金融庁公表のサステナ開示好事例、SSBJ開始見据えたポイントを掲載
¥0
WBCSDなどが循環経済の国際的プロトコルを公表、気候・自然開示枠組みと連動を志向
¥0
電動キックボードユーザーの意識と運転の実態 ~アンケート調査結果より(2026年版)【リサーチレター(2026年4月)】
2023年7月に道路交通法が改正され、一定の規格を満たした電動キックボード等は、道路交通法上の一般原動機付自転車から「特定小型原動機付自転車」という新たな区分に移行した。この電動キックボード等は、16歳以上で運転免許は不要、ヘルメットの着用は努力義務となっている。
手軽に利用できることから電動キックボードのシェアリングサービスは急拡大している。国内で稼働するシェアリング用電動キックボード※1は、法改正直後の2023年7月の7,662台から2025年3月には23,220台へと3倍超となり、現在もさらなる増加が見込まれている。国内大手シェアリング事業者のアプリダウンロード数は、2020年のサービス開始から2025年8月までに累計500万を突破した。
シェアリングサービスの急拡大の一方で、問題視されているのが、ユーザーによる交通違反である。2024年の特定小型原動機付自転車の交通違反の検挙件数は4万件を超えており、前述の稼働台数の1.8倍となっている※2ことが参院内閣委員会で指摘された 。※3
そのような状況の中、わが国の電動キックボードユーザーの意識やその運転の実態を把握すべく、MS&ADインターリスク総研は2026年1月にシェアリングサービスの利用経験者500人に対してアンケート調査を実施した。本稿では、本調査の結果およびデータ分析の結果について紹介する。
※1)公道で見かける電動キックボードの多くはシェアリングのため、事業者のデータが電動キックボードの普及実態に近い指標として使われる。
※2)2024年の自転車の交通違反の検挙件数は5万1千件で、保有台数は推定5千2百万台である。検挙件数に対する台数の割合を比較すると電動キックボードの検挙数の多さがわかる。
※3)「電動キックボード、違反が年4万件超 「登録台数の1・8倍。違反ありすぎ」立民・石垣氏」『産経新聞』2025年6月17日
2026年1月20日~26日の間にインターネットによる調査を行った。
500人(男性253人、女性247人)
20~29歳、30~39歳、40~49歳、50歳~59歳、の年齢4区分ごとに男女各125人。
| 頻度 | 人数 |
|---|---|
| 週に2~3回以上 | 116 |
| 週に1回程度 | 118 |
| 月に1回程度 | 83 |
| 月に1回未満 | 183 |
| 合計 | 500 |
| 職業 | 人数 |
|---|---|
| 会社員 | 309 |
| 会社経営・役員 | 15 |
| 公務員 | 23 |
| 自営業・自由業 | 31 |
| 団体職員・各種法人 | 4 |
| 派遣社員 | 12 |
| パート・アルバイト | 55 |
| 学生 | 18 |
| 専業主婦・主夫 | 20 |
| 無職(定年退職者を含む) | 13 |
| その他 | 0 |
| 合計 | 500 |
| 都道府県 | 回答者数 | 都道府県 | 回答者数 | |
|---|---|---|---|---|
| 全体 | 500 | 三重県 | 5 | |
| 北海道 | 15 | 滋賀県 | 5 | |
| 青森県 | 5 | 京都府 | 16 | |
| 岩手県 | 5 | 大阪府 | 45 | |
| 宮城県 | 12 | 兵庫県 | 21 | |
| 秋田県 | 5 | 奈良県 | 4 | |
| 山形県 | 1 | 和歌山県 | 1 | |
| 福島県 | 5 | 鳥取県 | 3 | |
| 茨城県 | 7 | 島根県 | 0 | |
| 栃木県 | 8 | 岡山県 | 3 | |
| 群馬県 | 5 | 広島県 | 12 | |
| 埼玉県 | 31 | 山口県 | 3 | |
| 千葉県 | 18 | 徳島県 | 2 | |
| 東京都 | 131 | 香川県 | 0 | |
| 神奈川県 | 37 | 愛媛県 | 1 | |
| 新潟県 | 8 | 高知県 | 1 | |
| 富山県 | 3 | 福岡県 | 16 | |
| 石川県 | 3 | 佐賀県 | 0 | |
| 福井県 | 1 | 長崎県 | 0 | |
| 山梨県 | 3 | 熊本県 | 2 | |
| 長野県 | 8 | 大分県 | 1 | |
| 岐阜県 | 5 | 宮崎県 | 2 | |
| 静岡県 | 12 | 鹿児島県 | 3 | |
| 愛知県 | 26 | 沖縄県 | 0 |
最も回答が多かったのは、「趣味、遊びの場所への移動」で55.8%であった。また、「運転を楽しむ」は34.0%であった。これは、新しいモビリティを楽しみたいユーザーが一定数存在することを示している(図表1)。


