海洋関連課題の概説と国際的な動向 ―国連海洋会議での議題を含めたポイントの紹介-【サステナブル経営レポート(2025年8月)】
2025年6月、第三回国連海洋会議(UN Ocean Conferece:UNOC3)がフランス・ニースで開催された。ニューヨーク(2017年)、リスボン(2022年)に続く3回目の開催であり、フランスとコスタリカの2ヵ国の共催によって「海洋の保全と持続可能な利用に向けた行動の加速とあらゆる主体の動員」をテーマに実施された。
会議の場では、海洋に関するあらゆる課題について議論された。例えば以下のようなテーマである。
本稿においては、これまで議論されてきた海洋関連課題の国際的な動向の中で企業の事業活動に関連するテーマを中心に概説し、UNOC3で示された直近の海洋関連の動向や議題を紹介する。
地球の約7割を占める海洋に関して、これまで幅広いテーマで国際的な議論が行われてきた。国際的な目標の一つである2030年のSDG14(海の豊かさを守ろう)の達成のためには科学的な知見の蓄積や協力が不可欠であるとして、2017年12月の国連総会において「国連海洋科学の10年」と称し、2021年~2030年の間、海洋関連課題に集中的に取り組むことが宣言された。2025年はちょうどその中間年にあたる。さらに2022年には生物多様性条約のもとでグローバル生物多様性枠組み(GBF)が採択され、2030年までに陸域と海域のそれぞれ30%を保護する(30by30)などの目標も定められた。
UNOC3においても随所でSDG14のターゲット(下表)に触れながら、その達成に向けた議論が行われた。
14.1 2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む陸上活動によるあらゆる海の汚染を防ぎ、大きく減少する
14.2 2020年までに、海洋及び沿岸の生態系に対する重大な悪影響を回避し、健全で生産的な海洋のための回復措置を講じる
14.3 あらゆるレベルでの科学的な協力の促進などを通じて、海洋酸性化の影響を最小限に抑え、対処する
14.4 2020年までに、過剰漁業、違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)、破壊的な漁業慣行を根絶し、科学的根拠に基づいた管理計画を実施することにより、水産資源を最大持続生産量を生み出せる水準まで回復させる
14.5 2020年までに、国内法及び国際法に則り、入手可能な最良の科学情報に基づき、沿岸域及び海域の少なくとも10%を保全する
14.6 2020年までに、過剰漁獲等につながる漁業補助金を禁止し、IUU漁業につながる補助金を撤廃し、新たな補助金の導入を控える
14.7 2030年までに、持続可能な漁業管理、養殖業、観光業などを通じて、小島嶼開発途上国及び後発開発途上国における海洋資源の持続可能な利用による経済的便益を増大させる
14.a 海洋の健全性を向上させ、開発途上国の開発に対する海洋生物多様性の貢献を高めるため、科学的知識の向上、研究能力の向上、及び海洋技術の移転を行う
14.b 小規模零細漁業者に対し、海洋資源及び市場へのアクセスを提供する
14.c 海洋及びその資源の保全と持続可能な利用のための法的枠組みを規定する国連海洋法条約に反映された国際法を実施することにより、海洋及びその資源の保全と持続可能な利用を強化する
海洋関連の課題は様々だが、SDG14でも挙げられている通り、プラスチックや栄養汚染などを含む陸上由来の汚染、海洋由来の汚染、海洋生態系の破壊、海洋酸性化、IUU漁業、海洋資源の減少などがその一部として挙げられる。また、気候変動の影響によるサンゴ礁の白化や海洋生態系の生息域の変化なども、国際的な海洋関連課題の一つと言える。
これらの課題に対応するため、例えば海洋におけるプラスチック濃度のデータ取得の精緻化やサンゴ礁の現在の状態といった海洋データの取得や科学的知見の向上、IUU漁業の根絶のための漁業の適正な規制と持続的な管理をサポートする取り組みの実施、海洋に関係深い産業の自然に与えるインパクトや取り組みといった内容が、国連海洋会議においても種々のイベントで協議された。
ブルーエコノミーは、「海洋生態系の健全性を維持しながら、経済成長、生計の向上、雇用のために海洋資源を持続的に利用すること」と定義されている※2。具体的には、漁業や水産養殖、海運、サンゴ礁やマングローブなどを始めとする沿岸・海洋観光、洋上風力や海水淡水化、海底の資源採掘といった事業が深く関係していると言える。これらの産業セクターは、海洋の資源や景観などの生態系サービス※3に依存し、インパクトを与えている。与えているインパクトを回避・低減し、修復・再生していくことは、自らの産業のためにも重要な取り組みである。
観光セクターにおいては、6月7日にUNOC3の特別イベントの場において、持続可能な沿岸・海洋観光を構築するための「海洋観光協定(Ocean Tourism Pact)」が発足された※4。これは、フランス政府、持続可能な開発と国際関係研究所(The Institute for Sustainable Development and International Relations)、海洋と気候プラットフォーム(Ocean & Climate Platform)の3機関によるものである。同協定では、2021年にCOP26(国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議)にて発表された観光における気候変動対策に関するグラスゴー宣言や観光分野におけるプラスチック廃棄物削減を目的とした国際的な取り組みといった行動を推進していくとしている。
魚、カメ、サンゴ礁、海洋哺乳類などの海洋生態系や海そのものの景観、またそれらを楽しむためのレクリエーション(シュノーケリング、ダイビング、カヤック等)は、観光セクターが深く依存している生態系の文化的サービスと言える。沿岸・海洋の観光セクターは、年間1兆5,000億ドルの利益を生み出し、世界中で5,200万人の雇用を支えており、重要な海洋関連セクターの一つであると言える。
2022年2月から3月にかけて開催された第5回国連環境総会(UNEA5.2)において、海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染対策に関する法的拘束力のある国際文書(条約)、いわゆる「国際プラスチック条約」を政府間で議論・採択していくことが決定された。同条約はライフサイクル全体におけるプラスチックの環境への影響を削減することを目的に、生産、使用、廃棄等各段階でどういった国際的な取り組みを推進していくかを定めることとしている。
