MS&ADインシュアランスグループ リスクマネジメント情報誌 【RMFOCUS 第97号】
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COP30の要点と現地参加者の声―「ネイチャーCOP」の現場から
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【お客さま事例】脱炭素を自分事として体験できるビジネスカードゲーム研修とは?1人の行動がみんなの未来を変える
MS&ADインターリスク総研(以下、当社)が研修で使っているカードは、株式会社プロジェクトデザインがビジネスゲーム用に開発したものです。当社は公認ファシリテーターとして、脱炭素を推進しようと取り組んでいるお客さま向けに、研修メニューのひとつとして提供しています。


出典:株式会社プロジェクトデザイン
このカードゲームの特長は、複数のチームが“1つの社会”を動かすシミュレーションゲームだという点です。
各チームには、住宅メーカー、電力会社、自動車メーカー、金融機関、政府、環境NPOといった異なる目的や資源を持つ役割が割り当てられ、チームが経済活動をすると温室効果ガス(以下、GHG)が排出されて、社会全体に影響する仕組みになっています。


出典:株式会社プロジェクトデザイン
また、それぞれのチームは割り当てられた企業や団体としての役割を担うとともに、同時にその社会で暮らす市民の立場としてもアクションを行える仕様になっています。
例えば、あるチームが経済価値だけを優先して環境を置き去りにすると、社会全体の環境が悪化してしまうので、市民として省エネに取り組むことで、排出されるGHGの抑制につなげることができます。
こうしたゲームの世界観は、「カーボンマップ」というボードを使って排出されたGHGが赤や黄色のマグネットの数で“見える化”されて、視覚的に理解できるように工夫されています。


その上で、再エネ投資、省エネ施策、新技術導入、市民啓発、インフラ整備、規制・補助金などの「アクションカード」を使って、経済価値(チームの役割目標)の実現と社会全体で排出されるGHGの抑制の両立を目指します。
このカードゲームを使った研修を実施したのは、静岡県の浜松いわた信用金庫さまです。
同金庫さまでは、気候変動対策などの社会課題の解決と、お客さまの脱炭素経営をサポートし、企業価値向上と持続可能な社会の実現を目指す企業活動に融資をする『サステナブルファイナンス』を提供しています。
こうしたことを踏まえて、同金庫さまでは、営業担当の職員の脱炭素に関する知識と理解を高めることを目指し、2025年12月から翌年3月までに3回にわたって、脱炭素の基礎知識から脱炭素経営の実践までを学べる研修を実施しました。
カードゲームは、1月26日に開催した2回目の研修で用いられ、営業担当の職員54名が浜松市にある本店に集まり、12チームに分かれてゲームをスタートしました。


ゲームでは、はじめに当社のファシリテーターが「わたしたちの世界で起こっていること」と題して、排出されるGHGの増加によって、風水害や森林火災などが増加していることや、農作物や海産物の生育地に変化が出ていることなどを説明しました。
その上で、各チームに配布された「ゴールカード」に書かれた目標を実現するために、資金を使ってアクションすることで(アクションカードをファシリテーターに提出することで)、目標達成を目指すというルールを説明しました。


初期資金4,000Mを15,000M以上にすることがこのカードを持っているチームの目標となる
各チームには、「組織のアクションカード」と「市民のアクションカード」が8枚ずつ配られ、5年間を1つのターン(行動単位)としてあわせて4ターンを実施して、20年後の未来をシミュレーションすることを目指してスタート。


全チーム合わせて60,000Mという資金を持ってゲームをスタート(「M」はゲーム上の資金単位)。各チームは、1ターンごとに組織や市民のアクションカードをファシリテーターに渡してリザルトカードを受け取ることで、所持資金は下の画像のように変動していきました。


所持資金が増えたチームもあれば、減るチームもある
この日のゲームでは、当初60,000Mだったチーム全体の資金は、96,500Mに増加しました。
一方で、大気中のGHGは初期値の82からゲーム終了時には101へと増加したものの、3ターン目以降、各チームが積極的に「政府による炭素税導入」や「市民によるEV購入」などの行動を取ることで、4ターン目には前のターンより2%近く大気中のGHGを削減することができました。


チームの多くは当初、それぞれのチームの中だけで議論をしてプレーしていましたが、ゲームが進むにつれて、所属チームは違っても市民として共通の目標に向けて連携すると、排出されるGHGを効果的に抑制できることなどを理解できるようになり、積極的にほかのチームとコミュニケーションを取るようになっていきました。


今回の研修を企画した浜松いわた信用金庫さまのソリューション支援部地域活性課で次長を務める乗松健悟さんは、カードゲームを使った研修に取り組んでみた感想について、次のように話していました。
「『サステナブルファイナンス』を提案するにあたっては、まずは当金庫の職員自身が脱炭素に関して十分に理解を深めておく必要があり、その上で、お客さまの課題を自分事として捉えてほしいという課題を持っていた中で、今回、主体的に取り組むことができるカードゲームを使った研修を実施しました。
参加者の様子からは、経済的な利益の追求と排出されるGHGの抑制のバランスを自ら考えて意思決定しようと取り組んでいることが感じられました。まずは、こうしたゲームを通じて脱炭素を身近に感じてもらい、ゆくゆくはお客さまに説得力を持って融資商品を提案できるようにしていきたいと考えています」


カードゲームを使った脱炭素研修は、座学による説明だけでは得られない「意思決定」と「協働」の重要性を、参加者自身が体験して理解できる内容となっていて、次のような効果が期待できます。
MS&ADインターリスク総研では、今回ご紹介したカードゲームも含めて様々な研修メニューをご用意しており、脱炭素の取組を推進したいと考えている皆さまの状況に合わせ、カスタマイズした研修をご提供します。
実施規模や目的に合わせたプランをご提案しますので、詳細やお見積りのご希望は以下のフォームからご連絡ください。
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ESGリスクトピックス(2026年3月)
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脱炭素経営が中小企業のブランド価値を高める時代へ 脱炭素と自社ブランディングを結びつける実践事例
日本政府は2050年のカーボンニュートラルを目標に掲げ、企業活動全体で温室効果ガスを削減するよう求めています。特に近年は、単に自社の排出量を減らすだけでなく、サプライチェーン全体での脱炭素対応が重視されるようになりました。これは、大企業だけでなく、その取引先である中小企業にも対応が求められることを意味します。