本調査の回答者のうち、運転免許を保有していない回答者は5%であった(図表2)。


「そう思う」と「ややそう思う」の合計は84.8%となっている(図表3)。


「詳しく知っている」と「主なものについて知っている」の合計は87.8%となっている(図表4)。


「そう思う」と「ややそう思う」の合計は89.4%となっている(図表5)。


本調査では回答者に電動キックボード運転時に、「守れていなかったかもしれない」交通ルールについて聞いた。「違反はしていない」とした回答者は34.4%であった(図表6)。つまり、残りの65.6%が何らかの交通ルールを「守れていなかったかもしれない」と自己認識している。
「守れていなかったかもしれない」交通ルールで最も回答が多かったものが「車道の左側通行」で23.8%であった。電動キックボードで車道の右側を通行することは通行区分違反とされる。「二段階右折」(18.0%)と「飲酒運転の禁止」(17.4%)がそれに続く。


本調査では、電動キックボードの運転中に危険を感じたことはあるかどうかについて聞いた。回答者の58.8%が「ある」としている(図表7)。


図表8は電動キックボードの運転中に危険を感じたことがあるとした回答者に、具体的にどのような危険があったのかについて聞いた結果である。最も回答が多かったのが「自動車と接触しそうになった」で、47.3%であった。「歩行者と接触しそうになった」が29.9%と3番目に多かったが、これは、回答者が電動キックボードで歩道を通行した結果であることが推測される。
電動キックボードによる歩道通行は、「普通自転車等及び歩行者等専用」の道路標識が設置されている歩道に限られる。加えて、歩道を通行するときは、歩行者優先で、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければならない。


本調査の回答者はシェアリングサービスの利用経験者であるが、すでにその利用を停止した回答者が5.4%であった(図表9)。継続利用の意向については、「そう思わない」と「あまりそう思わない」の合計が18.0%であった。回答者の23.4%がシェアリングサービスの継続利用に否定的、あるいは既に継続利用を停止したことになる。


図表10はシェアリングサービスの利用を停止した回答者、および継続利用の意向について「そう思わない」と「あまりそう思わない」とした回答者にその理由を聞いた結果である。「電動キックボード自体が危険」(39.3%)、「必要性を感じない」(35.0%)が上位を占めた。


ここでは、図表6「ご自身が電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか」の結果について、運転頻度別の集計を行った(図表11)。その結果、運転頻度が「月に1回未満」の回答者の44.8%が「違反はしていない」と回答していることがわかった。
具体的な項目については、いずれも運転頻度が高い回答者ほど「守れていなかったかもしれない」という回答の割合が高くなる傾向が見られた。運転頻度が高くなるほど交通違反をしてしまう機会も増えるため、この相関関係は自然なものである。