本来2024年11月に開催した INC5(政府間交渉委員会第5回会合)において本条約は採択される予定であったが、いくつかの条文において参加国の意見がまとまらず、2025年8月に改めての最終化を予定している※5。
交渉が難航している条文の一つに、プラスチックの生産量の上限制限を設けるか否かがあり、特に産油国を中心に反対の声が上がっている。海洋のみならず幅広いセクターに関係するプラスチック問題において、世界的な目標を定めてそもそもプラスチックの生産を抑制するのか、使用または廃棄の段階での取り組みに注力することとなるのか、プラスチック条約の最終化においてどのような結論が下されるかについては、注視する必要がある。
今回の国連海洋会議に合わせて、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は新たに2つのセクターガイダンスを正式に公表した。今回公表されたガイダンスは海洋に深く関係する漁業、海運業が対象であり、関連するセクターの企業はガイダンスを参照することで、自社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)の特定や取り組みの検討に役立てることができる。
例えば海運業は国際貿易上重要な役目を持っている一方で、航行そのものや操業によるGHG排出、平時および事故発生時の海洋汚染(海中騒音を含む)、SOx・NOx(硫黄酸化物・窒素酸化物)等による大気汚染、水中騒音や海洋の生物との衝突、バラスト水や船体付着等による外来種の越境移動など、運航の過程で様々な環境社会へのインパクトの可能性を抱えている。こういった自社と自然との関係性の把握は、自然関連のリスク・機会の特定のための第一歩となる。
TNFDはセクターガイダンスの公表に合わせて、海洋関連データ取得の課題に関するディスカッションペーパーも公表しており、以下の課題を挙げている。
また、科学的根拠に基づく環境目標策定イニシアチブ(Science Based Targets Network:SBTN)は2025年3月、海洋域に関する科学的根拠に基づく目標設定手法を公表した。現時点で海洋域の目標は①乱獲の回避と削減、②海洋生息地の保護、③ETP種(海洋漁業における絶滅危惧種や保護対象種)のリスク低減という3つが設定されており、漁業・養殖業の企業が参照できるようになっている※6。
今回の第三回国連海洋会議は、フランス南東部の沿岸にある都市ニースで6月9日から5日間にわたって開催された。本会場(ブルーゾーン)はニース港に設けられ、各国代表、プレス、メディアおよび国連に承認された組織(研究機関、国際機関、NGOなど)のみ参加できる。一方、本会場から徒歩30 分程度には誰でも入場可能な別の会場(グリーンゾーン)が設けられ、15種のパビリオンで展示、ワークショップ、パネルディスカッションなど様々なサイドイベントが開催された。


【写真】サイドイベント会場の様子
本会場では公式の会議であるPlenary meetingsとOcean Action Panelsの2種類の会議が行われ、各国連加盟国の海洋課題へのコミットメントの発表や対話が実施された。また、公式の会議とは別に、多様な主体による様々なサイドイベントが実施された。
Ocean Action Panelsにて議題となったのは、以下の10の海洋行動である。
筆者が参加したサイドイベントの議論を踏まえ、今回の会議のポイントと考えられる議題を紹介する。
UNOC3の注目点の一つに、国連公海等生物多様性協定(BBNJ協定:Marine Biological Diversity of Areas Beyond National Jurisdiction)の批准国の数が60を充足するかがあった。BBNJ協定は、「いずれの国の管轄にも属さない区域(Areas Beyond National Jurisdiction)」における海洋生物の多様性についても、その保全及び持続可能な利用に関するルールが必要として2023年に採択された協定である。この協定は批准国が60ヶ国を超えた120日後に発効することとなっており、今回のUNOC3までに批准国が規定数を超えることが一つの目標とされていた。
同協定は30by30達成においても重要となる公海の保護区の設定や海洋遺伝資源の利用(利益の公正かつ衡平な配分を含む)、環境影響評価の実施など、公海上の様々なルール設定のために必要であり早期の発効が望まれている。
本会議を経て、署名国137ヶ国、批准国51ヶ国(2025年6月20日時点)と、5月末の21ヶ国から大きく数字は伸ばしたものの60ヶ国には満たない結果となった※7。ただし議会承認手続きに向けて準備中の国も多く、早晩、発効するものと推察される。日本は現在批准に至っていないが、環境省が2025年6月に「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」 を公表するなど、関連する取り組みを進めている※8。このガイドラインは公海等における、または公海等に潜在的な影響を及ぼす可能性のある活動の実施の決定を行う前に、当該活動の環境影響評価を事業者が実施する際の手続きを定めている。
海洋保護区(Marine Protected Areas)に関するイベントでは、保護区を設定する重要性や、適切な保護区の設定のために海洋生態系のデータを取得することが強調されていた。一方で保護区の管理に関する規制・ルール作りが明確でないこと、また保護区での海洋環境のモニタリングが困難であることが課題として挙げられていた。前者に関しては実際に海洋保護区内での底引き網漁などがこれまでもたびたび問題となっており、本会議においてはフランスやイギリスなどが一部の保護区で禁止する方針を発表している※9。また本会議中に、2018年に創設した「海洋パネル」が、自国海域領域の100%を持続可能に管理することにコミットする「100%アライアンス」を正式に発足した※10。
他のサステナビリティ課題と同様に、会議中多くのイベント内において「海洋生態系を含む海洋関連データの取得」とそれに基づく「科学的な知見」、これらの学術的領域と「国際的/地域的な規制」、「資金動員」などの連携が重要であることが言及された。
先ほど紹介したTNFDのディスカッションペーパー内でも、科学的知見を得るための海洋関連データの取得が重要な課題として挙げられている。生態系データの取得方法として例えば衛星データが挙げられるが、衛星データはサンゴ礁の状態などの沿岸の生態系データの取得に役立つ一方で、水中の状況を捉えることは困難である。また、衛星画像に限らず海洋関連のデータを一度取得して以降、継続的にデータを取得し続けることがコストなどの関係で困難であることも課題の一つとされている。
