習するきっかけにもなっている。
この活動を支えるのが「河川協力団体制度」だ。認定団体が河川内の除草や維持管理を担う仕組みが機能している一方、担当者からは「担い手の高齢化と人材不足」が課題として挙げられた。アンケート結果でも、緑川・白川流域の30.8%が「地域コミュニティの人的・財政的な余力の充実」を必要と回答しており、担当者は、民間事業者が防災学習の出前授業などに関わることへの期待を語った。
熊本市や甲佐町でのワンコイン浸水センサの設置など、DXを活用した情報発信の取組みが進んでいる。ワンコイン浸水センサとは、低コストかつ小型の装置で、浸水状況をリアルタイムに把握できるセンサである。「浸水しやすい場所の把握や通行止めの判断に役立っている」「水防団と情報を共有し、出動判断の参考にしている」といった具体的な効果が語られた。
特筆すべきは、熊本市がこうした浸水センサの情報を、水防団など活動主体との共有にとどめず、市民向けにもホームページで公表している点だ。行政内部での活用にとどまりがちなリアルタイム情報を住民へ届けている。
住民アンケートでは「リアルタイムの情報共有」を求める声が緑川・白川流域で39.1%に上るが、担当者は「発信はしても高齢者に届きにくい」という課題を指摘する。高齢者にとっては、依然として防災無線や紙媒体、水防団による直接的な声かけが重要な役割を果たしているという。
また、リアルタイム情報を発信するサイトが乱立する現状については、「情報が増えることは歓迎する一方、どの情報を見ればよいか住民が迷わないように整理することが必要」との指摘があった。民間事業者によるツール開発では、「独自の付加価値」をわかりやすく示すことが、今後の連携拡大の鍵になりそうだ。
熊本県では「田んぼダム※2」の普及拡大に取り組んでいるが、貯水機能を発揮するには田んぼの畦畔(けいはん)・あぜの補強が必要となり、そのコスト負担が農家の取組み拡大を阻む要因になっているという。

行政側の推進体制にも課題がある。「田んぼダム」を担当する部署では、通常業務に加えて農家一戸一戸への働きかけを行う余力の確保が難しいと担当者は語る。「雨庭※3」については、さらに根本的な課題として、県内に所管部署自体が存在しないことが挙げられた。「雨庭」はいまだ事業として不透明な部分が多く、予算要求から予算化、人員配置に至る一連の流れがまだ整っていないため、マンパワーも予算も割り当てにくいという構造的な壁があるという。

効果を可視化することにも、実は難しさが伴う。「田んぼダム」や「雨庭」の効果は、降雨の強さや時期、立地条件によって大きく変動するため、担当者は「定量的な数値を示し、それが独り歩きすることには慎重であるべき」との考えを示した。
特に「田んぼダム」は、農家が田に水を張る田植えから夏場(5~8月)にかけてしか効果を期待できず、台風が多い9月・10月には機能しないという季節的な制約がある。「雨庭」についても同様で、効果が発現するケースは場所に応じて異なると語る。そのため、数値だけが強調されることに危険もはらむ。効果の発信には、正確さと丁寧な説明の両立が求められている。
ただ、県担当者からは「予算制度については国土交通省がしっかり作ってくれている。あとは我々側の体制の問題」という声もあり、予算面での支援の枠組み自体はすでに用意されていることへの安心感がうかがえた。
こうした行政の体制面の課題を補う存在として期待が高まっているのが、2026年4月に発足した一般社団法人「熊本ウォーターポジティブ・デザインセンター」だ。MS&AD、サントリー、肥後銀行、熊本県立大学、熊本大学といった地域の民間事業者・金融機関・学術機関が参画するこのプラットフォームは、会員からの会費をもとに「雨庭」の導入や整備の支援を担う。
県担当者からは「行政だけでは補いきれないマンパワーや資金面を補完してくれる存在として、非常にありがたい」と歓迎の声が上がっており、官民が手を取り合いながら「雨庭」普及にむけた課題を乗り越えていく機運が、熊本ではすでに芽生え始めている。


※2)水田の水門や堰板に放水量を調節する仕組みを設け、雨水を一時的に通常量よりも貯留する取組み
※3)雨水を一時的に貯留し、ゆっくり地中へ浸透させる構造を持つ植栽空間
「流域治水」という言葉が生まれてからまだ数年という中で、緑川・白川流域は他の調査対象流域(多摩川、鶴見川、天竜川下流・菊川、馬込川)の中で最も高い認知度を獲得している。今回のヒアリングを通じて、その背景には、行政による地道な広報活動、「緑川フェスタ」に象徴される官民一体のイベント運営、実体験を通じた次世代への教育、そして民間事業者を含む多様な主体との連携という、地に足のついた積み重ねがあることが浮き彫りとなった。
ただし、グリーンインフラの普及にむけた体制・予算の制約や、高齢者へのリアルタイム情報の到達といった課題も存在する。こうした課題に対しても、国による制度の整備や、産学連携プラットフォームの発足を足掛かりに、解決に向けた動きは着実に進んでいる。
今回のヒアリングでは、行政と民間事業者で協働できる可能性が多く語られた。MS&ADグループにおいても、「流域治水」の普及、「グリーンインフラの実践」および「地域のレジリエンス向上」に引き続き取り組んでいく。
この度の令和8年熊本地震によって被災された皆様に、心からお見舞い申し上げます。
また、災害対応のなか、ヒアリングをお受けいただいた行政の皆様にも感謝申し上げます。