ただし、図表12の結果のうち、運転頻度が高い回答者ほど「飲酒運転の禁止」が「守れていなかったかもしれない」の回答率が高い点は、無視できない。これは、ユーザーが電動キックボードを運転する頻度と飲酒運転との間に正の相関関係がある可能性を示している。
警察庁によれば、2025年1月から11月末までに発生した、電動キックボードを含む特定小型原動機付自転車が関わる飲酒事故は42件と、事故全体に占める割合は11.8%※4である。この飲酒事故率は、自転車の0.8%、一般原動機付自転車の0.6%と比べると10数倍となっている※5 。
※4)特定小型原動機付自転車関連事故に占める飲酒事故率は減少傾向にあるが、自転車、一般原動機付自転車と比較すると依然として高い水準であるとされている。
※5)また、警察庁は2025年上半期に発生した特定小型原動機付自転車の飲酒事故の62.1%が午前0時~5時の間に起きたとしている。図表1で示した電動キックボードの運転の目的として「終電後や飲食後の帰宅」が14.0%であった。これは、電動キックボードのシェアリングサービスの主な利用シーンの一つと考えられるが、飲酒運転が懸念される点でもある。
ここでは、図表6「ご自身が電動キックボードを運転された時に、守れていなかったかもしれないと思う交通ルールは何ですか」の結果について、電動キックボードに係る交通ルールの理解度別に集計を行った(図表12)。その結果、電動キックボードに係る交通ルールの理解度と「守れていなかったかもしれない」交通ルールの回答割合との間に相関関係は見られなかった ※6。
なお、交通ルールを「詳しく知っている」とする回答者の4人に1人が「飲酒運転の禁止」と「車道の左側通行」について「守れていなかったかもしれない」と回答している。
※6)ルールを詳しく理解しているとした回答者の一定数が交通ルールを「守れていなかったかもしれない」としていることは指摘しておきたい。