こうした流れの中で、脱炭素経営は次のようなブランド価値を生み出します。
重要なのは、脱炭素を「義務」や「コスト」として捉えるのではなく、企業の姿勢・価値観を表現する手段、つまりブランディングの要素として活用することです。
それでは実際に、脱炭素経営をブランド価値に結びつけている中小企業の事例を見ていきましょう。
この販売会社は、リユース可能なトナーカートリッジ部材販売を中心に、脱炭素経営を進めています。もともとSDGsを企業理念として掲げていましたが、温室効果ガス排出量の算定や削減目標の設定、再生可能エネルギー導入などを通じて「脱炭素経営そのものを企業価値にする」取組を加速させています。
また、同社は、自社製品の環境負荷を可視化するため、CFP(カーボンフットプリント)※1の算定に取り組んでいます。
※1 CFP(カーボンフットプリント):製品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに⾄るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2排出量に換算し、製品に表⽰された数値もしくはそれを表⽰する仕組み。(参照元:経済産業省、環境省「カーボンフットプリント ガイドライン」)
「環境にやさしい製品」という抽象的な表現にとどまらず、原材料調達から製造、輸送、廃棄までのライフサイクル全体で排出されるCO₂量を数値として示すことで、取引先に対して客観的な説明を可能にしました。この取組は、次の点でブランディングにつながっています。
その結果、BtoCのみならずBtoB分野においても、環境対応に積極的な企業というブランドイメージを確立しています。CFPの活用は、科学的根拠を持った脱炭素ブランディングの有効な手法といえます。
同社の事例は、脱炭素を「特別な商品」ではなく、企業そのものの姿勢としてブランド化するモデルといえるでしょう。
この造船会社は、内航船を中心とした船舶建造を行う造船企業です。同社は、海運業界全体の脱炭素化という大きな課題に対し、「ゼロエミッション船」の開発という形で挑戦しています。
従来、船舶は大量の燃料を消費し、CO₂排出量が多い産業分野の一つとされてきました。同社はこの課題に対し、電動化や省エネ技術の導入、環境負荷の少ない素材の活用など、複合的な技術開発を進めています。

この取組は、単なる環境対応にとどまらず、次のようなブランド価値を生み出しています。
また、地域社会に対しても「脱炭素産業の拠点」という新たな価値を提示し、地域ブランドの向上にも貢献しています。この事例は、BtoB分野において脱炭素・技術革新・競争力強化を実現している好例といえます。
この酒造会社は、中国地方で酒類製造を行う地域密着型の酒蔵です。同社は、自社の温室効果ガス排出量を把握したうえで、再生可能エネルギー電力への切替や設備更新による省エネ化など、段階的な脱炭素施策に取り組んでいます。
酒造業は地域文化や伝統と深く結びついた産業です。同社は、こうした背景を活かしながら、次のような点をメッセージとして発信しています。
この取組により、単なる「地酒」ではなく以下のような付加価値が生まれています。
同社の事例は、BtoC分野において脱炭素を「共感の物語」に転換したブランディングモデルといえるでしょう。
今回紹介した3社の事例から見えてくる共通点は、脱炭素経営を単なる省エネ対策に終わらせず、次のような「企業価値」として再構築している点です。
このように脱炭素経営は「守り」の施策ではなく、「攻め」のブランディング戦略になり得ます。特に中小企業は、経営者の思いや地域性、独自技術と結びつけることで、大企業にはない強い物語をつくることも可能です。
これからの時代、企業が選ばれる理由は「価格」や「品質」だけではなく、「どのような未来を目指しているか」にも広がっていきます。脱炭素経営は、その問いに対する一つの答えと言えるものです。
脱炭素経営は、取組方次第で企業のブランド価値を大きく高める可能性を秘めています。しかし、「どこから始めればよいのか」「自社の強みとどう結びつけるのか」で悩まれる企業も少なくありません。
MS&ADインターリスク総研では、温室効果ガス排出量の計測・削減計画策定支援などの脱炭素経営の導入支援から、商品・サービスのブランディングに最適なCFP、LCA※2を基本としたライフサイクル全般の評価を行っておりますので、お気軽にご相談を頂ければ幸いです。
※2 LCA:Life cycle assessmentの略称。製品のライフサイクル(資源採取-原料生産-製品生産-流通・消費-廃棄・リサイクル)を通じた環境負荷を把握・評価する活動のこと。評価対象は温室効果ガス、大気汚染、生物/人間への毒性、土地利用転換、資源枯渇など。
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WBCSDなどが循環経済の国際的プロトコルを公表、気候・自然開示枠組みと連動を志向
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GX排出量取引制度(GX-ETS)の排出枠割り当て指針等、詳細ルールを公表 -経産省-
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ESGリスクトピックス(2026年2月)
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建築物のライフサイクルカーボン(LCCO2)算定・評価を促進する制度のポイントは?
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【お客さま事例】地域の企業が脱炭素経営を“実践”できる仕組みを作る 中小企業向けに「脱炭素経営ワークショップ」を実施(主催:佐賀県/受託実施:温暖化防止ネット)
ーー松尾様が事務局長を務めるNPO法人温暖化防止ネットについて教えてください。
松尾)私たち温暖化防止ネットは、温暖化対策を推進する法律に基づいて、佐賀県の「地球温暖化防止活動推進センター」に指定されています。環境省が進めている「デコ活※1」という脱炭素につながる“新しい豊かな暮らし”を拡げていく取り組みの推進役として地域で活動しています。


NPO法人温暖化防止ネット 松尾真理子事務局長
具体的には、県民の皆さまが省エネ・脱炭素につながる製品やサービスを無理なく選べるように後押しをしたり、企業の皆さまに対して、脱炭素経営が進むように支援を行ったりしています。
※1 デコ活…「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」の愛称であり、二酸化炭素(CO₂)を減らす(DE)脱炭素(Decarbonization)と、環境に良いエコ(Eco)を含む"デコ"と活動・生活を組み合わせた新しい言葉。引用元:環境省デコ活Webサイト
ーー県内企業の脱炭素に向けた取り組みの現状を、どのように見ていますか?
松尾)「脱炭素経営」を軸にお話をさせていただくと、行政側としては、企業が脱炭素に対応できないと県内産業が将来的に競争力を維持・発展できなくなるという危機感を持っていて、企業支援や情報発信に力を入れていると感じています。
一方で、佐賀県の産業の大半を占める小規模事業者を含めた中小企業では、脱炭素の必要性は認識していても、具体的な取り組みに踏み出せていない企業が多い状況だと感じています。


佐賀市中心部(画像:stock.adobe.com)
例えば、大企業との取引がある企業では、取引先から脱炭素に関するアンケートの依頼を受けるなどのきっかけで、近い将来に温室効果ガスの排出量算定に取り組まなければいけないという認識はあるものの、具体的にどの程度の取り組みの水準が求められていて、いつまでに対応すべきなのかなどが見えていないため、取引先の出方を待っているという状況が見受けられます。
また、行政機関と取引のある企業では、行政主催の脱炭素に関するセミナーに参加しているものの、脱炭素経営に関心があるから参加しているというよりは、取引先としての行政機関との関係を維持したいという考えから参加している面もあるように思います。
ただ、脱炭素に関する関心は確実に高まっていると感じています。事業者向けに脱炭素経営の推進に取り組み始めたのが4、5年前くらいになるのですが、その頃は、行政主催でセミナーを開催しても2、30人集めるのにも苦労しました。現在は、行政や金融機関、商工団体などのご協力も得て、参加者が150人を超える状況です。
参加者からは、企業の取り組み例をもっと知りたい、こういったセミナーを定期的に開催してほしいといった意欲的な声が聞かれます。
今は、すでに温室効果ガスの排出量削減の取り組みが根付いている企業も一定数あり、企業ごとに取り組みのステージに差が出てきていると感じています。
ーーそうした県内の現状に対して、温暖化防止ネット様として脱炭素を推進していく上でどのような課題を感じていますか?
松尾)課題は大きく3つあると考えています。