本誌は、2026年9月2日に実施した自治体等へのヒアリングでの発言内容と公開情報に基づいて作成しております。
また、本誌は、読者の方々にお役立ていただくことを目的としたものであり、事案そのものに対する批評その他を意図しているものではありません。
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AI普及下におけるサステナビリティ実践への示唆~Trellis Impact 26での議論を踏まえて~【サステナブル経営レポート(2026年9月)】
2026年6月、米国・サンフランシスコにおいて、サステナビリティ領域の国際イベント「Trellis Impact 26※1(以降、本イベント)」が開催された。本イベントは、企業のサステナビリティに関する情報メディアであるTrellis Group※2が主催しており、サステナブルなビジネスを実現するイノベーションを生むためのアイデアを共有する場として企画された。今年は「AI×Sustainability」「Close the Loop」「Draw Down Carbon」「Power the Future」をテーマとして掲げ、個社が実務レベルで資源循環、カーボンオフセット、省エネルギーに取り組むことに貢献できる技術・ツールやその実装事例が紹介され、実装の意義や課題感についての意見交換が行われた。
登壇者・参加者としては、Amazon、Google、Meta、Microsoftなど、米国企業の参加が中心であったが、欧州・豪州・日本からも参加者が集まっていた。参加者の業種としては、SaaSサービスを提供する企業、リサイクル技術を有する企業、研究者が多い印象を受けた。
特に印象的であったのは、サステナビリティ課題を個別に扱うのではなく、AI、エネルギー、水、資源、地域コミュニティ、自然資本といった論点を相互に関連する経営課題としてとらえる姿勢である。例えば、AIの普及は省力化・高度化といった便益をもたらす一方で、データセンターの電力需要や水使用量を押し上げる。資源循環の推進は、廃棄物削減に資する一方で、品質確保や回収インフラ、トレーサビリティの整備が不可欠となる。こうした「便益と負荷の両面」を踏まえた議論が多く見られた。
日本企業においても、気候変動、自然資本、資源循環に関する情報開示の要請は高まり続けている。しかし、開示対応が先行し、実際に自社の事業構造をどのように変えるか、どの技術をどのタイミングで取り込むかという検討は、必ずしも十分に進んでいないケースも見受けられる。
そこで本稿では、Trellis Impact 26で議論された内容を基に、特に日本企業のサステナビリティ担当者にとって示唆の大きい論点として、①データセンター建設・運用とサステナビリティ、②資源循環を加速する技術と実装に向けた課題、③二酸化炭素除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)と自然関連ソリューション、④スタートアップと投資動向の点から整理する。



※1)Trellis Impact 26 webページ https://trellis.net/events/trellis-impact/
※2)Trellis Group webページ https://trellis.net/
本イベントで最も象徴的であった論点の一つが、AI普及を背景に増加しているデータセンターの建設・運用におけるサステナビリティ実現のあり方である。AIの利活用拡大は、業務効率化や新たなサービス創出の観点から強い期待を集めているが、その裏側では大量の演算処理を支えるデータセンターの使用電力量・水使用量・土地占有面積やそれらを通じた地域コミュニティとのあつれきが問題視されている。
本イベント1日目の基調講演では、「持続可能なデータセンターのあり方」としてデータセンター建設・運用により生じるサステナビリティ課題について、異なる立場の登壇者が順に登場し、①全体的な社会課題としての視点、②地域コミュニティの視点、③事業者の視点、④エネルギー供給者の視点、⑤投資家の視点、というそれぞれの視点で話題提供・議論が行われた。この基調講演では、いわゆる環境負荷として設備効率や省エネを語っているのではなく、社会的受容性を含む複合課題であることを強く意識するきっかけとなった。
まず、全体的な社会課題として指摘されていたのは、データセンターの運用が大量の電力と水を消費する点である。特に電力については、サーバーの稼働に加えて冷却のためにも大きなエネルギーが必要となる。AI利用の拡大により、この需要が一段と増すことが見込まれており、大規模なデータセンターでは、地域の電力インフラ容量を超過する恐れも指摘されていた。特に、再生可能エネルギーの導入が進んでいない地域では、AIの拡大が結果として化石燃料由来電力への依存を高める可能性もある。
次に、地域コミュニティの視点では、データセンター建設が地域に何をもたらすのかが問われていた。本イベントでは、米国内の広大な土地や農地がデータセンター用地に転換される事例が紹介され、地域の雇用や税収、インフラ整備といった便益がある一方で、水使用、景観変化、土地利用転換、既存産業との競合といった懸念も共有された。
データセンター事業者の視点からは、水循環への配慮やゼロカーボン電力の調達、建設時の低炭素資材活用などが紹介された。同社の取り組みからは、データセンター運用における環境負荷低減はもとより、建設段階も含めたライフサイクル全体で環境負荷を抑えることに視点が広がりつつあることを示している。特に、低炭素コンクリートやグリーンスチールといった建設資材への言及は、データセンター問題が建設・不動産・素材産業にも波及することを示唆している。
また、エネルギー供給側からは、地熱発電など新たな電源の可能性が紹介されていた。AIの拡大は、単に既存電源を取り合うのではなく、新たなクリーン電源投資を促す契機にもなりうる。ただし、その実現には長期契約や系統接続、地域合意形成など多くの条件整備が必要であると説明された。
さらに投資家の視点では、データセンター事業における水・エネルギー・地域コミュニティとの関係を、事業者と投資家の間での重要なエンゲージメントテーマとしてとらえていることが示された。今後は、AI関連企業やデータセンター事業者に対し、気候関連開示だけでなく、水使用や地域影響、移行計画の説明を求める動きが強まる可能性がある。
今後、AI活用はほぼすべての産業に広がると考えられる。その際に重要なのは、「AIを使うか否か」ではなく、「どのような条件で、どのようなインフラの上でAIを使うか」を経営上の論点としてとらえることである。