わが国の電動キックボードユーザーの意識やその運転の実態を把握すべく、MS&ADインターリスク総研は2026年1月にシェアリングサービスの利用経験者500人に対してアンケート調査を実施した。その結果、回答者の95%が運転免許を保有し、87.8%が電動キックボードに関する交通ルールを知っており、84.8%が他のユーザーと比べて電動キックボードを安全に運転できていると回答した。
一方で、回答者の65.6%が電動キックボード運転時に何らかの交通ルールを「守れていなかったかもしれない」と回答している。特に、「週に2~3回以上」電動キックボードを運転する回答者の36.2%、電動キックボードに関する交通ルールを「詳しく知っている」回答者の26.2%が「飲酒運転の禁止」を「守れていなかったかもしれない」と回答している点は無視できない。
ユーザーの増加に伴い交通違反の増加が懸念される一方、2025年8月にシェアリングサービス事業者らを中心に発足した日本マイクロモビリティ協会は、ユーザーへの交通ルール周知や飲酒運転対策に取り組んでいる。特に飲酒運転対策としては、深夜帯のサービス停止やポートでのアルコール検査の実証実験などが行われており、これらの取り組みの成果が期待される。
本稿が電動キックボード安全運転促進の一助となれば幸いである。
【参考文献】
警察庁(2025)『パーソナルモビリティ安全利用官民協議会第12回資料3』
警察庁(2025)『事務局説明資料 第13回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁(2026)『事務局説明資料 第14回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁『特定小型原動機付自転車に関する主な交通ルールについて』
日本マイクロモビリティ協会(2025)『日本マイクロモビリティ協会安全対策について』
¥0
食品安全・衛生の“相談窓口”の使い方 「こんなこと聞いていいのかな?」をなくしたい
¥0
食品ラベルの表示ミス・印字ミスを「人の注意」だけに頼らないために確認したい3つのポイントは?
¥0
HACCPが「書類作業」になっていませんか?―中小食品工場で見直したい3つのポイントとは?
¥0
食品事故やクレームの再発防止に向けた3つのポイントとは?
¥0
【終了】<実践!健康経営セミナー>健康経営戦略マップの策定・見直しと活用のポイント
¥0
日本発のウェルビーイングISOガイドライン認定 ~ISO 25554:2024に準拠した第三者認定制度の概要と今後の見通し~【人的資本・健康経営インフォメーション(2026年2月)】
¥0
CSO(最高サステナビリティ責任者)設置企業の取組を紹介!フロントランナーはいかに社内外に自社の取組を浸透させているのか?
ーー今回、10社のCSO・サステナビリティ部門責任者に取材をしてみて、皆さまのキャリアに共通項はありましたか?
石川)実は共通項はありませんでした。あえて言うとすれば、「サステナビリティ一筋」のキャリアではないという点で、共通していました。
| 食品・ライフサイエンス・消費財 | |
|---|---|
| ・キリンホールディングス株式会社 | ・味の素株式会社 |
| ・株式会社コーセー | |
| 流通・小売 | |
| ・J.フロント リテイリング株式会社 | |
| 環境ビジネス | |
| ・株式会社フェイガー | |
| 総合技術・製造業 | |
| ・株式会社 日立製作所 | ・帝人株式会社 |