まず1つ目は、社内体制と実務の面でのハードルがあります。佐賀県内の企業はほとんどが小規模事業者を含めた中小企業ですので、温室効果ガスの排出量算定に必要なデータの取得や、削減計画を実行する担当者の確保が難しかったり、担当者がいたとしてもノウハウが不足していたりする現状にあります。
2つ目は、外部の専門機関をうまく活用することができていないことが挙げられます。専門家の支援を受けたいと思っていても、どこに相談したらよいかわからないといった課題感を持っていたり、コスト負担がネックになったりして、小規模な事業者ほど適切な支援を受けられていないと思っています。
そして3つ目の課題は、社会的な要請や制度の変化への備えに関してです。2027年3月期から適用が開始されるSSBJ基準※2の影響もあり、今後は取引先から温室効果ガスの排出量算定や削減方針の提示を求められる場面が増えてくると考えています。一方で、県内の小規模事業者は、そうした外部環境への変化に十分に対応できていないのが現状です。
※2 SSBJ基準:「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が2025年3月に公表した、日本におけるサステナビリティ情報開示のための新しい基準
こうした課題は、企業訪問の際や、セミナー・ワークショップの参加者から聞かれる内容です。
ーー今挙げた3つの課題の解決に向けては、どのような取り組みを進めていますか?
松尾)現在、佐賀県は脱炭素経営に関して次の4つのステップで整理して取り組みを進めています。


脱炭素経営の4つのステップ「知る」「測る」「減らす」「開示する」
私たちも県からの受託事業では、この4つのステップを軸に脱炭素経営を推進しています。
具体的には、脱炭素経営の基本を学ぶセミナー(①知る)、温室効果ガス排出量を「測る」「減らす」ための演習型ワークショップ(②測る・③減らす)、県内の取り組み事例を共有・発信するセミナー(④開示に向けた学び)を組み合わせて実施しています。
特にワークショップでは、MS&ADインターリスク総研に講師を依頼し、こちらの狙い・要望に沿って内容を調整いただきながら、企業が実践に踏み出せるよう後押ししました。
ーーワークショップで脱炭素経営の実践を後押ししたいと考えた際に、どのような経緯でMS&ADインターリスク総研をパートナーに選んだのですか?
松尾)先ほどの4つのステップで取り組みを進めることを考えたとき、これまで実施してきたセミナーや先進企業の視察で「知る」というステップまでは、多くの企業が到達できていると感じていました。一方で、「測る」から先のステップにはまだまだ踏み出せていない現状にあります。
こうしたことを踏まえて、私たちは次のステップに踏み出す後押しをできるよう、「知る」ステップにあたるセミナーと、「測る」以降のステップとなるワークショップを組み合わせた企画を検討していました。
この企画を実現するためには、専門家のサポートも必要だと考えインターネットでいろいろ調べたのですが、思い描いていたような情報が出てきませんでした。
そこで、MS&ADインターリスク総研に相談したところ、私たちが希望するワークショップの講師を担っていただけることになりました。
ーー実際にワークショップを実施して、内容についてどう感じましたか?
松尾)今回のプログラムでは、MS&ADインターリスク総研に講師を務めていただき、2回のワークショップを実施しました。1回目のワークショップでは、温室効果ガスの排出量を測る方法を習得してもらい、2回目のワークショップで自社データを使って実際に測定して、削減計画を立ててもらいました。
実施してみて、温室効果ガスの排出量算定だけではなく、削減計画やロードマップの策定、それに社内の体制作りまで進めることができ、これまでにない手応えを感じました。
ーー参加した企業の皆さまからは、どのような感想がありましたか?
松尾)脱炭素に向けた目標をすでに設定していたある企業の担当者は、目標を実現するための具体的な取り組みにまで落とし込めていなかったということで、ワークショップで習得したことを踏まえて、目標達成に向けた取り組みをブラッシュアップして自社のホームページ上で公表して、対外的にアピールしたいと話されていました。


ワークショップの様子(画像提供:温暖化防止ネット)
また、省エネ・脱炭素に関連するサービスを扱う事業者からは、自社の実践を示しつつ、提案時に削減効果を見える形で示せるようになることで、提案の質が高まり導入促進につながる、という声がありました。
ほかにも、社内で脱炭素経営を促進する立場にあるという担当者は、「脱炭素の取り組みがどの程度効果があるのかを、どう伝えればよいかわからずにいたが、ワークショップを通して何をすればどのくらい効果があるのかを社員に伝えることができそうだ」と話されていて、社内で勉強会を開催したいとのことでした。
ーー今回のワークショップの内容について、事前にイメージされた内容よりよかったと感じた点や改善していくべき点などはありましたか?
松尾)今回のワークショップは、1回につき佐賀県内4ヵ所で実施したのですが、開催するごとにいろいろな気づきや反省点が出てきましたので、それを踏まえてその都度MS&ADインターリスク総研の担当者と打ち合わせをして、改善しながら進めていきました。その結果、回を重ねるごとに満足度が高まっていった印象です。
例えば、すでにエネルギー使用量や排出量に関するデータを持っている企業からは、エコアクション21※3や今回のGHGプロトコル※4など、提出先ごとに求められる様式が異なるため、書類作成の負担が大きいという声がありました。
そのため、今あるデータをどう活用して、GHGプロトコルに沿った形で区分・整理していくのかといった、実務面での支援が必要だと感じました。
こうしたケースにも対応できるよう、こちらから都度要望を共有し、MS&ADインターリスク総研には講師として一つひとつ丁寧に対応いただきました。
※3 エコアクション21:環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム(EMS)。パフォーマンスを継続的に改善する手法を基礎として、組織や事業者等が環境への取り組みを自主的に行うための方法を定めている。出典:エコアクション21中央事務局Webサイト
※4 GHGプロトコル:GHGの排出量を算定・報告するために定められた国際的な基準。引用元:経済産業省資源エネルギー庁Webサイト
ーー最後になりますが、今後、温暖化防止ネット様としては、地域の企業の脱炭素経営推進に関して、どのように取り組みを進めていきたいと考えていますか?
松尾)これまで「学び」で止まっていたところから、「実行・実践」まで踏み出せる企業を増やしていきたいと考えています。
現状、「脱炭素」という言葉だけを聞くと、どこか“自分事”としてとらえることが難しいと感じる企業がまだまだ多いと感じています。
ただ、脱炭素の視点を加えると、行政の補助金を活用してコストを抑えて最新の設備を導入することができたり、エネルギーコストが高騰する中で長期的なコスト削減につながったりと、脱炭素経営に取り組むことが、実は企業の直接的なメリットになる可能性があるということをもっと知ってもらう必要があると思っています。
今回実施したワークショップを通じて、省エネ設備導入による排出量削減効果を示すことで補助金申請につながることや、申請書への具体的な落とし込み方など、実務に直結する気づきが得られることがわかりました。
こうした経験を通じて、地域の企業が脱炭素経営を「自分事」として捉えられるようになることを期待しています。これらの取り組みを通じて、県内企業が取引先からの要請に対応できる力を高め、取引先として選ばれ続けることで、県内産業の競争力が維持・発展されていくように、脱炭素経営の推進に取り組んでいきたいと考えています。