海洋関連データをテーマにしたイベントは多く確認され、例えば中国アフリカ海洋科学ブルー経済協力センターらが開催するイベントにおいては、海水温や波の状態等をブイによってモニタリングし、データを公開するツール「Coastal city Ocean-based Solution Toolkit for sustainable development(COAST)」を発表した。
またNPI(Nature Positive Initiative)※11は、6月9日に海洋における「ネイチャーポジティブ」の測定に関する合意形成に向けたパートナーシップを発表した。同イニシアティブは2025年1月に陸域の自然の状態を評価するためのState of Nature(SON)指標のドラフト版を公表しており、海洋においても「ネイチャー・ポジティブ」を正確かつ有意義に測定するための指標について議論し、重要なデータとモニタリングのギャップ、および優先課題を特定するため、活動を進めていくとしている。
本会議のイベント上で、特に海と関連深いセクターとして、海運、漁業、金融等に関するイベントが多く確認された。
海運セクターについては大きくGHG排出、スクラバー、水中騒音によるかく乱といったインパクトに関する議題が特徴的だった。海運セクターの大きな課題の一つであるGHG排出については、海運セクターだけでなく次世代燃料を使用する船舶の造船、港湾における次世代燃料補給(バンカリング)拠点や港湾施設そのものの陸上電力供給システムなどを通じたカーボンニュートラル化など、サプライチェーンを通じた協力的な取り組みが必要であるということが強調されていた。
また(2)の海洋関連情報の収集ともつながる話題として、海運セクターなどの保有する船舶を利用した大規模なデータ収集も言及されていた。こういったデータ収集の例として、「10,000 ships in the ocean initiative」が挙げられる。同イニシアティブは、リアルタイムの天気や海洋データを提供する観測機器を搭載した船舶の数を、商業船を巻き込んで2035年までに10,000隻にすることを目標にしている。
金融機関・保険セクターに関連するイベントの一つとして、AXA Climateらは沿岸の洪水リスク緩和に寄与するサンゴ礁の価値を評価して保険に組み込む事例や、マングローブを回復するプロジェクトを実施している地元の漁師をハリケーンから保護するための保険事例など、海洋生態系の与える生態系サービスや、生態系の保全と関連付けられるような保険のデザインをいくつか紹介していた。
OECDは、海洋関連の産業が生み出す年間経済価値が2030年までに3兆ドルに達する可能性があると予測している※12。今後ますます産業が発展していく中で、健全な海洋を保ちながら事業活動を行っていくため、ブルーエコノミーの実現が望まれる。
本稿では海洋関連の国際的な課題の概説と、6月のUNOC3において議論されたテーマや発表された内容を紹介した。直近の国際的な動向として、国際プラスチック条約の最終化において決定される条項や、BBNJ協定の発効のタイミングなどが引き続き注目される。
本年度のUNOC3は、各国政府の海洋に関するコミットメントの発表など政策的な行動から、科学者らによる海洋研究、産業セクターの立ち位置など、海洋の保全と持続可能な利用に向けて様々な議論が行われ、海洋保護区の拡大や海洋汚染への対策、脆弱な島嶼国への資金動員などを組み込んだ「ニース海洋行動計画」を採択して閉会した※13。
特に海洋に深く関係する企業においては、自社が依存し、インパクトを与えている海洋環境の健全性を保ちながら事業活動を実施していくために、TNFDやSBTNにおいて発行されているガイドライン等を参照しながら自社の自然関連課題(依存・インパクト、リスク・機会)を特定・管理し、インパクトを低減するような取り組みに努めていくことが求められる。
またUNOC3において日本の参加者や日本が主導するイベントが少なく、プレゼンスがあまり感じられなかったことは残念であった。日本は地理的にも海洋国家であることから、持続可能な海洋国際政策において、よりイニシアチブを取ることが期待される。
1)国連開発計画(UNDP)HP:https://www.undp.org/ja/japan/sustainable-development-goals/
2)世界銀行 HP:https://www.worldbank.org/en/programs/problue
3)食料や水の供給、気候の安定など、生物多様性を基盤とする生態系から得られる恵みのこと。
4)IDDRI HP:https://www.iddri.org/en/about-iddri/press-releases/launch-ocean-tourism-pact
5)国連環境計画(UNEP)HP:https://www.unep.org/inc-plastic-pollution/session-5
6)SBTN HP:https://sciencebasedtargetsnetwork.org/news/news/sbtn-launches-first-ocean-science-based-targets-for-seafood/
MS&ADインターリスク総研 RM NAVI「SBTNが初の海洋域に関する目標設定手法を公表」(2025/5):https://rm-navi.com/search/item/2155
7)United Nations Treaty Collection HP:https://treaties.un.org/Pages/ViewDetails.aspx?src=TREATY&mtdsg_no=XXI-10&chapter=21&clang=_en
8)環境省「公海等における環境影響評価の実施に関するガイドライン」:https://www.env.go.jp/content/000320443.pdf
9)Client Earth HP:https://www.clientearth.org/latest/press-office/press-releases/uk-and-france-pledge-to-ban-bottom-trawling-in-protected-areas-lawyers-call-for-enforcement/
10)High Level Panel for A Sustainable Ocean Economy HP:https://oceanpanel.org/100-alliance/
11)「ネイチャー・ポジティブ」という言葉の定義や整合性等の調整を推進し、ネイチャーポジティブ達成に向け広範で長期的な取り組みを支援することを目的としているイニシアティブ。