| ・株式会社レゾナック・ホールディングス | ・株式会社リコー |
| 金融サービス | |
| ・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 | |
| 食品・ライフサイエンス・消費財 | |
|---|---|
| ・キリンホールディングス株式会社 ・味の素株式会社 ・株式会社コーセー | |
| 流通・小売 | |
| ・J.フロント リテイリング株式会社 | |
| 環境ビジネス | |
| ・株式会社フェイガー | |
| 総合技術・製造業 | |
| ・株式会社 日立製作所 ・帝人株式会社 ・株式会社レゾナック・ホールディングス ・株式会社リコー | |
| 金融サービス | |
| ・MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社 | |
話を伺った皆さまの中には、人事や法務部門を経験された方や企業統治に関わった方など、それぞれ自分の強みを持ちながら、サステナビリティに興味・関心を持ってCSOのキャリアに至っていました。
なぜ、それぞれ多様なキャリアをお持ちなのかを考えると、もちろんサステナビリティの歴史の浅さというのもありますが、担当する分野がESGの領域、特に環境(Environment)や社会(Social)といった形で、多岐に渡っていることもあると思います。
中には、「“サステナビリティ一筋”というのは、サステナビリティ人材として望ましくない」と話す方もいて、サステナビリティが事業戦略の中心に位置づけられるようになると、サステナビリティという言葉からイメージされやすい「環境」だけでなく「ビジネス」そのものにも精通していることが重要なのかもしれません。
ーー取材したCSOの皆さまを通じて、CSOに求められる役割についてどのように考えていますか?
石川)「仲間づくり」というのが1つのキーワードかと考えています。トップダウンで組織を動かす力も当然必要なのですが、ボトムアップで事業部門を動かすことも同じくらい重要なのではないかと感じました。
コーセーさまの場合ですと、サステナビリティの部署には研究・商品開発、美容教育、生産技術、販売員、企画、営業など様々な部署出身のメンバーがいるそうです。それぞれのメンバーが元の部署とのパイプを活かし、少しずつ働きかけて理解を得られるようになっているとのことでした。
また、J.フロント リテイリングさまは、サステナビリティの取り組みのKPIや進捗情報をレポートで開示する際に、一方的に他部署にデータや情報の提供を求めると、“やらされ感”が出たり、サステナビリティ部門が“自分たちの都合”で情報収集していると思われたりしてしまうことから、“壁”を壊すために対話と相互理解を重視していると話していました。
このように、CSOやサステナビリティ部門には、他部署や現場を巻き込んで「仲間づくり」をしていく熱量が必要だと考えています。
ーーJ.フロント リテイリングさまは、相互理解を深めるために、具体的にどのようなことに取り組んでいるのでしょうか?
石川)J.フロント リテイリングさまは、現場でサステナビリティの取り組みを「自分事化」してもらうためのひとつの工夫として、次のような取り組みをしています。同社では、2024年度、会社が事業を通じて社会に提供したい3つの共創価値(感動共創・地域共栄・環境共生)を定め、それらに基づく新たなマテリアリティ(重要課題)を従業員が自分を主語として考えられるように、「アクション型」の表現に変更したということです。