NPO法人温暖化防止ネット 松尾真理子事務局長
(本インタビューは、2026年1月6日に実施されたものです)
今回MS&ADインターリスク総研が講師を務めた「脱炭素経営ワークショップ」は、中堅・中小企業の脱炭素経営の実践を支援する内容となっています。
自治体や商工団体、それにサプライチェーンをリードする企業など、域内企業や取引先の中堅・中小企業の脱炭素経営を推進したいとお考えの皆さまは、このワークショップの導入やご活用をぜひご検討いただき、MS&ADインターリスク総研にお気軽にご相談ください。
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COP30をわかりやすく解説 脱炭素経営に取り組む企業が注目すべき今後の動向とは?
COP30の開催前の2025年2月は、各国が、10年後の2035年の温室効果ガス(以下、GHG)の削減目標「国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution、NDC)」の提出期限でした。
これは、パリ協定※1の締約国はNDCを「国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)」に5年ごとに提出・更新することが求められているためです。
※1 パリ協定…2015年にフランス・パリで開催されたCOP21で採択された2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組み。「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」が掲げられている。なお、COPの後にある数字は開催回数を示していて、COP30は30回目の会議。
しかし、2025年2月10日の締め切りの時点で提出したのは、全締約国のうちわずか13か国だったため提出期限は9月まで延長されましたが、3割程度にとどまりました。アメリカにおいてはトランプ大統領がパリ協定からの離脱を通告したこと、EUでは目標設定に当たって加盟国間にて対立が起こったことが、各国の提出遅延につながりました。
こうした中、日本は2025年2月18日に新たなNDCを提出して、COP30では脱炭素社会実現に向けて着実に歩みを進めていることを発信しました。また、温室効果ガス観測衛星(GOSAT)をはじめとした最新システムの紹介や、各国閣僚との会談を通じ、日本の先進性をアピールしました。
COP30の成果としては、「ベレン・ポリティカル・パッケージ」が発表されて、特に関心の高い気候変動対策に関する緩和策や、資金に関わる包括的な内容を含む「グローバル・ムチラオ決定」が採択されました。(「ムチラオ」とは、ポルトガル語で「共同作業・協働・共に働く」という意味です)
このなかでは、気候変動対策の実行への移行が強調され、特に、次の点が決定されています。

COP30ではパリ協定から10年の節目ということもあり、GHGの排出量を実質的にゼロにする「ネットゼロ」に向けて様々な議論がされました。
2年前に開かれたCOP28では、2050年までにネットゼロを達成するために化石燃料からの移行を加速させることや、各国ごとに異なる道筋を考慮したうえで分野別に排出量削減に貢献するなどの明言がされています。
一方、今回のCOP30では、ネットゼロに向けた脱炭素へのロードマップについて多くの国々の賛同を得たものの、産油国などの反対により合意には至らず、枠組みの方向性の確認に留まっています。
これらを考慮すると、世界全体でのGHG排出量削減は、国単位での脱炭素取組に委ねられる部分が大きくなると予想されます。
企業の皆さまとお話ししますと、アメリカにおける「脱・脱炭素」への方向転換などの世界的な潮流から、自社の脱炭素の取組み方に悩みをお持ちの印象を受けます。
しかし、サステナビリティ基準や排出権取引の適用が迫り、かつCOP30でネットゼロに向けた立場を改めて明確にした日本では、今後は今までと同等かそれ以上に、脱炭素が求められる社会になると考えられます。
こうした中では日本の企業の皆さまは、引き続き脱炭素経営を推進していくことが求められます。
COP30のような国際会議での議論を踏まえると、企業としてできることには限りがあると感じるかもしれませんが、例えば、事務所におけるこまめな消灯、空調の設定温度の調整などは立派な省エネ活動です。
ただし、省エネ活動に取り組んでも、どの程度会社としてGHG排出量を削減できているかを“見える化”できていないと、脱炭素経営としては不十分です。
第一歩として自社の排出量の“見える化”を行い、自社の“現在地”を明確化することが、脱炭素経営の近道であり、重要な取り組みとなります。
今回のCOP30の開催を機に、皆さまもいっそうの脱炭素経営の実践に踏み出してはいかがでしょうか。
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カーボンクレジットとは? 基本とビジネス機会、国際的な最新動向を解説 今知っておきたいカーボンプライシング②
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【お客さま事例】中小企業の脱炭素経営を実践的に学べるワークショップが佐賀県で開催!
2025年7月と10月、佐賀県主催で参加費無料の「脱炭素経営ワークショップ」が開催されました。ワークショップは、佐賀県内の中堅・中小企業を対象に「入門編」と「実践編」の2回に分けて実施され、のべ73社の企業が参加しました。


脱炭素経営とは、気候変動対策(≒脱炭素)の視点を織り込んだ企業経営のことを指します。温室効果ガス(GHG※)の排出を減らしながら持続可能な事業活動を行い、企業価値の向上を目指す経営手法の1つです。
日本政府は、「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2030年度にGHGを2013年度比で46%削減、2050年までに実質ゼロを目指すことを宣言しています。
こうした中で、脱炭素経営への転換を先取りすることができれば、中堅・中小企業にとってもビジネスチャンスを増やすことが期待できます。具体的には、次のようなメリットを挙げることができます。
※GHG:温室効果ガス(Greenhouse Gas)の略称で、二酸化炭素やメタンなど、地球温暖化の原因となる気体の総称
製造・業務プロセス、設備の見直しによって、光熱費・燃料費を削減できる
CO2排出量削減につながる設備更新に、補助金活用の可能性がある
脱炭素への投資や削減目標の達成で金利優遇などを受けられる融資制度を活用できる
脱炭素取り組みを進めている自治体や企業との取引の維持・拡大が期待できる
自社ホームページ上での情報開示・メディアなどへの掲載によって、知名度向上や消費者・利用者に選ばれる企業となる可能性が高まる
社会課題への取り組みにより、環境意識が高いとされる若年層の採用や、社員が自分の仕事に誇りを持てる職場づくりにつながる(実際に「子どもに胸を張って、自分の仕事のことを話せるようになった」といった声も)
7月に行われた「入門編」は、MS&ADインターリスク総研の脱炭素経営コンサルタント3名が講師を担い、主に次のようなスケジュールで行われました。


この中で講師は、中堅・中小企業でも脱炭素経営が求められる背景について、2027年3月期より導入が始まるSSBJ基準※により、大企業には自社だけでなくサプライチェーン全体の脱炭素取り組みが求められること、こうした企業のサプライチェーンを構成する中堅・中小企業も削減が求められる流れにあることを説明しました。
※SSBJ基準:「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)」が2025年3月に公表した、日本におけるサステナビリティ情報開示のための新しい基準


引用:環境省資料 https://www.env.go.jp/earth/tekiou/tekiouhou_gaiyou.pdf
10月に行われた「実践編」は、主に次のようなスケジュールで行われました。