12)OECD HP:https://www.oecd.org/en/publications/the-ocean-economy-to-2050_a9096fb1-en.html
13)United Nations HP:https://press.un.org/en/2025/sea2231.doc.htm
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【終了】サステナビリティで稼ぐ、企業の “サステナビリティリレーションズ戦略”
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コメ価格の高騰と長期推移からみる農業の課題とアグリテックの必然
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TOPIX構成企業の約3割がSSBJ基準の義務化前の開示を検討、GPIF調査
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TISFDの起草体制が始動、世界4地域「カウンシル」メンバーを公表
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Biodiversity Credit Allianceがボランタリー生物多様性クレジットの審査メカニズムの検討を開始
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EUDR、国別リスク区分を定める規則案および各国分類案を提示
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ESGリスクトピックス(2025年7月)
自然資本 欧州委員会は2025年5月22日、欧州森林破壊防止規則(EUDR)の実施規則を採択し、牛肉・カカオ・コーヒー・パーム油・ゴム・大豆・木材の7品目について、原産国を「低リスク」、「標準リスク」、「高リスク」の3段階で格付けするEU規則案と各国の分類案を提示した。この規則は、EU市場にこれら7品目を流通・提供・輸出する事業者に対し、生産地まで遡ったデューデリジェンスを初めて義務付けるものである。適用時期に関しては、大企業が2025年12月30日、中小企業は2026年6月30日となっている。 リスク分類は、国連食糧農業機関(FAO)の2020年世界森林資源評価(FRA)を活用し、①2015~2020年の年間森林面積減少率が0.2%未満かつ年間森林減少面積が7万ha未満、②年間森林減少面積が1,000ha未満、③主な森林減少要因が農地拡大ではなく都市化のいずれかである場合に、「低リスク」と認定している。②の条件については、森林減少の絶対面積が小さいにもかかわらず、相対面積が大きいために森林面積減少率が高くなる小国の状況を考慮している。いずれも該当しない国は「標準リスク」に分類される。それぞれの定量的条件の+25%以内に位置する「ボーダーライン国」については政策枠組み能力・執行能力・データ透明性・EUとの協力の4項目を評価し、一定基準を満たせば「低リスク」へ引き下げられる。国連安全保障理事会もしくはEU理事会の経済制裁対象国は自動的に「高リスク」へ格上げされる仕組みとなっている。 この制度の主な目的は3つある。第1にリスク区分ごとに検査率を差別化し(低リスク国1%、標準リスク3%、高リスク9%)、EU加盟国当局による対象事業者・商品の検査を効率化すること。第2に低リスク国からのみ調達する事業者にはデューデリジェンス手続きを簡素化し、森林保護をインセンティブ化すること。第3に、各国のガバナンス改善を促し、EUの支援と連動してサプライチェーンの森林破壊フリーを推進することである。 初回リストでは、EU27カ国や日本・米国・中国・インドなどが「低リスク」、ブラジル・インドネシア・マレーシア・コートジボワールなどが「標準リスク」、ロシア・ベラルーシ・北朝鮮・ミャンマーが「高リスク」と分類されている。欧州委員会によれば、すべての国は透明かつ客観的な手法で評価され、結果は随時更新される。 企業への影響として、単一貨物に複数原産国が含まれる場合は最も高いリスクが適用され、「高リスク」貨物は検査や手続きの長期化によりコスト増や遅延リスクが高まる。推奨される対応策は、①取引先のリスク区分を確認し、「高リスク」・「標準リスク」の取引先については欧州委員会で定められているデューデリジェンス(情報収集、リスク評価、リスク緩和措置)を行って自社事業に与える影響を評価すること、②リスク区分の変更を契約条件や価格に反映できるよう契約内容を見直すことである。 出典:欧州委員会資料をもとにMS&ADインターリスク総研作成 また、2026年にはFRA2025を反映した見直しが予定されており、リスク区分が変動する可能性があるため、関連企業は積極的なエビデンスの収集や政府に対する森林保全政策の推進を働きかけることが望ましい。 総じて、EUDRの国別リスク区分は、企業の気候変動対策・自然資本戦略における重要な要素であり、事業収益やオペレーションコスト、さらには投資家や顧客からの信頼にも影響がある。関連企業はEUDRの動向を注視し、必要な対応を積極的に進めることが求められる。 【参考情報】 自然資本・生物多様性 Biodiversity Credit Alliance(BCA)は、十全性の高いボランタリー生物多様性クレジット市場の形成を目指し、クレジット供給者側の審査メカニズムの構築に向けた検討がスコーピング段階に入ったと発表した。スコーピング段階では、これまでの検討成果を踏まえて審査メカニズムの構築に向けた具体的な方向性を定めていく作業に入るとしている。 BCAは国連開発計画(UNDP)と国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)の支援により、生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15/2022年12月)期間中に設立。メンバーは研究者、保全に関わる実務者、ボランタリー生物多様性クレジット制度の検討主体などで構成されている。加えて、先住民と地域社会(IPLCs)により構成される会議体であるCommunity Adovisory Panel(CAP)も設立されており、一連の議論に参画している。 BCAが設立された目的は、十全性の高いボランタリー生物多様性クレジット市場を形成することである。十全性とは、透明性、信頼性、効率性などのボランタリー生物多様性クレジットの質を指す。BCAは、同目的の下、クレジット原則の策定や、市場参加者へクレジット原則に基づく行動を促すためのガイダンス策定等に取り組むとしている。 