出典:J.フロント リテイリング株式会社「サステナビリティレポート2436」
(https://www.j-front-retailing.com/ir/library/pdf/sustainability/2024/J_FRONT_2024_J.pdf)
ウェルビーイングやカーボンニュートラルという言葉ではなく「くらしにワクワクをプラスする」「環境と共に生きる社会をつくる」といった言葉で表現することで、自分に引き付けて考えられるようにする工夫をされているとのことでした。この取り組みは、個人的にとても印象に残っています。
ーー社外に向けてサステナビリティの取り組みを開示する際には、今後、これまで以上に財務的な価値を定量的に示すことが求められるようになります。この点に関して、参考となる取り組みはありましたか?
石川)実名で掲載させていただいた企業のほかに、ヘルスケア事業などを展開しているメーカーにも話を伺うことができました。このメーカーでは自社のKPIに血圧計の売り上げを設定していました。
その理由は、同社がサステナビリティ領域におけるマテリアリティの目標の中で掲げている健康寿命に関する課題解決を実現するために、個人の健康状態を判断することができる血圧計を販売するというロジックでした。健康寿命にどれだけ貢献できたかを、血圧計の販売台数で“見える化”しようとしているわけですね。
このように、自社が取り組む社会課題の解決に向けて、自社が取り扱う製品の販売台数をKPIに設定するのも、1つの選択肢となりえます。
同社のケースは、わかりやすい例ではありますが、サステナビリティの取り組みを社外に開示するにあたっては、社内のデータを吸い上げる必要が出てきます。ここでも、日ごろから「仲間づくり」を進めていくことが、やはり重要になってくると思います。
ーー開示という面では、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションも重要になってくると思いますが、取材した企業ではどのような取り組みをしているのでしょうか?
石川)2社の取り組みを紹介させていただきます。
まず、レゾナック・ホールディングさまの場合は、サステナビリティの取り組みの現在地と目指すところを社内外のステークホルダーに発信する際に、より身近に感じてもらえるように「リアルを伝える」ことを心掛けていると話していました。そのために、統合報告書では「顔が見える」リアル感を大切にしているということです。


出典:株式会社レゾナック・ホールディングス「RESONAC REPORT 2025(統合報告書)」(https://www.resonac.com/jp/sustainability/report/report.html)
また、帝人さまはインタビューの中で、投資家からのESG関連のつっこんだ質問にも対応できるよう、IR部門から依頼された投資家面談には、サステナビリティ部門責任者がすべて同席していると話していました。加えて、サステナビリティへの関心が高い投資家と自社のCEOやCFOが面談する場合にも、サステナビリティ分野担当の役員も同席するということでした。
ーーCSOを設置している企業は、サステナビリティを経営の中心に据えて“攻め”の姿勢で取り組みを推進しているのが印象的だと感じました。
石川)いずれの企業も「サステナビリティは、単に企業のイメージアップということにとどまらず、企業が“選ばれる理由”に直接的につながるもの」という認識だと感じました。
例えば、カーボンクレジットの生成と販売を行っているフェイガーさまは、「(事業や人事・財務に)余裕のある企業であれば積極的なブランディングなど“攻め”の側面を意識できる体制を整えていくことが望ましいのではないか」と話していました。
また、サステナビリティは世界的に実現可能なルールを作ろうとしている段階なので、プレーヤーとして「ルールメイク」に関わることができるのも、サステナビリティ担当の面白いところだとも話していました。
その意味では、近年のサステナビリティは「社会にとって良いことをして評価されるための活動」というよりも「企業が価値を創造していくための必須の経営戦略」に位置づけられるのではないかと考えています。
今回の書籍には、サステナビリティにおけるフロントランナーとも言える企業でCSO・サステナビリティ部門責任者を務める方たちの貴重な生の声が掲載されていますので、サステナビリティに関わる方、これから関わろうとしている方にとって、得られるものが非常に多いのではないかと考えています。
(本インタビューは、2026年1月23日に実施されたものです)
この記事で取り上げた書籍『CSOと拓くサステナビリティ経営 価値創造の現場』(経済法令研究会刊)は、発行元の経済法令研究会のサイトでご購入いただけます。
ご購入をご希望の方は、下の「購入する」ボタンをクリックしてください。