Trellis Impact 26での基調講演の内容を基に、MS&ADインターリスク総研が作成
資源循環に関する議論も、本イベントの大きな柱であった。特に電子機器、プラスチック、繊維をめぐっては、リサイクルや再利用を単独の施策としてとらえるのではなく、製品設計、回収、再資源化、再販市場形成まで含めた仕組み全体の再設計が必要であるという認識が共有されていた。
電子製品のリサイクルに関するセッションでは、第三者認証であるEPEAT※3や、Circular Electronics Partnership※4によるサーキュラー電子製品設計ガイドが紹介された。電子機器のリサイクル推進におけるポイントとして、製品の性能や安全性を損なわずに、解体しやすさ、部品交換のしやすさ、再生材利用の可能性などをあらかじめ設計段階から織り込む必要があるという点が協調されていた。
また、循環性向上の取り組みは、バリューチェーンのどの段階で何を行うかを分解して考える必要があるという指摘もあった。たとえば回収率向上は小売や回収拠点での周知やインセンティブ付与等の施策に関係し、廃棄物削減は製造工程や組立工程の改善に関係する。すなわち、「資源循環」は一つの部署だけで完結するテーマではなく、設計、調達、生産、物流、販売、回収の横断的な連携が前提となる。
繊維に関する議論においても、製品品質や耐久性と再生材活用の両立が課題の一つとして挙げられていた。加えて、中古繊維市場や回収インフラが未成熟であることが課題として挙げられていた。
プラスチック分野では、使用済みプラスチックを分解して生物が処理可能なレベルまで変換する技術も紹介された。こうした技術は有望である一方、導入コスト、処理能力、対象樹脂の範囲、副生成物管理など、実装上の検討事項も多い。したがって、技術の存在のみで判断するのではなく、自社の廃棄物の特性や回収可能性、既存設備との適合性を踏まえた評価が必要となる。
さらに印象的であったのは、廃棄物を「見えないもの」から「追跡可能な資源」へ変える発想である。2日目の基調講演では、使用済み資源の残存価値を分析し、廃棄前に回収・再利用を促す技術が紹介された。地政学リスクや資源価格変動が高まる中、二次資源の確保は調達安定化の観点でも重要性が増している。回収・再利用を行う素地が整っていない企業にとっては、まずは回収・再利用が廃棄よりも経済的にメリットがあるのかを可視化する取り組みから始めることは有用ではないだろうか。
資源循環は、目標設定だけでは進まない。実際に素材を回収し、品質を担保し、再投入する市場とオペレーションを作り込む必要がある。本イベントでの議論は、企業に対し「循環経済への移行は情報開示ではなく事業設計の問題である」と強く示していたといえる。
※3)EPEAT:Global Electronics Councilが運用するサステナブルな電子製品の認証制度 https://www.epeat.net/about-epeat
※4)パートナーとしてWBCSDやGECなどが参画しており、メンバーとしてはGoogle,Amazon,HP,Lenovoなどの企業が参画している国際的な団体
脱炭素に関する議論の中では、排出削減に加え、二酸化炭素除去(CDR:Carbon Dioxide Removal)への関心の高まりが明確に見られた。CDRとは、大気中の二酸化炭素を除去し、長期間にわたって貯留する取り組みを指す※5。CDRを可能にする技術を「ネガティブエミッション技術(NETs:Negative Emission Technologies)」と呼ぶが、この技術は大きく分けて二つに分類される。一つが、森林等を活用した自然ベースの手法である。もう一つが、DAC(Direct Air Capture:大気中の CO2を直接回収する技術)などの工学的手法がある※5。企業は、自社のカーボンネガティブの目標達成の手段としてCDRプロジェクトにより創出されたカーボンクレジットを購入し、ポートフォリオを構築する。例えば、Microsoft社は、2030年カーボンネガティブ目標※6を掲げて、10種類計60件のCDRプロジェクトからカーボンクレジットを調達しており、2026年時点で合計7,800万tのカーボンクレジットを購入した※7。
本イベントでは、どのように適切なCDRポートフォリオを構築するかが議論されていた。単一のプロジェクト実施者からカーボンクレジットを調達することは脆弱性が高いとされており、誰から、どのような条件で、どの期間にわたり調達するかというポートフォリオ設計の考え方や実践例が共有された。
CDRポートフォリオに関する議論の中で、特に多く言及されていたのが「オフテイク契約」である。オフテイク契約とは、将来生み出されうるカーボン除去量をあらかじめ買い取る契約のことであり、供給者側にとっては事業化の資金的裏付けとなり、需要者側にとっては将来の供給確保につながる。CDRの分野では、技術やプロジェクトがまだ立ち上がり段階にあるものも多く、長期契約を通じて市場形成を支える発想が重視されていた。
また、CDRポートフォリオに「自然を活用した解決策(NbS:Nature-based Solutions)」を含むべきとの議論も目立っていた。プロジェクト創出を通じたコベネフィットやプロジェクトのストーリー性を重視して関心を寄せる意見が挙がっていた。
他方で、CDRポートフォリオを構築することは、実装上の課題も多い。第一に、高品質なカーボンクレジットの流通量がまだ限られている点である。クレジット購入者側がスタートアップ企業に積極的に投資や技術的支援を行うなど、CDRの取り組みを推進していく働きかけが必要とされている。第二に、物理的距離や地域性の問題である。自社拠点から遠く離れた地域のプロジェクトに依存することが、自社のリスク管理やステークホルダー説明の観点で適切かどうかは慎重な検討が必要である。第三に、コベネフィットの評価である。単なる炭素量だけでなく、生物多様性、水資源、地域雇用等への影響をどう測るかが重要となる。
こうした議論からは、CDR由来のカーボンクレジットを購入することをポートフォリオ構築ととらえ、地域との関係構築や長期戦略として扱っていることがわかる。日本企業にとっても、「どのような戦略に基づき、どのような品質管理と関係構築の下でCDRを活用しているか」が問われるようになるだろう。
※5)経済産業省,ネガティブエミッション市場創出に向けた検討会とりまとめ https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/negative_emission/pdf/20230628_1.pdf
※6)Microsoft Carbon dioxide removal https://www.microsoft.com/en-us/corporate-responsibility/sustainability/carbon-removal-program?msockid=27a037cb10cd6e122857206811866f21
※7)Updating our Carbon Removal Portfolio https://cdn-dynmedia-1.microsoft.com/is/content/microsoftcorp/microsoft/msc/documents/presentations/CSR/Updating-our-Carbon-Removal-Portfolio.pdf
本イベントでは、スタートアップピッチや投資家によるセッションも開催され、気候テックや資源循環テック市場の動向が共有された。ここで見えてきたのは、サステナビリティ課題の解決には技術革新が不可欠である一方、優れた技術があるだけでは市場実装に至らないという現実である。
スタートアップ企業の発表では、低コスト風力発電技術、使用済みプラスチックの分解技術、湿度と冷気を分離する省エネ空調技術などが紹介された。いずれも、既存技術の制約を乗り越える可能性を持つものとして注目されたが、同時に、量産化、設置先の確保、コスト競争力、規制適合、資金調達といった課題を乗り越える必要がある。
投資家の議論で印象的であったのは、事業拡大の各段階に応じた資金供給の設計である。特に、「最初のもの(FOAK:First of a Kind)」から事業を拡大していく過程では、研究開発資金、実証資金、工場建設資金、量産資金など、必要な資金の性格が大きく異なる。そのため、単一の投資ではなく、段階ごとに異なるリスク許容度を持つ資金を組み合わせる必要があるという説明がなされていた。
| 企業名 | 拠点 | 概要 |
|---|---|---|