「実践編」では「入門編」を踏まえて、自社の排出量の算定から削減目標を設定し、その上で削減計画を検討するまでの流れを、参加した38社の担当者が、ワークシートを使って実際に取り組みました。
まずは、Excelで提供された排出量の「算定シート」を使い、ガソリン、ガス、電力などのエネルギー別に、使用量や税込みの購入金額を記入すると、排出量に自動的に換算されて、排出量を算定することができました。


続いて行った削減目標の設定では、日本政府が目指している「2030年までに46%の削減」という指標や、各業界団体の指標を参考に参加各社が設定しました。
そして、設定した削減目標に基づいて「削減計画シート」に、具体的に自社で実践できそうな取り組みを記載していきました。
その際、GHGがどこから排出されているかを分類するときに使われる国際ルールである「Scope(スコープ)」に分けて記載していきました。


参加した企業の担当者は、Scope1にEV車を導入して、3年後に2台入れ替えるなどと記入したり、Scope2にはオフィス全体でLEDを導入するなどと記入したりしていました。
最後に、最終的な測定結果、設定した目標、削減計画を1つのExcelシートにまとめ、参加各社がその内容を発表しました。
「入門編」と「実践編」の2回にわたって行われた「脱炭素経営ワークショップ」に参加した企業からは、次のような感想が聞かれました。
「会社として、脱炭素経営の実現を目指していて、組織・従業員をあげて推進していこうと考えています。ワークショップに参加して、社内体制作りについても学ぶことができたので、さっそく実践していこうと思いました」
「脱炭素経営の目的と具体的な進め方に加えて、他社の取り組み事例や実際に使えるExcelのツールも紹介してもらえて、脱炭素経営に対するイメージがクリアになりました」
「現在、自社でGX(グリーン・トランスフォーメーション)に取り組んでいるところだったので、ワークショップに参加したことで、さらに理解を深めることができました」
「脱炭素経営ワークショップ」は、域内企業やサプライチェーンを構成する中堅・中小企業の事業活動における「排出源の特定と整理」をするきっかけにつながり、脱炭素経営を実現するための第一歩になります。
MS&ADインターリスク総研では、地域やサプライチェーンの「脱炭素経営」を推進したいとお考えの自治体や企業など向けに、ワークショップを開催しています。このワークショップでは、域内企業や取引先の中堅・中小企業が脱炭素経営を実践的に学び、自社で取り組みを進めるための力を身につけることができます。
自治体や商工団体、それにサプライチェーンをリードする企業など、組織・企業規模に関わらず脱炭素経営を基礎から学んで実践を促進したいお考えの皆さまは、MS&ADインターリスク総研にお気軽にご相談ください。
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「脱炭素経営ワークショップ」地域・サプライチェーン全体の脱炭素推進を支援する実践型プログラム
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「脱炭素行動」を従業員に習慣化させるために企業が今すぐやるべきこととは?
ある行動が習慣化するためには、どうすればいいのでしょうか?そのためのポイントは、「やることを簡素化すること」が必要になります。
脱炭素に向けて新たな行動をとるように求められると、多くの人は「余計な仕事が増えた」と感じてしまう可能性があります。そう受け止められないようにするためには、既存の業務フローに組み込むことが習慣化を促します。

具体的には、次のような形で既存の業務フローに組み込むことが考えられます。
企業が原材料、部品、サービスなどを購入する際、価格、品質、納期などが主な選定基準となっています。この基準に加えて、仕入先がどれだけ環境に配慮した活動をしているのかを測る「環境指標」を導入すれば、購買プロセスの中でCO2の排出量の削減、再生可能エネルギーの利用、環境認証の取得などの観点を考慮することが可能になります。
会議を開催する際、参加者が物理的に移動すると交通手段によってCO2が排出されます。不要な移動を減らして排出量を削減するために「会議は原則オンラインで実施する」「公共交通機関を優先する」といったルールを設けることで、「余計な仕事」を増やすことなく脱炭素行動を促すことにつながります。
また、「削減量を見える化」することも、脱炭素行動の習慣化につなげることが期待できます。
削減量が見える化されると、「どの行動」が排出量削減に向けて最も効果があるのかが分かり、より効率的でインパクトの大きな脱炭素アクションを選択できるようになります。
具体的には、個人・チーム単位で、実際のCO2の削減量や、削減につながった行動をダッシュボードで可視化したり、「この会議をオンラインにしたら年間○kg削減」といった即時的なインパクトを表示したりすることが効果的です。
また、短期的なインセンティブ(ポイント、社内表彰)と、長期的な評価(人事評価・目標管理に紐づける)をバランスよく組み合わせることで、従業員が自身の行動が正当に評価されていると受け止められるようになり、脱炭素行動がより継続しやすくなります。
従業員の脱炭素行動を習慣化していくうえで、参考となる企業の事例をご紹介します。
ICTサービス・ソリューション事業などを展開するNTTドコモビジネス株式会社は、「Green Program for Employee※」というプログラムを作り、従業員一人ひとりの環境意識向上と行動変容を促すことを目指しています。
このプログラムでは、従業員はリモートワークの実施・公共交通機関の利用、省エネ行動などの日々のエコアクションをデータとしてアプリに記録・計測します。これにより、個人の行動が具体的にどれだけのCO2削減に貢献したか(CO2換算など)が可視化されます。
さらに、収集したデータをもとに企業全体の目標達成度に対する個人の貢献度を明確にし、ランキング形式やゲーミフィケーション要素を取り入れることで従業員のモチベーションと継続性を高め、企業の環境目標達成を従業員自らの主体的な活動として加速させています。
※出典:NTTドコモビジネス株式会社ホームページ
https://www.ntt.com/business/solutions/gxesg.html
企業の脱炭素経営の実現に向けては、トップダウンの推進力だけでなく、現場の従業員の自発的な行動を促すことが欠かせません。そして、従業員の脱炭素行動の習慣化に向けては、今回取り上げた「行動の簡素化」、「業務プロセスへの組み込み」、「削減量の見える化」など、自社の状況に合わせた工夫が必要となります。従業員の行動変容を促し、持続可能な未来に向けて一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。
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企業の脱炭素・カーボンニュートラル 一見“地味”でも、効果は地球規模?
「京都議定書」という言葉を覚えていたり、聞いたことがあったりする人もいらっしゃるかもしれません。「京都議定書」は、1997年に京都で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)で採択された、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスに関し、先進国の排出削減について数値目標などを定めた文書です。
この頃から、企業に対して温室効果ガス削減に向けた取組が求められるようになり、当初は「やらされ感」で取り組む企業も多かったようです。
近年は、当初の「やらされ感」が薄れ、より前向きに取り組む企業が増えています。
そして、企業の脱炭素・カーボンニュートラルの取組手法は多岐にわたっています。省エネ設備の導入、再生可能エネルギーの自家発電、デジタル化による業務効率化など。これはすべて、温室効果ガスの削減につながります。