¥0
【視聴無料・アーカイブ配信中】サプライチェーン人権リスクを“見える化”する ― 欧米規制対応と調査型デューデリジェンスの実務
¥0
「年収の壁」をわかりやすく解説。再度の引き上げでどう変わる?
¥0
なぜCSO(最高サステナビリティ責任者)という役職が求められるようになってきているのか? 京都大学経営管理大学院 加藤晃特命教授に聞く
ーーそもそもの話になりますが、企業はなぜサステナビリティに取り組む必要があるのかという点から、教えてもらえますか?
加藤)背景には2つのことがあると考えています。1つめは、企業も社会の一員であり、環境問題や社会問題の解決に貢献することで対価や利益を得るべきだという考え方の広まりです。これは「倫理資本主義」と言われたりして、ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルやノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・E・スティグリッツが提唱しています。
もう1つは、制度上の変化に合わせて対応を迫られるようになってきている点です。いわゆるコンプライアンス対応です。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)は、2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際的な約束で、2015年の国連サミットで採択されました。これを受けて、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が、企業がESG・サステナビリティに関する情報を開示する際のルールを作り、日本ではSSBJ(サステナビリティ基準委員会)が2025年3月に新しい基準を公表しました。これによって、新たな法規制・制度ができたりして、企業は対応していく必要が出てくるわけです。
京都大学 経営管理大学院 加藤晃 特命教授
貿易商社、AIU保険会社、愛知産業大学、東京理科大学大学院経営学研究科技術経営専攻教授を経て、2025年から同大学嘱託教授。情報開示/経営戦略、サステナブルファイナンスが専門分野。
日本では大企業を中心に、こうした状況に対して危機感を持って取り組んでいると思いますが、中堅中小企業は、まだまだ“自分事”として考えられていない所も多いのではないでしょうか。私は中堅中小企業こそ、危機感を持つべきだと考えています。
なぜかというと、サプライチェーンでものを考えたときに、例えば自動車産業であれば、自動車メーカーが完成車を作るわけですが、部品は部品メーカーに依頼して製造し、その部品メーカーも自社内で製造が完結することはなくて、全体としては大きなピラミッド構造になっているわけです。
このため、自動車メーカーが温室効果ガスの排出量を算定して情報開示しようとすると、自社に加えてサプライチェーン全体の排出量を把握する必要があります。つまり、サプライチェーンを構成する中堅中小企業も、排出量の算定一つとってみてもサステナビリティの取り組みは、決して“他人事”ではないんですね。
もし、自動車メーカーからの求めに応じて、サステナビリティの取り組みに関する情報を適切に開示できないようであれば、サプライチェーンから外されることもありえます。中堅中小企業こそ危機感を持って取り組むべき経営課題だと考えています。
ーー本題のCSOというポジションについてですが、どのような役割を担う立場だと考えていますか。
加藤)CSOは、環境問題に責任を持つ立場のイメージが強いかと思いますが、ESGの視点では、環境(Environment)だけでなく、社会(Social)も所管しています。ガバナンス(Governance)は、直接統括する責任者ではありませんが、EとSを実現するためにはGの設計・運用に関与する必要があります。CSOは、広い領域をカバーする中核人材・リーダーなんですね。
実際に何をやるかというと、サステナビリティの取り組みに関して、社内外でコミュニケーションをして、理解・共感してもらい、サポートを得て実現していく役割を担っています。
CSOは、CEOやCFOなどと同じCxO(Chief x Officer)に位置づけられる、いわゆる役員に相当する立場で、企業を実際に動かし、企業文化を変革するぐらいの相当パワーのある人でないと務まらないのではないかと思っています。ただし、職位・職名は企業によって様々です。
ーー日本では、CSOを置く企業は増えてきているのですか?
加藤)日本監査役協会が2023年に実施したアンケート※2によると、557社のうちプライム市場を中心に36.6%にあたる204社がCSOを設置していると回答しています。日本の企業全体で見ればごく一部にとどまっているというのが現状だと思います。
※2 日本監査役協会「サステナビリティの取組みについてのアンケート調査(第2回)の集計結果」
ーー企業にとって、サステナビリティ取り組みの推進が求められるトレンドが続くとすると、徐々にCSOを設置する企業は増えていく傾向になっていくかと思いますが、こうしたポジションがどうして求められるようになってきているのですか?
加藤)サステナビリティという分野がカバーする範囲があまりに広いということが挙げられます。環境問題一つとっても、脱炭素だけではありません。生物多様性、砂漠化の問題もあります。社会問題であれば、貧困、性差別、人権問題、児童労働などまで含まれます。
CSOを置かなくても、企業の各事業部門の長が担当を兼ねればいいのではないかという議論もあり得るのですが、環境問題や社会問題だけでもこれだけの範囲なのに、さらに広範な課題まで考慮すると、現実問題として、事業部門の長が兼務で担うのは難しいと思います。
ーーそれだけ広い範囲を担当する責任者としてのCSOには、どのようなことが期待されているのでしょうか?
加藤)企業は、理念、ミッション、ビジョンを掲げて、その下に実際に実行するための具体的な戦略を策定するわけですが、この戦略の中にサステナビリティという概念を入れ込まないと全社的な動きにはなりません。
入れ込むためには、CEOやCFOといった立場の人たちとよく話して、その必要性を理解してもらい、トップのコミットメントとサポートを得なければなりません。そして、概念を戦略の中に入れ込むことができたら、今度は、各現場に落とし込んでいかなければなりません。つまり、実務的なカスケードダウンです。
年初に1回、社長があいさつで触れただけで、現場が動くほど企業という組織は甘くありません。社員とコミュニケーションを取りながら、一人ひとりに理解してもらわないと、現場は動きません。もっと言えば、人事制度などにも落とし込んでいく必要もあります。
そして社内だけでなくて、社外には株主もいますし、サプライチェーンで考えると自社に部品などを納入してくれる企業がサステナビリティに対する考え方を理解してくれないと、実現できません。
そのためには、社内外のステークホルダーにも自社のサステナビリティの取り組みに共感してもらい、実際に動いてもらわなければなりません。だからこそ、CSOには「巻き込む力」が求められると考えています。