| AIRLOOM※8 | 米国 ワイオミング州 | 低コストな発電技術を有する会社で、大規模な土地改変を必要とせず、風が弱い場所でも設置が可能な風力発電技術を開発している。2027年商用デモ化を目指しており、2030年にはSOM※9:260億ドルが期待できるとしている。 |
| SmartPlastic※10 | 米国 イリノイ州、 テネシー州 | ECLIPSEというプラスチックを生物が分解可能なレベルの物質に処理する技術を開発しているスタートアップ企業である。同社の技術は、使用済みのプラスチック製品について、UV、熱、蒸気などを用いてポリマーの結合を分解し、最終的には微生物によって水・CO2・有機物に分解するものである。 |
| Helix Earth※11 | 米国 テキサス州 | 宇宙船の技術を応用した空調技術を開発している。既存のエアコンは外気の湿度も室内に取り込んでしまうことで除湿のためにもエネルギーを使用するが、同社の技術では、湿度を空調機にて切り分けたうえで冷気のみが室内に取り込まれる仕組みとなっている。そのため、コンプレッサーが長持ちするようになり、光熱費の削減にもつながる技術としている。現状のマーケットサイズでSOM:11億ドルに及ぶとしており、将来的にもさらなる事業規模拡大が見込まれている。 |
| BUCKSTOP※12 | 米国 ワシントン州 | 使用済み資源の残存価値分析を行う技術を開発している。現代社会において、資源の産出国が海外に依存していると、輸出規制などによって資源を調達できなくなるリスクが見込まれる。そのため、電子部品に含まれる金属資源を再利用することがリスク回避の観点で需要が高まると考えることができる。こうした背景を踏まえ、同社は、廃棄される前に使用済み資源の残存価値を評価し、回収・再利用することを促すシステムを開発した。 |
特に、サステナビリティの実現においてテックによる革新が求められる領域としては、製品品質との両立への期待が挙げられた。環境負荷の低い素材や再生材を使いたくても、耐久性、安全性、顧客要求を満たせなければ採用は進まない。したがって、技術導入はサステナビリティ部門だけでなく、研究開発、品質保証、営業等を巻き込む必要があるとの指摘があった。商品として消費者が魅力的に感じることができ、かつ環境負荷も低減できる技術開発が進むことへ期待が寄せられている。
テックへの期待が寄せられる一方で、改めて「人と人」の関係を重視する声も多く挙げられた。CDRプロジェクトや新規インフラ整備は、結局のところ技術的合理性だけでは前に進まず、地域への便益や納得感をどう生むかが重要である。中古市場も「人と人」の関係で市場が成立しており、リサイクルの推進においては既存の人間関係を読み解きながら突破口を探る必要がある。
こうした議論からは、スタートアップとの協業を通じて技術開発を着実に進める重要性とともに、自社としてステークホルダーとのコミュニケーションや製品品質の向上との両立といった観点でも取り組みを推進する両輪が必要との示唆が得られる。
※8)AIRLLOM社 webページ https://www.airloom.energy/
※9)TAM:ある事業が獲得できる可能性のある全体の市場規模、SAM:ある事業が獲得しうる最大の市場規模、SOM:ある事業が実際にアプローチできる顧客の市場規模
※10)Smart Plastic社 webページ https://changetheplastic.com/
※11)Herix Earth社 webページ https://helixearth.com/
※12)BUCKSTOP社 webページ https://www.buckstop.com/about-buckstop
本稿では、Trellis Impact 26の議論を①データセンター建設・運用とサステナビリティ、②資源循環を加速する技術・ツールと実装に向けた課題、③二酸化炭素除去(CDR)と自然関連ソリューション、④スタートアップと投資動向の観点で整理した。最後に、全体を通じて日本企業のサステナビリティ経営に対する示唆を三つに整理した。
第一に、サステナビリティを「開示」から「事業変革」へと移す必要があることである。現在、日本企業の多くでは、TCFD、TNFD、CDP等への対応が進んでいる。一方で、その対応が情報整理や文章作成に偏り、自社の事業構造や投資判断、製品設計、サプライチェーン運営の変革にまで十分につながっていない場合もある。本イベントでは、個別技術・ツールの共有の場でありながらもいかに事業構造に変化を起こすかが中心テーマとなっていた。既存のビジネスモデルでは本イベントで共有されていた技術も十分に機能しないと考えられる。今後は、開示項目に何を書くかだけでなく、自社の事業をどう変えるかを起点に議論することが重要になる。
第二に、AI活用による技術の発展と、その裏で起きている環境負荷・地域社会への影響を「統合」してとらえる必要があることである。AI活用はサステナビリティ推進においても、データ蓄積や効率化の観点で重要だ。しかし、その裏側でデータセンターの建設・運用は、電力使用、水使用、建設資材使用、土地利用などを通じて環境・地域社会への負荷が発生する。サステナビリティ推進のためと思って取り組んでいたことが、トータルで見ると環境・地域社会へ負荷を与えているという事態が起こるかもしれない。CDRの取り組みも、環境・社会へのコベネフィットを創出するようなストーリー性のあるプロジェクトへの投資に関心が寄せられている。資源循環においては、製品品質と再生材の活用の両立がハードルとして挙げられている。事業・環境・社会のトレードオフを回避し、シナジーを創出できるよう統合的な視点でのマネジメントが強く求められる。
第三に、「技術」に対する目利き力と、実装まで「伴走」する姿勢が必要であることである。サステナビリティ経営を実現するためには、リサイクル技術、設備効率、センサー、シミュレーション等様々な領域において新しい技術が社会に浸透していくことが欠かせないだろう。新技術は、自社内から誕生することももちろん考えられるが、スタートアップ企業が有する技術が大きなイノベーションを生むかもしれない。一方で、製造技術に関する領域などでは、ラボでの実証から実工場での実証の段階で大きな資金ギャップが生じる。根本のビジネスモデルを変革しうる技術を自社で定義し、関連技術を有するスタートアップ企業を発掘し実装まで伴走することは、企業にとって事業成長とサステナビリティの両立において有用だろう。
日本企業においては、「課題を認識しているが、どこから手をつければよいか分からない」という状況が少なくない。その場合、いきなり全社最適を目指すのではなく、まずは自社にとって影響の大きい論点から着手することが現実的である。たとえば、AI利用の拡大が進む企業であればデジタル基盤の環境負荷を確認する、素材利用の多い企業であれば再資源化可能性や回収スキームを検討する、自然依存度の高い企業であれば水や土地利用の観点からリスクを再評価する、といった進め方が考えられる。
今後、日本企業が国際的な競争力を維持しつつサステナビリティ課題に対応していくためには、情報開示の精緻化に加えて、事業・技術・地域との関係を見直す戦略的・実践的な取り組みが不可欠である。情報開示や規制対応の枠に縛られるサステナビリティ対応から、新技術を発掘し、より魅力的なサービス・商品を提供するための経営戦略としてサステナビリティが位置付けられることを期待したい。
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ESGリスクトピックス(2026年9月)
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コーポレートガバナンス・コードが5年ぶりに改訂、成長投資促す変更のポイント
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【終了】TNFDを踏まえた「移行計画」策定の進め方 ―全社的トランジションを見据えた段階的な実務対応―
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【お客さま事例】村田製作所さま『流域リスクレンズ』を活用した水リスク評価の高度化とTNFD対応への第一歩
ーー村田製作所さまの事業概要と環境への取り組みについて教えていただけますでしょうか。
鵜近)当社は、電子部品の研究、開発、製造、販売を行う総合電子部品メーカーで、世界各地に生産拠点があります。これまでも事業を通して社会の発展や技術革新への貢献を目指してきましたが、近年は特に、水資源や生物多様性を含む自然資本への対応を重要な経営課題と位置付けています。