BCAのこれまでの検討成果として、生物多様性クレジットの定義、クレジット原則、アセスメントツールなどが公表されている。これらの一連の検討成果は、クレジットを創出・販売する供給者側の質や十全性を審査(Review)するメカニズムを構築することを目的に進めてきたものである。審査は、個別のプロジェクトによる取り組み成果をクレジットとして認証(Verification)するのではなく、クレジット認証機関が開発したプログラムや方法論に対して十全性を審査することを指している※1 。なお、同様のメカニズムとして、ボランタリーカーボンクレジット市場※2においては、The Integrity Council for Voluntary Carbon Markets(ICVCM)※3が、高品質なカーボンクレジット要件であるCore Carbon Principles(CCP)に適合するクレジットプログラムや方法論を評価している。 今回発表されたスコーピング段階の検討事項としては以下が挙げられている。 上記検討におけるポイントは、①標準化と柔軟性のバランス、②類似する他の資金メカニズムとの関係整理、③高度な専門知識を有する審査員の確保が挙げられると想定される。これらのポイントは、BCAが昨年公表した、既存の審査メカニズムのレビュー結果を取りまとめたレポート※1 において、審査メカニズムの検討における課題として挙げられた点である。 同レポートでは、需要側の理解が不足している点も指摘されている。この課題に対してBCAは、ボランタリー生物多様性クレジットの使用者に対して、クレジットの使用やその主張に関するガイダンスの作成も進めている。BCAによるクレジット供給者・使用者両面へのアプローチにより、ボランタリー生物多様性クレジット市場の十全性確保を促進していくことが期待される。 1)BCA(2024)Review Mechanisms for Supply-side Quality and Integrity in the Biodiversity Credit Matket 【参考情報】 ビジネスと人権 不平等・社会関連財務情報開示タスクフォース(TISFD)は2025年5月20日、開示基準の策定に当たって、各国・地域の社会・経済・文化的事情を反映し、より普遍的な内容にするための中心的な役割を担う「カウンシル」のメンバーを公表した。同時に、策定の進捗に応じて段階的に公表される予定のドラフトへの意見や同基準の各地での推進・普及を期待される「アライアンス」メンバーの募集を始めた。体制を整え、基準策定の作業が始動する。 カウンシルは、世界4地域(北・南米、アジア太平洋、欧州・英国、中東・アフリカ)に設置。それぞれ20~30人、計90人弱のメンバーで構成する。日本からは2人が参加している。所属は、金融機関や企業、市民団体、労働組合など。ただし、個人としての参加で、所属組織の利害を代表しない。今年初めから世界で公募していた。今後メンバーが増える可能性もあるという。1年任期で、年4~6回のリモート会議で議論に参加する。 カウンシルのメンバーは、主に次の3つの役割を担う。 ①基準のドラフト作成過程で、各国・地域の事情を踏まえたフィードバック 一方、アライアンスメンバーの役割は、基準ドラフトへの意見提供のほか、TISFD主催の学習会やウェビナーへの参加やニュースレター購読などを通じて、知見や理解を増やし、同基準の活用推進に貢献すること。組織単位での参加で、組織の種類は問わない。無料・無償で、退会も随時可能。TISFDに対して契約に基づく責務は追わない一方で、TISFDがメンバーに対して何らかのお墨付きを与えるものではないと強調されている。TISFDのHPでメンバー登録を募集中。また、TISFDは2025年内にも、専門家の個人にアライアンスメンバーの門戸を開く考えだ。 TISFDは人権や不平等といった社会的な課題や人的資本などのテーマを対象に、S(社会)領域における国際的な開示基準を開発するのが目的。当初は「不平等」と「社会」が別個の組織で検討されていたが、24年4月に統合して現在の組織となった。同年5月には基本コンセプトが公表され、国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)や欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)など既存の開示基準と整合を図る方針を明らかにした。 【参考情報】 サステナビリティ開示 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2025年5月27日、「第10回機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート集計結果」を公表した。それによると、東証株価指数(TOPIX)構成企業の約3割が、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)基準の適用義務化に先立っての開示を予定・検討していることがわかった。同基準は、有価証券報告書でサステナビリティ情報を開示する際に対応が必要で、プライム上場企業の時価総額上位を対象に、最短で2027年3月期から適用が始まる予定だ。 一部開示を含めSSBJ基準の義務化前に開示を「予定」と回答したのは9.4%、「検討」(18.0%)と合わせると、義務化前の対応を考えている企業の合計は27.4%だった。時価総額別では、最初に適用が見込まれる「時価総額3兆円以上」(発行済株式数ベース、25年1月末時点)では「予定」の割合が最も高く13.0%で、「検討」を加えた合計は37.1%となっている。一方、適用時期が遅い「5,000億円以上1兆円未満」グループの「予定」と「検討」の合計は39.1%で、「3兆円以上」グループを上回った。なお、その中間の順番で義務化の見込みの「1兆円以上3兆円未満」は、「予定」と「検討」ともにどちらのグループよりも低かった。 出典:GPIF資料をもとにMS&ADインターリスク総研作成 SSBJ開示に向けた具体的な取り組み状況(自由記述)では、非財務情報の開示における責任部署の明確化、SSBJ基準と自社の現状とのギャップの特定、対応のためのプロジェクトの立ち上げ予定などが挙がった。欧州連合(EU)のサステナビリティ開示基準である企業持続可能性報告指令(CSRD)や第三者保証への対応、非財務データ収集の体制整備についても関心が高かった。社内の負荷や経営陣の理解を得ることが難しいとして、サステナビリティ情報開示の必要性や意義の発信を機関投資家に対して求めるコメントもみられた。 前回調査(24年)に新設された自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関する質問では、同枠組みに沿った開示済の企業が10.3ポイント増の15.8%になった。