実は、脱炭素を進める過程で無駄な工程や資材の削減にもつながり、企業の生産性向上にも寄与しています。
サプライチェーン全体での排出量の見える化や、環境負荷の少ない製品・サービスを優先的に調達する取組も注目されています。
投資家や消費者の目も厳しくなる中、“サステナブル経営”は、企業の持続的な成長に不可欠な要素となりつつあります。
温室効果ガス削減の取組としては前述の他にもLEDの導入、空調の温度調整、電気設備の運用見直し、オフィスのペーパレス化などがあり、1つ1つは一見“地味”に見えるかもしれません。
しかし、時代の先を見据え、できることから着実に進めていくことこそが企業を存続・成長させるために不可欠な要素になっていくと考えられます。
さらに企業の中には、社員からアイデアを募る社内コンペや、排出量の“見える化”で、脱炭素の取組を加速させるところも増えてきています。
こうした取組は、コスト削減につながるだけでなく、企業価値・ブランド力の向上にもつながります。つまり、脱炭素は、企業の成長と環境負荷の低減が対立することなく、ウィンウィンの関係になれるものです。
小さな工夫が大きな変化につながる。そんな感覚で、脱炭素・カーボンニュートラルの取組を始めてみてはいかがでしょうか。
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「企業のリスクマネジメント実態アンケート」調査結果概要 ~将来的な脅威は「人的資本・人材確保リスク」が最多~(2025年10月)
本アンケートは、2025年8月28日から9月10日までの14日間、当社のメールマガジン購読者さまを対象に実施し、548名の方から回答をいただきました。
回答いただいた方の業種、部署、従業員規模、役職については次の通りです。








アンケートでは「業務上、関心が高いリスク」について複数選択で尋ねました。その結果、トップ3は「気候変動・自然災害の激甚化」が11.1%、「サイバーセキュリティ」が10.7%、「コンプライアンスリスク」が8.9%となりました。


自社のリスクマネジメント取組の充実度について尋ねたところ、「かなり充実している」が3.6%、「まずまず充実」が17.9%、最も多かったのが「一般的」で43.4%、「やや不十分」が22.4%、「かなり不十分」が11.3%でした。


リスクマネジメントに関して「自社に不足している」と感じるものを複数選択で尋ねたところ、トップ3は「各社員のリスク感度」「専門人材」「社内教育・啓発」と、人に関する要素が不足していると回答した人があわせて42.8%に上りました。
続いて「客観的なリスク評価・診断」「リスク管理体制」「BCP等マニュアル類の整備」というルールや体制整備に関する要素が不足していると回答した人の割合が29.5%でした。


3年から5年後の近い将来、ビジネスにとって最大の脅威となりそうなリスクについて尋ねたところ、「人的資本・人材確保」が23.9%と最も多く、「気候変動・自然災害の激甚化」が15.9%、「サイバーセキュリティ」が9.5%と続きました。