村田製作所サステナビリティ推進部の
鵜近洋次郎氏(右)と五十嵐郁貴氏(左)。
こうしたなか、私たち、サステナビリティ推進部では水資源や生物多様性に関するリスク評価、情報開示、社内施策の推進を担当しています。
ーー水資源や生物多様性を含む自然資本への対応が重要な経営課題となっている背景にはどのようなことがあるのですか。
五十嵐)実は当社では創業者の村田昭の時代から環境への取り組みを続けています。当社の社是の中には「独自の製品を供給して文化の発展に貢献し」「会社の発展と協力者の共栄をはかりこれをよろこび感謝する人びととともに運営する」という記載があります。


画像提供:村田製作所
当たり前の話ではありますが、事業を続けていくためには当社を取り囲むコミュニティや環境があることが大前提です。こうしたコミュニティや環境と「共栄」し、一緒に「よろこび」をわかちあえるような存在でありたいということが、当社の理念です。
こうした基本理念に基づき、当社の事業活動は自然の恵みに支えられているという認識のもと、限りある地球の資源を大切に使い、社会全体の環境負荷の低減に貢献できるよう取り組みを続けています。
その中でも近年は、世界人口の増加や気候変動の影響を受けて、水資源の重要性や水リスクに対応する必要性が高まっていると認識していて、水リスクへの対応も含めた環境活動を推進しています。
ーーそうした活動の中で、今回、MS&ADインターリスク総研の水リスク分析サービス『流域リスクレンズ』の提供前の検証(POC)にご協力いただきました。背景にはどのような課題意識があったのでしょうか。
鵜近)先ほどお伝えしたように、事業活動において環境への負荷を低減できるように取り組んできているのですが、近年は環境・社会・ガバナンスのESGを経営に組み込み、持続可能な企業価値向上を目指すことがこれまで以上に求められるようになっています。


鵜近氏は、長く蓄電池製品の企画・マーケティングを務め、
2023年よりサステナビリティ推進部で環境企画チームリーダーを担う。
中でも、自然資本や生物多様性に関するリスクや機会を把握し、それを経営に反映して開示するTNFD※1への対応が必要になっています。
※1 TNFD(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures):自然関連財務情報開示タスクフォースは、企業や金融機関が自然関連のリスク・機会について管理および情報開示をするためのフレームワークの構築を進める国際的な枠組み。
そのTNFD対応の本質は、当社を取り巻く自然環境を経営課題としてとらえ直しリスクと機会を整理して、事業戦略や資本配分に落とし込めるかだと理解しています。
これを踏まえると、これまで「当社の事業活動において欠かすことのできない水資源」と考えて取り組んできた排水管理や水使用量の削減といった活動は、流域にどのような影響を与えていて、そのことが将来の事業リスクや成長機会にどうつながるのかを分析し直す必要がありました。
五十嵐)TNFDでは、事業判断につなげられるようにどこに重要な自然関連のリスクと機会があるのかを特定するため、国内に50か所ほどある拠点の水リスクと売上への影響などを踏まえて優先順位を付ける必要がありました。
ただ、従来の環境活動では各拠点がある流域ごとの水リスクまでを把握していませんでしたので、優先順位付けするためにも科学的な根拠が必要でした。
このため、既存の水リスク評価ツールも活用してみましたが、広域的な水リスクを把握することはできても、拠点ごとの水リスクを事業判断に活用できるレベルで評価することは難しいという課題がありました。例えば、ある拠点で将来的に水が枯渇するリスクがあるのかどうかといった点までは把握できませんでした。


五十嵐氏は2022年に村田製作所に入社し、
安全衛生・環境マネジメントシステムを推進し、
2024年から鵜近氏とともにTNFD対応に取り組んでいる。
各自治体にある河川流量、ダム貯水量、水質などのデータを調べればわかるのかもしれないと考えましたが、データを集める時間とコスト、それにそのデータからリスクの有無を読み解く専門的な知識が必要となるため、どうしたらよいのか正直困っていました。
そんなときにお声がけいただいたのが『流域リスクレンズ』のPOCでした。
ーー『流域リスクレンズ』のPOCでは、どのような分析をしたのでしょうか。
五十嵐)ステップ1とステップ2の2段階で分析していただきました。
まずステップ1では、当社の方で選んだ18拠点で水リスクのスクリーニングを行ってもらいました。取水と排水の両面から水リスクを数値化したことで、拠点ごとのリスクレベルを“見える化”することができました。