「ガバナンス」や「戦略」など開示の4項目では、開示企業のうちガバナンスが対応できているとの回答(「十分」と「一部」の合計)が前回の80.7%から95.9%に上昇した。GPIFの指摘によると、4項目のうちガバナンスの開示を優先した対応は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の開始時と同様の傾向だという。「指標と目標」は88.8%で、4項目の中で最も低いが前回の66.7%から大幅に増えた。 ESG活動の目的は「企業価値向上」の回答が大半を占めた。特に企業規模別で「大型(TOPIX100)」の企業は90%(前回は85%)が「企業価値向上」を目的の1位に挙げる一方、次点の「リスク低減効果」が3%(同4%)、「社会貢献」は1%(同5%)にとどまった。中型(TOPIX Mid400)」とそれら以外の「小型」の規模でも企業価値向上を最上位に挙げる傾向は同じだった。ESG活動における主要テーマを問う質問(複数回答)では、上位3テーマが「気候変動」「コーポレート・ガバナンス」「ダイバーシティ」の順で、前回と同様だった。今回は「サプライチェーン」が7位から5位に上昇したほか、25.5%の企業が新設の「人材開発」を選び8位となった。 同調査はTOPIX構成企業を対象に、投資家向け広報(IR)の状況や機関投資家との対話について問うもので、GPIFは16年から実施。アンケートでは企業のIRやESG活動のほか、機関投資家の現状・変化、GPIFの取り組みを質問している。 今回のアンケートは25年1月末時点のTOPIX構成企業1,696社が対象で、回答社数は37.3%の632社だった。東京証券取引所の市場再編に伴うTOPIX見直しのため、対象企業数は前回調査の2,154社から大幅に減ったが、回答率は前回(33.3%)から上昇した。 【参考情報】 中国反外国制裁法 2025年3月24日、中国国務院は「中華人民共和国反外国制裁法※ 」(以下「反外国制裁法」)の具体的な運用ルールを定めた「実施に関する規定」(以下「本規定」)を公布・施行した。この規定は、2021年に施行された同法の実効性を高めるものである。 反外国制裁法は、外国の個人または組織が中国の個人や企業に対して不当な制裁や差別的措置を講じた場合に、制裁リストに追加し、中国政府が報復措置を取ることを認める法律である。中国はこの法律によって、自国の主権、安全、経済的利益を守るとともに、対外的に対等な関係を主張する姿勢を明確にしてきた。これまでは制裁の内容や範囲が不明確であったが、今回の本規定により、報復措置の内容がより具体的に明文化された。 例えば、反外国制裁法では、制裁リストに載った外国の個人やその配偶者・直系親族、また、組織やその管理職、関係者などに対して、措置を講じることが可能とされ(反外国制裁法第5条)、措置の内容は以下のうち1つ、あるいは複数の措置を講じることが可能とされている。(反外国制裁法第6条) 本規定では、上記措置に関して具体的な内容が定められ、第二項の対象となる財産には、現金、銀行預金、有価証券、ファンド持分、知的財産権、売掛金などが含まれており、広範囲に及ぶとされた(本規定第7条)。また、第三項で制限される活動の分野も明文化され、教育、科学技術、法律サービス、環境保護、経済貿易、文化、観光、衛生、スポーツが含まれており、多岐にわたる領域で影響が生じる可能性がある(本規定第8条)ことが明示された。 さらに、本規定によれば、当該措置に従わない場合、中国政府が、政府調達・入札・それらに関連する物品や技術の輸出入または国際サービスに関する貿易活動、国外からのデータの受信や提供、出入国や中国内滞在などの禁止または制限を行う可能性があるとされている(本規定第13条)。 こうした中、中国で事業を展開する企業は、自社および関連先が制裁対象となるリスクを認識し、現地で活動する従業員にもそのリスクを十分に周知するなど、慎重な対応が求められる。また、欧米諸国の対中制裁や輸出管理規制に従った結果、その行為自体が中国から「差別的措置」と見なされ、制裁対象となるリスクも想定される。 中国での事業に直接関連しない企業であっても、サプライチェーン上の企業が制裁を受けた場合、間接的な影響により、事業活動が滞る可能性がある。中国の今後の反外国制裁法・本規定の運用動向に注視し、継続的な情報収集体制とリスクへの対応方針の検討・体制整備を行うことが望ましい。 ※中華人民共和国反外国制裁法(2021年6月10日) 【参考情報】 下請法 下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)の改正案が2025年5月16日、参院本会議で可決、成立した。主要な改正は、2003年以来、約20年ぶりとなる。 本改正は、近年の急激な労務費や原材料費、エネルギーコストの上昇を受けて、発注者と受注者の対等な関係に基づき、サプライチェーン全体で適切な価格転嫁を定着させる「構造的な価格転嫁」の実現を図ることを目的として行われた。 主な改正項目は以下のとおり。 出典:公正取引委員会「下請法・下請振興法改正法の概要」をもとにMS&ADインターリスク総研作成 今回の法改正は、2024年12月公表の企業取引研究会報告書※でも指摘された上昇したコストの価格転嫁に関する問題や運送委託における荷主・物流事業者間の問題(荷役・荷待ち)、下請法逃れの問題など、価格転嫁を阻害し受注者に負担を強いる商習慣を改善し、価格転嫁および取引適正化を図るものである。 改正下請法は、2026年1月1日より施行される。現行法では適用対象となっていない取引についても、改正により下請法の適用対象となる場合がある。企業においては、施行されるまでに既存取引を棚卸して契約内容や契約取引先の従業員数・資本金額を把握し、既存取引への適用の該否を確認することが求められる。 ※企業取引研究会「企業取引研究会 報告書」 https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/2024/241225_1.pdf 【参考情報】 労働安全衛生 厚生労働省は2025年5月20日、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」を公表した。2025年6月1日より改正施行される「労働安全衛生規則」により、事業者は一定の条件下※1で従業員に作業を行わせる際、「体制の整備」、「手順の作成」、「関係者への周知」が義務付けられたことを周知している。 「体制の整備」は、定期的な職場巡視や体調確認を通じた熱中症初期症状の把握と、発見した場合の報告先や連絡方法の明確化を指す。