本アンケートでは、上記のほかにも次のような内容についても尋ねています。
アンケート調査の詳細が知りたいという方は、以下の「お問い合わせ先」からご連絡ください。
MS&ADインターリスク総研では、企業の実情や課題に合わせて次のような多様なコンサルティングサービスを提供しています。
今回の調査結果を貴社のリスクマネジメントにお役立ていただくとともに、リスクマネジメントの強化に関してお困りごとなどがございましたらお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:
MS&ADインターリスク総研株式会社
営業部デジタルマーケティンググループ
メール:DigitalMarketing_irric@ms-ad-hd.com
本レポートの引用・転載・メディア掲載について
本レポートの内容を引用・転載・メディア掲載される場合は、必ず「MS&ADインターリスク総研による調査結果」と明記してください。また、内容の改変や一部抜粋による誤解を招く利用はご遠慮ください。掲載や利用に関するご相談・ご質問は、当社デジタルマーケティンググループまでご連絡ください。
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ESGリスクトピックス(2025年10月)
自然資本 日本の主要な環境NGOの1つである世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は2025年8月28日、「2024年TNFD開示の潮流と日本企業の対応状況」を公表した。これは、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)による開示提言に沿って2024年に情報開示を行った日本企業65社を対象に、WWFジャパンが定義する「TNFDキーポイント」に基づいて実施されたベンチマーク調査である。企業の開示が広がる一方、事業変革に向けた課題や示唆も明らかになった。 「TNFDキーポイント」は、WWFジャパンがTNFD開示で特に重要だと考える項目を、TNFD一般要件等を参考に抽出したものである。今回の調査では4 つのキーポイント(下表)を設定し、企業の開示状況を星の数で評価できる仕組みとなっている。星なし(☆)はキーポイントに関する記載がない状態を示し、星の数が多いほど内容が充実していることを表す。特にキーポイント2から4は星4つが理想だが、初期段階での達成は難しく、段階的な向上が期待される。 出典:WWFジャパン資料をもとにMS&ADインターリスク総研にて作成 調査結果では、キーポイント1のマテリアリティの考え方を明示した企業(星1つ以上)は全体の約2割にとどまり、多くの企業が採用したマテリアリティ・アプローチの明示を行っていなかった。キーポイント2-1では、自然との関係性の把握について、直接操業地点における依存・インパクトの分析は進展し、星3つ以上を獲得した企業は全体の約4割だった。一方、キーポイント2-2のバリューチェーン上流・下流における解析は、トレーサビリティの難しさから遅れている(星3つ以上は全体の約2割)。概して業界共通のデータツール(例:ENCORE)に依存した一般的な分析が多く、場所ごとの依存・インパクトや優先地域の特定は不十分であった。キーポイント3では、「ミティゲーション・ヒエラルキー」に基づく対応は、「節水」などの既存の目標中心であり、バリューチェーン全体を見据えた回避・軽減方針や達成目標時期、適切な測定指標の採用、進捗開示まで踏み込む企業は少数であった。キーポイント4では、自然関連課題や先住民族と地域社会(IPLC)を含めたステークホルダーへの対応が浸透しておらず、星3つに到達した企業は3社のみだった。また、全企業がウェブサイト上で国連宣言や「国連ビジネスと人権に関する指導原則」等への賛同を示しているものの、誰もがアクセス可能な苦情処理メカニズムを構築している企業は全体の約3割にとどまり、実効性あるエンゲージメント体制の設計が課題である。これらの状況は、TNFDが目指す「開示を契機とした事業モデルのネイチャーポジティブへの変革」に向けて、企業の戦略的対応の重要性を浮き彫りにしている。 注:図中の数字は企業数を示す。また、キーポイント1は星2つが最高評価である点に留意 以上を踏まえ、今後企業が取り組むべき事項は三つに整理できる。第一に、ダブル・マテリアリティの採用と根拠の明確化である。財務影響だけでなく、自然環境や社会への重大な依存・インパクトを事業やレピュテーション、規制対応と結び付け、自社にとっての事業リスクと同等に重視する姿勢を示す必要がある。第二に、場所に基づく評価の充実である。自然との接点を「何が・どこで・どのように」に分解し、拠点やバリューチェーン上の優先地域を特定し、依存・インパクトの経路を可視化することが重要である。第三に、ミティゲーション・ヒエラルキーとIPLCエンゲージメントを組み合わせた移行計画の策定である。つまりマイナスインパクトの回避を最優先とし、軽減、復元・再生、代償の順で施策を整理し、地域住民の権利尊重や苦情処理のアクセス性・透明性をガバナンスに組み込むことが求められる。これらの取り組みにより、企業はTNFDの本質的価値を事業変革につなげることが期待される。 ※ LEAPアプローチとは、TNFDが提示している、企業および金融機関における内部の自然関連課題の特定と評価をサポートすることを目的とした自主的なガイダンスである。Locate、Evaluate、Assess、Prepareの4つのフェーズから構成される。 【参考情報】 自然資本・ネイチャーポジティブ経済 英国の世界自然保護基金(WWF UK)と2019年に英国政府が設立したグリーンファイナンス研究所(GFI)が、英国における自然への投資が経済の成長に繋がることを示すレポート「英国経済のレジリエンスと成長を支える自然投資」を発表した。本レポートによれば、英国経済は慢性的な自然劣化や気候変動リスクに直面しており、今後10年間でGDPの4.7%が減少(推計)という重大な損失が予測される。これらのリスクは、住宅・エネルギー・農業・製造業・観光など主要セクターに波及し、事業運営や資産価値、サプライチェーンに大きな影響を与える。一方、英国企業は自然投資による回復力向上や新技術への投資によって、財務的利益と競争優位性を獲得しつつある。報告書では、英国企業が自然への投資を進めることでレジリエンスを高め、競争力や収益性を向上させている事例が多数紹介されている(表1)。 (出所)「Business Investment in Nature: Supporting UK Economic Resilience and Growth」より抜粋してMS&ADインターリスク総研にて作成 サステナブルファイナンスでは英国が気候関連で世界をリードしており、自然資本への投資拡大が期待されている。2024年にはネットゼロ経済分野で200億ポンドの民間資本が集まり、自然関連技術開発企業も28億ポンドを資金調達したと推定されている。金融機関は企業向けローンの利率を生物多様性向上に連動させるなど、新たな金融商品の開発も進めている。 こうした企業による自然への投資について情報を提供するため、英国政府の環境改善計画(EIP)は英国政府自身の環境上の優先事項と法的拘束力のある自然に関する目標を達成するための戦略を示しているが、行動に関する詳細なガイダンスは提供していない。そこで、各企業が自信をもって自然環境関連の投資に挑むためのガイダンスとしてWWF-UKとGFIはNature-Positive Transition Pathways(NPP) を開発している。25以上の英国の主要企業と業界団体はNPPの開発に対する支持声明に署名しており、英国の環境投資を刺激する上で強力な役割を果たすことが期待されている。NPPは各セクターの移行経路を明確化し、企業が自社の投資・事業計画を英国の環境改善計画、生物多様性国家戦略・行動計画および地球規模の生物多様性枠組みの目標と整合させるための実践的ガイダンスで、NPPを活用した社内投資計画の策定は、長期的なリスク管理と成長戦略の要となりうる。 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)を採用する日本企業が急増しているが、自然関連リスク・機会の定量化も含めた詳細評価や自然関連移行計画の策定までできている企業は極めて少ない。それらの企業にとって、英国のNPP策定や本レポートのリスク定量化事例、自然資本投資の先進事例などは参考となるだろう。自然関連リスクへの対応を単なるリスク管理に留めず、成長戦略・イノベーション・新規事業開発の観点から積極的に取り組むことで、企業価値向上と持続可能な社会の実現に貢献できる。サステナブルファイナンスや循環型経済、再生型農業など、グローバルな潮流を捉えた戦略的な投資・協業が今後ますます重要となるだろう。 ※ 精密農業(Precision Farming): 【参考情報】 人権 日本政府が2025年12月に予定する「ビジネスと人権に関する国会行動計画(2020-2025)」(NAP)の改定に向けて、内容への関心が高まっている。中でも、企業に対して人権デュー・デリジェンス(人権DD)の義務化が盛り込まれるどうかに注目が集まる。欧州を中心にした複数の先進国では、すでに法制化が進む。2022年5月に、当時の萩生田光一経済産業相が記者会見で、将来の法制化の可能性について言及したことがある。 そうした中、経団連は9月16日に公表した意見書「『人権尊重経営』の推進 -『ビジネスと人権』に関する経団連の考え方と政府への期待-」の中で、企業の人権尊重の取り組みは、「指導原則に則って自主的に進めることを基本とするべき」として、義務化に否定的な考えを明らかにした。企業の人権尊重の取り組みは不可欠としつつ、人権DDやサプライチェーン上のリスク把握のための調査などが企業の重い負担になっていると主張。義務化は、企業の画一的・チェックボックス的な対応を招くとした。また、企業が配慮すべき人権侵害リスクは業種やサプライチェーンの構造によって異なるため、政府の現行の汎用的なガイドラインでは実務上の対応が難しいと否定的な見解を示した。その上で、政府に、▽ガイドラインの定期的な更新、▽無料相談可能な政府窓口の設置、▽中小企業向けの人権DDチェックリスト・事例集の作成――などの支援を要請した。 一方、海外を中心に、日本企業による人権DDの実効性向上のため、政府に法制化を求める声が挙がっている。「ビジネスと人権」の推進を目的にする国際NGOのWorld Benchmarking Alliance(WBA)とBusiness and Human Rights Resource Centre(BHRRC)は8月19日、共同提言を公表。法制化で先行するドイツやフランスで国内企業の人権DDの実施率が向上するなどの政策的効果を例示して、日本にも法制化を求めた。 改訂NAPには、人権DDのほか、「AI・テクノロジーと人権」や「環境問題と人権」など新たな人権課題も盛り込まれる予定だ。政府は2025年10月のパブリックコメントに向けて策定作業を進めている。 【参考情報】 TNFD・自然資本 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は2025年8月29日、国内株式の運用を委託する運用会社20社が選んだ「優れた TNFD 開示」を公表した。それによると、アサヒグループホールディングスとキリンホールディングスの2社が、それぞれ最多の6社から支持を受けた。 GPIFが同日に公表した年次の「2024年度 サステナビリティ投資報告」に掲載した。 最多得票の2社のうち、アサヒグループホールディングスは、TNFDとTCFDを統合したフレームワークに基づきサプライチェーンを包括的に分析した点や、2つの農産物に焦点を当て財務影響を分析した上で定量的に開示した点などが評価された。 一方のキリンホールディングスは、①TNFDの主要な要素を網羅している②テーマやトピック別に財務影響を定量化している③地域ごとの特性を踏まえたマテリアリティ評価を実施し、測定指標とターゲットを開示している――などの点が評価された。 また、東急不動産ホールディングス、住友林業、王子ホールディングス、日本電気、三菱UFJフィナンシャル・グループの5社も、運用会社3社以上から高評価を得た。 運用会社は選考に際しての評価ポイントに、▽自然資本に関する取組・開示が企業価値向上に実効的なものであるか(企業の持続性への確信度の向上や資本コストの低減に結び付くといえるか)▽財務・企業価値との関わりがマテリアリティに応じて示されているか▽ネイチャーポジティブへの貢献が定量的に示されているか――などを挙げた。 優れたTNFD開示企業の選定は今回が初めて。運用会社と投資先企業との間の建設的な対話(エンゲージメント)の実現に向け、対話の前提となる企業側の情報開示のベストプラクティスを選定・公表するのが目的。GPIFが2024年度に上場企業対象に実施したアンケートでは、TNFD開示をする上での課題に、参考となり得る他社の好事例が少ないことが挙がっていた。 【参考情報】 中国法改正情報 2025年10月15日から中国の改正反不正競争法※1が施行される。改正法では、不正競争行為に関する規定が拡充された。不正競争行為の疑いをかけられた場合、当局による立入検査や事情聴取、財物の封印・押収などの措置が行われる可能性がある。また、法律上の責任が認められた場合には、損害の賠償や罰金の支払い、営業許可の取り消しなどが行われる可能性もあるため、現地に進出する日本企業にも影響が大きいものと想定される。 主な改正のポイントは以下のとおり。 日本貿易振興機構「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記」※2をもとにMS&ADインターリスク総研にてにて作成 企業においては、法令や運用の動向を注視しつつ、国内外における自社のコンプライアンス体制の見直しを図ることが望ましい。具体的には、従業員の禁止行為を明示した内部規定の作成、対外支払いや贈与などのリスクを伴う行為に対する承認ルールの見直し、教育・研修を通じた法令やルールの周知徹底、内部通報窓口の設置・適切な運用などが挙げられる。 なお、今般の改正を受け、JETROより商業賄賂規制に関する各種事例の紹介や同規定に対する企業の対策などについてレポート(2025年9月17日)※3が発行されている。商業賄賂規制への抵触を防ぐための自己点検チェックシートをはじめ、自社のコンプライアンス取組を見直すために有益な情報が掲載されているため、取り組みにあたってはこちらも参照されたい。 ※1)2025年6月27日、第14期全国人民代表大会常務委員会第16回会議にて可決された。 【参考情報】 サイバーセキュリティ 独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンターは2025年8月29日、「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」を公表した。本調査は国内企業に属する個人1200名(製造業/非製造業、従業員301名以上/未満、それぞれ300名ずつ)に対してウェブアンケート方式で実施した。過去5年以内に営業秘密の漏えい事例・事象が「あった」「おそらくあった」と回答した企業は35.5%にのぼり、前回調査(2020年度)の5.2%から大幅に増加した。営業秘密の漏えいリスクはもはや一部の企業だけのものではないことが示されている。 営業秘密の漏えいルートとしては、サイバー攻撃等によるものが36.6%と大幅に増加し、前回調査の4倍以上となった。これにより、外部からの侵入リスクの高まりがうかがえる。 一方、ルール不徹底(32.6%)、金銭目的等の意図的行為(31.5%)、誤操作・誤認(25.4%)など、従業員による内部不正(誤操作を含む)の割合も上位を占めている。報告書では、「人間関係の恨み」や「借金」などが内部不正の要因として挙げられており、これらの要因が組織内に存在するかを把握し、対策を講じることが重要である。 営業秘密管理に関連して、生成AIの利用ルールの整備状況についても調査が行われた。生成AIの業務利用に関するルールを定めている企業は52.0%であり、完全に利用を禁止している企業が26.2%、公開情報のみの取り扱いを許可している企業が14.8%、組織内に閉じた生成AI環境を利用している企業が11.0%であった。 出典:独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター 生成AIは営業秘密管理の観点から新たなリスクとなり得る一方、業務効率化や新たな価値創出の可能性も秘めている。今後は業務ルールの明確化、従業員教育、定期的な監査を通じて、生成AIを安全に活用できる体制の構築が、すべての企業にとって不可欠となると考えられる。 【参考情報】
○ WWFジャパン、日本企業65社のTNFD開示状況を分析した報告書を発表
<TNFDキーポイント別評価概要サマリー>
概 要
キーポイント1
TNFD一般要件に基づき、企業がどのマテリアリティ・アプローチを採用
しているかを評価する。特にTNFDが推奨するインパクト・マテリアリテ
ィの開示に加え、ダブル・マテリアリティを明記している場合は高く評価
する。
キーポイント2-1
直接操業について、拠点ごとの依存・インパクト経路、4つの自然関連課
題(依存、インパクト、リスク、機会)の特定および開示状況、要注意地
域の特定の有無を評価する。業種により直接操業とバリューチェーン分析
の難易度が異なるため、両者を分けて評価している。
キーポイント2-2
バリューチェーンに関して、一次産品や製品、地域、プロセスなどの要素
が開示され、LEAPアプローチ※等による分析が進んでいるかを評価する。
また、トレーサビリティの確保と優先地域の特定が実施されているかも重
視する。
キーポイント3
キーポイント2で特定した優先的なマイナスインパクトに対して、企業が
示すコミットメントと、その回避・軽減、再生・補償の実施状況や成果の
開示を評価する。
キーポイント4
国際規範へのコミットメント、人権デューデリジェンスやグリーバンス
(苦情処理)対応の範囲、対象となる地域の特定、さらにはエンゲージメ
ントの実施状況を評価対象とする。
<キーポイント別 スコア分布>