※村田製作所の分析結果ではありません。
これによって世界地図のレベルでは把握できなかった拠点間のリスクの差が明確になり、どの拠点を重点地域として扱うべきかの判断材料が得られたと考えています。TNFDのLEAPアプローチ※2における「重点地域の特定」にも活用できる成果だと考えています。
※2 LEAPアプローチ:企業が自然との接点を発見し(Locate)、依存関係と影響を診断し(Evaluate)、リスクと機会を評価し(Assess)、開示への対応を準備する(Prepare)ための実践的ガイダンス。
次のステップ2で、18拠点の中から3拠点を選んで、より詳細な流域の解析を行ってもらいました。水源や排水先から市街地を含む流域の水の流れを解析して、当社がどの流域、涵養域の水を取水しているのか、排水が流域のどこに影響するのかが地図上で可視化されて非常にわかりやすかったです。


※村田製作所の分析結果ではありません。
次のような点が、今回解析をして初めて得られた知見でした。
解析結果を見たときに、科学的根拠に基づいて説明できる状態に一歩近づけたと感じました。
ーー『流域リスクレンズ』で拠点の水リスクを分析してみて、今後のアクションとしてどのようなことができそうだと考えていますか。
鵜近)これまでの環境活動は「自分たちで排水管理をする、取水利用を削減する」といった形で、自社内の取り組みにとどまっていました。それが、今回の分析によって、ある拠点の取水は上流のダムと関係があり、そのダムに渇水リスクがある場合には「ダムの管理者とのより密接なコミュニケーションが必要」という形で、外部の関係者との連携が必要となることがわかりました。
排水でも、最終的にはある湖に流れ込むことが見えれば、拠点の関係者とのコミュニケーションでも「湖周辺の地域社会や生態系にも影響するから、排水管理を徹底してほしい」といった形で、ただ管理の徹底を伝えるよりも、具体的にイメージができるようなコミュニケーションに変化していくと思いました。


改めて、当社が利用する水資源は工場の敷地内で完結するものではなく、森林からダム、そして河川を通じて取水させていただき、排水したら河川を通して湖や海に流れ、地域住民や生態系に影響するという流域のつながりを実感することができました。
ーー今後の展望を教えてください。
鵜近)先ほどもお話ししましたが、今回の水リスク評価を行ってみて、水源管理者とのコミュニケーションや、流域に暮らす市民への影響も考慮した排水管理といった形で、当社が流域に関わる主体の1人として、さまざまなステークホルダーと一緒にリスクの低減に取り組む必要があることを痛感しました。
その意味では社是で掲げている、コミュニティや環境と「共栄」し、一緒に「よろこび」をわかちあえるような存在でありたいという理念は間違っていなかったと思うとともに、その理念をTNFDの枠組みを活用しながら具体的な行動へとつなげていく必要があると考えています。
水はみんなのものだから、当社だけで独占せずに、使ったらきちんときれいにして戻す。当社の事業活動によって、自然環境に悪影響を及ぼさない。それを日本に限らず世界の拠点で実施していかなければならない。こうした使命感を持って、水資源の保全と管理を行っていきたいと考えています。
(本インタビューは、2026年7月6日に実施されたものです)
MS&ADインターリスク総研の『流域リスクレンズ』は、企業拠点の取水・排水情報に加えて、流域の水の流れ、気候変動影響、保護地域や重要自然エリアの近接性を踏まえて、リスクをスコア化するだけではなく、実務に落とし込んだ対応策を提供するサービスです。

個々の拠点や流域の特長に沿った課題の把握や具体的な対応策の検討ができるように、水リスクのモデル化・解析で高度な技術力を持つ「地圏環境テクノロジー」と共同で開発しました。
地圏環境テクノロジーの詳細HPはこちら:https://www.getc.co.jp/case-study/203/
複数拠点の中からリスク拠点をスクリーニングし、さらに個別拠点の詳細評価まで実施 。現場で活用できる実務的な情報 、ESG開示・TNFD対応・BCP・設備投資に役立つ情報をご提供します。
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ESGリスクトピックス(2026年8月)
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「適応」「レジリエンス」への注目さらに高まる―London Climate Action Week 2026 から見えた、気候変動のトレンド—【リサーチレター(2026年8月)】
LCAWは、英シンクタンクのE3G(Third Generation Environmentalism)が主催する気候変動イベントであり、2019年に始まり、今年で第8回目を迎えた。開催期間中、ロンドン中心部の各会場では、自治体レベルのコミュニティ集会から、各国閣僚級の会合、国際機関や企業による大規模会議まで、幅広いイベントが同時多発的に行われる。都市全体が気候変動への関心を可視化する場となっている点に、このイベントの特徴がある。主催団体のE3Gによると、今年のLCAWでは対面・オンラインを合わせて10万人以上が参加、1,300超のセッションが開かれた。
また、LCAWは単なる政策フォーラムではない。ビジネスの世界においても、新サービスの発表、新たな連携の形成、新レポートの公表など、具体的な動きが集中する。今回も、企業や国際機関、NGO、政府関係者などによる、それぞれの立場における新しい取組みのアナウンスが多数みられた。
今回のLCAWでは、欧州における酷暑が現実の問題として強く意識された。LCAW開催期間中は、英国気象庁が猛暑に関する全国的な異常気象警報を発令した時期と重なった。熱波に関する報道が連日のように流れ、同期間中、人々の生活に様々な影響をもたらした。ロンドン交通局は、熱波による一部運休・大幅な遅延を考慮し、電車の鉄道利用者に不要不急の移動を控えるよう呼びかけた。実際、冷却空調設備の無いバスや電車路線も多く存在する。さらに、酷暑により学校が閉鎖され、病院が逼迫する事態が発生した。欧州各国では公共施設や住宅などにおけるエアコン普及率が低く、暑さへの社会的な備えが十分ではないため、高齢者や児童への健康影響が深刻化しやすい。LCAWイベント会場内でも暑さが頻繁に話題となり、一部イベントは熱波の影響で開催を取りやめたとも報じられている。
地球温暖化が深刻化している中で科学者たちは将来をどう見ているのか。LCAW期間中に開催されたUNEP FI Global Roundtable 2026では、IPCC※4のジム・スキー議長が登壇し、科学的視点を踏まえた今世紀における気温上昇の展望について言及した。同氏は、1.5℃の気温上昇を短期的に超えること(オーバーシュート)は避けられないと明言した。その一方で、パリ協定の1.5℃目標※5が失われたわけではないとも述べ、炭素除去※6の重要性を強調した。つまり、温室効果ガス(GHG)排出削減だけでは不十分であり、将来の気温上昇を抑えるためには、炭素除去技術の活用が不可欠であるという認識である。