ーーCSOというポジションを置く企業と、そうでない企業ではどのような差が生じてくると考えていますか?
加藤)CSOというポジションが日本企業において十分に浸透しているわけではないので、確定的なことは言えませんが、サステナビリティの取り組みを推進する“スピード感”が違ってくると考えています。
事業部門ごとにサステナビリティを推進した場合、どうしても取り組みにばらつきが出てきてしまいますが、CSOがいることで統一感を持って社内を動かすことが可能になります。経営資源を集中的に投じることができるようになれば、スピード感だけでなくクオリティも変わってくると思います。
ーーサステナビリティが扱う内容が非常に広範に及ぶ中で、企業・CSOはどのように優先順位を付けて取り組む必要があるのでしょうか?
加藤)結論から言えば、業種によって全く異なってくるだろうと思います。例えば鉄鋼業界や運輸業界は、二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスを排出していますから、まずはそこを重点的に取り組む必要があると考えられます。
一方、労働集約型の産業であれば、現地で労働者を低賃金で雇用するなどの人権問題にフォーカスする必要があるかもしれません。
また、それぞれのサステナビリティの課題が、自社の売上、コスト、ブランド、リスク管理にどれだけ影響するのかという観点も重要です。
ーーCSOにはどのようなスキルセットが求められると考えていますか?
加藤)繰り返しになりますが、CSOが担う分野はあまりにも範囲が広いんですね。サステナビリティ情報を開示するにあたっては、広報的な知識も必要ですが、財務会計やマーケティングの知識も必須です。場合によっては、技術系のことも知らなければなりませんし、経営戦略もわかってなければなりません。ある意味では「スーパーパーソン」と言えるかもしれません。
一方で、実際に日本でCSOを務めている人の話を聞いてみると、それぞれいろんなキャリアをお持ちで、専門分野を持ちつつ、不十分な分野については勉強をされているようです。そうした意味では、知識面ではビジネススクールの基礎科目ぐらいのことは知ったうえで、自分の得意分野をベースにして広げていくイメージだと思います。
そして、それ以上に重要なスキルは、コミュニケーション力、巻き込む力だと考えています。自分の考えを伝えて共感してもらい、実際に動いてもらえるかどうか。そこが非常に重要な部分だと思います。
ーー『CSOと拓くサステナビリティ経営 価値創造の現場』が出版されます。CSOの設置を検討している企業や、サステナビリティを担当している読者の皆さまには、この本を通じてどのような学びを得てもらいたいと考えていますか?
加藤)サステナビリティの分野はまだまだ新しく、CSOを担える人材を育成する大学の学部もありませんし、企業の中でも戦略的に人材を育成しているようなケースも少ないと思います。
そうなると、CSOの設置を考えた際には、適切な人材が社内に見当たらない場合には社外から採用する必要があります。これは、時間で専門性を買うという面からすると必要なことですが、長い目で見ると、社内でも人材を育てていかなければなりません。
書籍の中の「実践編」では、金融サービス、食品・ライフサイエンス・消費財、流通・小売、環境ビジネス、総合技術・製造業という業種から10社のCSO・サステナビリティ部門の責任者のインタビューも掲載しています。
それぞれの責任者が、どういうことを考え、どのような工夫をしているのか。そして、どうアプローチしているのかといった生の声を知ることができる貴重な機会だと思います。成功だけでなく、失敗を含む具体的なエピソードのほか、CSOに必要な知識・スキル、獲得・育成の方法、サステナビリティ部署のあり方など多彩なトピックスに触れています。
CSOの設置を検討している企業、CSOを志す人、サステナビリティ部門の一員としてCSOと働く人たちに役立てていただければと思う次第です。
(本インタビューは、2026年1月23日に実施されたものです)
この記事で取り上げた書籍『CSOと拓くサステナビリティ経営 価値創造の現場』(経済法令研究会刊)は、発行元の経済法令研究会のサイトでご購入いただけます。
ご購入をご希望の方は、下の「購入する」ボタンをクリックしてください。

¥0
【終了】<アーカイブ配信中~2/27まで>労働災害防止への「組織安全」の活用策 ~さらなる労働災害の防止に向けた施策展開へのヒント~
¥0
GX排出量取引制度(GX-ETS)の排出枠割り当て指針等、詳細ルールを公表 -経産省-
¥0
【視聴無料・アーカイブ配信】人権デューデリジェンス規制で問われる企業の責任 ~海外デューデリジェンスの実務とツール活用~
¥0
【終了】<実践!健康経営セミナー>健康経営の推進と認定対応のキホン
¥0
【終了】<2/25オンラインセミナー開催>CSOと拓くサステナビリティ経営 ~価値創造の現場を国内先進企業に学ぶ~
¥0
雪害リスクおよびその対策【災害リスク情報(2026年2月)】
¥0
ESGリスクトピックス(2026年2月)
¥0