「手順の作成」は、熱中症の恐れがある者に対する作業離脱、身体冷却など重篤化を防ぐ措置の内容およびその実施手順を定めることである。そして、それらの体制や手順について、見やすい場所への掲示やメール送付によって、作業者に確実に伝わるよう「関係者に周知」することが求められている。本改正で新設された規則は、労働安全衛生法の第22条に基づくもので、違反した場合には6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金を科される可能性がある。 改正の背景としては、近年顕著となっている気候変動による夏場の気温の高まりがある。2015年には職場における熱中症の死傷者数は464名だったが、2024年には1,257名と、10年で約3倍に増加している※2。また、熱中症は労働災害の中でも死亡災害に至る可能性が高いことも対策が急がれる理由である。厚生労働省の統計で、発生件数が最多なのは「転倒」、死亡者数が最多なのは「転落墜落」だが、“死亡率”は熱中症が最も高くなっている。厚生労働省によると、熱中症の死亡災害の多くは初期症状の放置または対応の遅れによって生じているとされており、事業者が本改正の趣旨に沿って対策を進めることで、事態の改善が期待される。 出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「令和6年度労働災害統計確定値」をもとにMS&ADインターリスク総研作成 熱中症に対しては、建設や運輸等、屋外や高温環境下での作業を伴う業種を中心に、休憩時間の確保や冷却機能付き作業服の導入などの対策が浸透しつつある。しかし、死傷者数の増加傾向は、気候変動によるリスクの高まりに対策が追い付いていないことを示唆している。加えて、人材不足や健康経営への注目を背景に、企業が従業員の健康や安全を守る責任は一層厳しく問われている。経営者やリスク管理の担当者には、法令上の義務を果たすのに留まらず、リスクの高まりや社会的要請といった環境の変化を勘案し、自社の現場に即した実効性ある対策を実施いただきたい。 1)WBGT(湿球黒球温度)28度又は気温31度以上の作業場において行われる作業で継続して1時間以上又は1日当たり4時間を超えて行われることが見込まれるもの 【参考情報】 サイバーセキュリティ 近年、サプライチェーン上の弱点を狙って攻撃対象への侵入を図るサイバー攻撃が増加している。サプライチェーンを構成する企業のサイバー攻撃への対策が不十分である場合、当該企業の事業活動に支障が生じるだけでなく、重要情報の流出や製品・サービスの供給停止などに繋がりかねず、当該企業を踏み台にして取引先が攻撃される恐れもある。 2025年5月27日にIPAは、「2024年度中小企業等実態調査」(以下、本調査という)の結果を公表、中小企業のセキュリティ対策状況について報告した。IPAは、同種の調査を2016年度および2021年度に実施している。 出典:本調査報告書をもとにMS&ADインターリスク総研作成 本調査結果によると、過去3年間に情報セキュリティ対策投資を行っていない企業は約6割に上っている。2016年度、2021年度の調査結果よりも悪化しており、中小企業が情報セキュリティ対策投資に踏み出せていない実態が明らかになった。また、投資をしていない理由として「必要性を感じない」ことを挙げた割合は小規模企業者では約5割となっており、中小企業におけるサイバーセキュリティ対策が進まない原因として、セキュリティ投資の費用対効果が不明瞭であることが主な原因の一つと示された。 IPAが普及展開している「SECURITY ACTION※1」や「サイバーセキュリティお助け隊サービス※2」は、中小企業向けに開発された情報セキュリティ対策推進策であり、一定の基準を満たせば、補助金の対象となるなどの仕組みが用意されている。しかし、どちらも中小企業の認知度は10%を下回っており、活用されているとは言い難い。 中小企業のサイバーセキュリティ対策を進めるためには、取引先がサイバーセキュリティ対策の実施を条件として仕事を発注するなどの動機付けが必要であろう。中小企業をはじめすべての企業や組織がサイバーセキュリティの重要性を理解し、積極的に対策を講じるよう、環境の整備や継続的な啓発活動が強く求められる。 1)SECURITY ACTION:中小企業が、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度。 【参考情報】
○ EUDR、国別リスク区分を定める規則案および各国分類案を提示
リスク区分
初回分類国
事業者デューデリジェンス
想定される企業への影響
低リスク
EU各国
日本
米国
中国
インドなど
情報収集のみ
税関手続きの簡素化
標準リスク
ブラジル
インドネシア
マレーシア
コートジボワールなど
情報収集
リスク評価
監査等のリスク緩和措置
年次報告の義務
当局の査察による輸送遅延
契約拒否
罰金(自社におけるEU内での総売上高の最大4%)
税関または当局による商品押収
EU市場への輸入および販売の禁止
高リスク
ロシア
ベラルーシ
ミャンマー
北朝鮮
情報収集
リスク評価
監査等のリスク緩和措置
年次報告の義務
当局の査察による輸送遅延
契約拒否
罰金(自社におけるEU内での総売上高の最大4%)
税関または当局による商品押収
EU市場への輸入および販売の禁止
2025年5月22日付 European Commission HP: https://green-forum.ec.europa.eu/deforestation-regulation-implementation/eudr-cooperation-and-partnerships_en
○ Biodiversity Credit Allianceがボランタリー生物多様性クレジットの審査メカニズムの検討を開始
-*-*-*-*-
2)民間が主導するカーボンクレジットの取引市場のこと
3)https://icvcm.org/assessment-status/
2025年6月6日付: https://www.linkedin.com/posts/biodiversity-credit-alliance_????-?????-?????????-activity-7336309012537176064-XJB8
○ TISFDの起草体制が始動、世界4地域「カウンシル」メンバーを公表
-*-*-*-*-
②基準策定に重要な担当国・地域内の特性や事情などを、カウンシル内外で協議・共有
③本基準が対象にする「不平等」や「社会」のテーマについて、投資家を中心に理解増進を図る
2025年5月20日付 TISFD HP:https://www.tisfd.org/news/tisfd-announces-launch-of-regional-councils-to-ensure-global-relevance-and-local-engagement