(撮影:Mariana Castaño Cano / 10Billion Solutions for UNEP FI)
スキー氏はUNEPの分析内容を引用し、具体的なシナリオについて説明した。現行の政策によるGHG排出削減努力が行われた場合、2100年時点で約2.8℃の上昇、各国が決定した削減目標(NDC)を達成した場合は2.3~2.5℃の上昇、すべてのネットゼロ(実質排出ゼロ)目標が実現した場合は1.8~1.9℃程度の上昇幅となる。最終的な気温上昇幅を1.5℃水準に引き下げるためには、炭素除去の本格的な活用が前提となる。ただし、炭素除去が地球システムにどのような反応を引き起こすかは十分に解明されておらず、オーバーシュートの不可逆的影響についても不確実性が残る。さらに大気中から二酸化炭素を除去するための技術についても、まだ多くの課題が残されている。
重要なのは、暑さがもはや将来予測ではなく、現在進行形の経済・社会課題になっている点である。酷暑は単なる不快さの問題ではなく、交通、医療、教育、労働、インフラ全般に波及する。LCAWの議論は、こうした物理的リスクが欧州でも現実化していることを、あらためて印象づけるものであった。


※UNEP資料では「NDCの達成」シナリオには「無条件NDCシナリオ」と「条件付きNDCシナリオ」の2つが示されている。図表の「NDCの達成」のシナリオの概要は「無条件NDCシナリオ」の内容を紹介している。「条件付きNDCシナリオ」とは、無条件NDCシナリオに加え、資金、技術移転、能力構築などの国際的な支援(を受けること)を実施の条件とするNDC目標も含まれる。
(ジム・スキー氏の講演内容及びUnited Nations Environment Programme (2025)「Emissions Gap Report 2025」を基に筆者作成)
今回のLCAWを通じて最も強く感じたのは、「レジリエンス」という言葉が、ほぼすべてのイベントで共通言語になっていたことである。会場では、適応やレジリエンスといった言葉が頻繁に使われていた。気候変動の影響がすでに顕在化している以上、企業や金融機関は「将来のGHG排出削減」だけでなく「今起きているリスクへの備え」を同時に求められているのである。
UNEP FI Global Roundtable 2026にて、ある登壇者は、「私たちは、ある種矛盾しているともいえる2つの異なるシナリオに同時に対処しなければならない。つまり、気温上昇を1.5℃または2℃に抑えるべく努力し、少なくともパリ協定の目標を維持しようと努める一方で、3℃の上昇という事態にも備える必要がある。したがって、一方のシナリオを想定するあまり他方を軽視するようなことは避け、両者の間でバランスを見出すことが極めて重要となる」と述べた。気候政策や企業戦略は、より厳しい物理的リスクを織り込んだうえで、なお持続可能な事業モデルを構築する必要性が改めて強調された。
IPCC議長のスキー氏も、次期評価サイクルでは適応策への注力が一層高まると説明した。加えて、次期評価サイクルで重視される課題が「資金(ファイナンス)」であると主張した。これまでの報告書には資金に関する章は設けられていなかったが、次期評価サイクルでは初めて資金についての章が盛り込まれる予定であると述べた。この観点では、適応資金の多くがいまだ公的資金に依存していると指摘し、民間資金を適応策に呼び込むことを強調した。
洪水リスクは適応策が求められる重要な論点の一つである。実際、LCAW開催国である英国では、洪水リスクがすでに社会経済の広範な領域に影響を及ぼしている。英国気候変動委員会(CCC)※7は2026年5月に「A Well-Adapted UK:第4次リスク評価報告書(以降、本報告書)」を公表した。本報告書は500ページ超におよび、現在から将来にかけての気候変動リスクが、健康、土地利用、経済を含む14の主要なシステムに与える影響や、求められる行動を提示している。
本報告書によれば、追加的な適応策を講じなければ、気候変動によるコストが2050年までに年間GDPの5%に達する可能性があると警告している。一方で、主要な適応策を実施するには、官民合わせて年間約110億ポンド(現在の日本円にして約2兆3,540億円※8)の追加投資が必要とされる。洪水対策はその中でも、冷却対策に次いで多額の資金が求められる分野である。
英国では、河川、地表水、沿岸部に起因する洪水リスクが今後さらに高まる見込みである。2050年代における最も激しい短時間強雨は、20世紀後半と比べて降水量が15~60%増加すると予測されている。また、河川流量のピークは、特に北部や西部の流域において、20世紀後半と比べて最大45%増加する見通しである。
洪水リスクが高まる中、英国ではNature Flood Management(NFM:自然を活用した洪水管理)と呼ばれる洪水対策の試験的導入が各地で進められている。NFMとは、自然の仕組みを活用して洪水の危険性を低減する手法である。具体的には、森林、河川および氾濫原、土壌、沿岸域の管理などが挙げられる。NFMは、こうした自然が本来持つ機能を保護・回復・模倣することで、水の流れを緩やかにし、水を一時的に貯留する役割を果たす。
英国政府も、NFMの導入拡大を進めている。2023年9月には、英国環境庁(Environment Agency)と環境・食糧・農村地域省(DEFRA)が、新たなNFMプログラムを通じて洪水レジリエンスを向上させるため、2,500万ポンド(現在の日本円にして約53億5千万円)の資金を拠出すると発表した。このNFMプログラムは、2017年から2021年にかけて60件のプロジェクトを実施した「NFMパイロットプログラム」(予算1,500万ポンド、現在の日本円にして32億1千万円)の知見を基盤としており、その成果を踏まえて展開されている。2026年7月時点では、計35件のプロジェクトが承認され、各地で現場作業が進められている。
LCAWでは6月25日に「Water Resilience Investment Summit(水レジリエンス投資サミット)」が開催され、会場は多くの参加者で埋め尽くされた。ここでは、FloodAction Coalitionの取組みが紹介された。同イニシアチブは、2028年までに10億ポンド(現在の日本円にして約2,140億円)規模の水レジリエンス市場を創出することを目指している。湿地再生、森林造成、流域の再湿潤化といった自然ベースの洪水対策を、投資可能なインフラ資産クラスへ転換する構想である。洪水対策を単なる公共事業ではなく、レジリエンス投資として捉える発想が印象的であった。


Water Resilience Investment Summitでは、FloodAction Coalitionの活動内容の紹介に加え、同イニシアチブが支援する5つの進行中プロジェクトのピッチプレゼンテーションが行われた。
(筆者撮影)
本イベントの議論では、NFMはインフラ事業者、保険会社、投資家、政府機関、環境団体、プロジェクト開発者、地主、自治体など、多様な主体を巻き込むことが前提であると整理されていた。水はあらゆる土地の境界を越えて流れるため、単一の主体のみで対応するのではなく、流域全体での発想が必要となる。つまり、NFMを活用した洪水対策は技術の問題であると同時に、協働とガバナンスの問題でもあることが強調された。
また本イベントでは、Googleの社会奉仕事業を担うGoogle.orgがFloodAction Coalitionに100万ポンド(現在の日本円にして約2億1,400万円)を拠出し、「UK Water Resilience Intelligence Platform(英国水資源レジリエンス情報プラットフォーム)」の開発を支援すると発表した点も注目に値する。このプラットフォームは、水文モデル、インフラ・資産データ、保険・リスクデータ、流域情報などを統合し、組織が活用できる単一の情報基盤を構築するものである。これにより、「洪水や干ばつのリスクにさらされている場所はどこか」「自然環境への投資が最も効果的にリスクを軽減できる場所はどこか」「レジリエンスの価値はどれくらいか」を可視化することが可能になる。
Googleの登壇者は、データに関する課題は、必要なデータが存在しないことではなく、データが分散しており、一貫して活用されていないことにあると指摘した。したがって、課題の核心はデータ連携のガバナンスにあるとの認識が示された。
LCAW期間中、電化の促進も重要なテーマの一つであった。中東をめぐる地政学的状況の変化に起因する化石燃料危機は、各国政府や企業に対し、変動の大きい化石燃料からクリーンエネルギーシステムへ迅速に移行する必要性を強く認識させた。その背景には、経済安全保障やエネルギー価格の安定を確保するうえで、電化が戦略上の重要課題になっているという認識がある。こうした流れを受け、LCAWでは電化を後押しする新たな動きが見られた。
COP31議長はLCAWのイベントにおいて、電化は気候変動とエネルギー価格高騰への世界的な対応の中核となるべきだと述べた。また、家庭や企業が価格変動リスクを軽減するためにも、電化は不可欠であると指摘した。同議長は、直前に開催されたボンでの国連気候変動交渉会議においても、世界の最終エネルギー需要に占める電化率を現在の約20%から2035年までに35%へ引き上げる「35×35」目標を提案している。
さらに欧州委員会はLCAWの場で、クリーンな電化を加速する新たなプラットフォーム「Electrify Now」を発足した。同プラットフォームは、上記の「35×35」目標を実現するための推進役として位置づけられており、化石燃料への依存度が高い輸送、産業、建物部門での電化を加速することを目指している。COP30議長国であるブラジル、COP31議長国であるオーストラリアとトルコ、COP32議長国であるエチオピアに加え、カナダ、フィリピン、韓国、英国、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)が主導するこのプラットフォームは、企業や金融機関も参加しており、他の主体にも参加が開かれている。
LCAWへの参加を通じて、気候変動対応における議論の焦点が、従来の「GHG排出削減の追求」から「適応・レジリエンスを含む総合的対応」へ移っていることを実感した。とりわけ、暑さ、洪水、水の枯渇といった物理的リスクは、すでに顕在化している課題である。今後は、適応対策を単なる防災対応にとどめず、新たな事業機会として捉える視点が一層重要になると考えられる。
<参考文献>
※1 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第64回補助機関会合(通称、SB64)を指す。気候変動枠組条約には、年1回のCOPに加えて、補助機関の会合が毎年5~6月に2週間、ドイツ・ボンにて開催される。ここでは毎年11月に開催されるCOPなどに向けて締約国が議論し、結論文書等が採択されることとなっている。SB64は2026年6月8日~6月18日(ドイツ・ボン現地時間)に開催された。
※2 全ての国連加盟国によって構成される国連の主要な審議機関。毎年9月中旬に開会される。
※3 気候変動に関する最大の国際会議。全ての条約締約国が参加し、条約の実施に関するレビューや各種決定を行う。2026年は11月9日から20日にかけて、トルコ南部の地中海沿岸都市アンタルヤで開催される予定。
※4 「Intergovernmental Panel on Climate Change」の略で、日本語では「気候変動に関する政府間パネル」と呼ばれる。1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された。各国政府の気候変動に関する政策に対し、科学的な知見を評価・提供する国際的な政府間組織。
※5 パリ協定とは、2015年に開催されたCOP21において採択されたGHG排出削減などのための国際枠組み。1.5度目標とは、パリ協定で示された「産業革命以前に比べて、世界の平均気温の上昇を2℃以下に、できる限り1.5℃に抑える」という国際的な目標のこと。
※6 大気中の二酸化炭素(CO2)を実際に取り除く技術の総称。
※7 2008年に設立された機関。政府から独立した立場で、エビデンスに基づき排出削減目標について政府に助言を行うとともに、GHG排出削減に向けた進捗状況を議会に報告する。
※8 本稿では日本銀行の基準外国為替相場(令和8年8月)を基に、1GBP=214円で計算。
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経済安全保障とサステナビリティの交接点 ―G7エビアン・サミット「重要鉱物のサプライチェーン確保に関するG7首脳宣言」を手がかりに
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