○ TOPIX構成企業の約3割がSSBJ基準の義務化前の開示を検討、GPIF調査
-*-*-*-*-
<SSBJ開示の予定・検討状況>

2025年5月27 日付 年金積立金管理運用独立行政法人HP: https://www.gpif.go.jp/esg-stw/stewardship/stewardship_questionnaire_10.html
○ 中国が反外国制裁法の実施規定を公布
-*-*-*-*-
https://www.gov.cn/xinwen/2021-06/11/content_5616935.htm
中国政府HP:https://www.gov.cn/zhengce/content/202503/content_7015400.htm
○ 下請法、約20年ぶりの主要な改正
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改正の項目
主な改正内容
1.協議を適切に行わない代金額の決定の禁止
・対象取引において、代金に関する協議に応じないことや、
協議において必要な説明又は情報の提供をしないことによる、
一方的な代金の額の決定を禁止。
2.手形払い等の禁止
・対象取引において、支払い手段として、手形払いの他、
電子記録債権やファクタリング等、代金相当額を得ることが
困難なものを禁止。
3.運送委託の対象取引への追加
・対象取引に販売、製造等の目的物の引渡しに必要な運送の
委託を追加。
4.従業員数基準の追加
・委託事業者に「300人超」(役務提供委託等は100人以上)、
受託事業者に「300人以下」(役務提供委託等は100人以下)の
区分を新設し、規制および保護の対象を拡充。
5.面的執行の強化
・事業所管省庁の主務大臣に指導・助言権限を付与し、
「報復措置の禁止」の申告先として、
事業所管官庁の主務大臣を追加。
6.用語の見直し
・下請代金支払遅延等防止法を「製造委託等に係る
中小受託事業者に対する代金の支払いの遅延等の
防止に関する法律」に、「下請事業者」を
「中小受託事業者」に、「親事業者」を「委託事業者」に改正。
2025年5月16日付 公正取引委員会HP:https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2025/may/250516_toritekiseiritsu.html
○ 厚生労働省、労働安全衛生規則を改正し熱中症対策を義務化
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類型
転倒
転落墜落
熱中症
2024年の発生件数
36,378
20,699
1,257
上記のうち死亡者数
31
188
31
死亡者の発生割合
0.08%
0.90%
2.46%
2)厚生労働省発行パンフレット「職場における熱中症対策の強化について」より引用
2025年5月20日付 厚生労働省HP:https://neccyusho.mhlw.go.jp/
○ 2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査~中小企業の6割がセキュリティ投資せず
-*-*-*-*-
文献調査
アンケート調査
インタビュー調査
調査
対象
20件の文献
中小企業等の経営層および情報システム/情報セキュリティの担当マネージャ(4,191件)
アンケート回答者のうち有効な取組を実施していると想定される中小企業等(21社)
調査
項目
2)サイバーセキュリティお助け隊サービス:中小企業に対するサイバー攻撃への対処として不可欠なサービスをワンパッケージにまとめた、民間の事業者から提供されるサービス。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA): 「2024年度 中小企業における情報セキュリティ対策に関する実態調査」報告書について https://www.ipa.go.jp/security/reports/sme/sme-survey2024.html
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EUサステナビリティ関連規制を読み解くための基礎知識
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GPIFの運用委託先、最も懸念のESG課題は昨年度とほぼ同じ気候変動、ダイバーシティなど
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SBTN、陸域目標設定の方法論を更新。目標設定におけるオプション追加
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【終了】TNFD対応基礎編・実務編およびCOP16を踏まえたTNFD最新動向紹介
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SSBJハンドブックの追加項目を公表、財務的影響の開示などを解説
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【終了】那須野が原ネイチャーポジティブシンポジウム~地域連携で自然再興を目指すには~
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ESGリスクトピックス(2025年6月)
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農山漁村支援が企業の価値創造に、農水省がつながり示すガイダンスを公表
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GPIFが初のサステナ投資方針、全資産で推進、社会・環境インパクトも考慮
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NPIが自然の状態を測る指標のドラフト版と解説を発表、2026年の完成を目指す
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SBTNが初の海洋域に関する目標設定手法を公表
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ESGリスクトピックス(2025年5月)
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