出典:WWFジャパン資料をもとにMS&ADインターリスク総研にて作成
2025年8月28日付 WWFジャパンHP: https://www.wwf.or.jp/activities/lib/6040.html
○ 英国経済への自然関連リスクの定量的な財務影響や自然関連投資を整理 ―WWFおよびGFIによる報告書(2025年8月発表)
-*-*-*-*-
<表1> 主要項目別の自然リスクおよび投資事例と金額(一部抜粋)
項目
リスク・損失額(推定含む)
投資事例・投資金額
水不足
等で今後5年で最大250億ポンド損
失する可能性がある
ッド・ユーティリティーズとテムズウォー
ターがウォーターニュートラルに取り組む
住宅に水道料金の割引を提供
洪水・
暴風雨
で過去最高の5.85億ポンドに達した
損失は2024年時点で26~38%に達
した
ン・トレント社は2023年時点で7,600万
ポンド投資している
土壌
劣化
土壌劣化は、生態系サービスを提供
する能力が低下し、年間最大14億
ポンドの損失を経済に与えていると
推定
英国の農業技術スタートアップに1.3億ポ
ンドが投資された
資源
効率
国企業の53%が資源調達コスト増大
に問題を抱えている
で世界中で65億ポンド以上の資金を獲得
した
2024年時点で1,960万ポンド調達した
サステ
ナブル
金融
-
に、バークレイズは生物多様性目標連動型
の融資を実行
ジネスモデルを開発している企業900社が
2024年時点で28億ポンド以上の資本を調達した
年時点で200億ポンド以上の民間投資が集
まった
国際的に様々なとらえ方が存在するが、主に複雑で多様なばらつきのある農場に対して事実の記録に基づくきめ細やかな管理を実施して、地力維持や収量と品質の向上及び環境負荷軽減などを総合的に達成しようとする農場管理手法を指す。
WWF UK「Business Investment in Nature: Supporting UK Economic Resilience and Growth」2025年8月
○ 政府人権行動計画の公表目前、人権DD義務化で国内外から賛否の声
-*-*-*-*-
2025年8月19日 World Benchmarking Alliance HP:
https://assets.worldbenchmarkingalliance.org/app/uploads/2025/08/Japan-NAP-2.0-policy-note_JP.pdf
日本経済団体連合会 HP: https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/056_honbun.pdf
○ GPIFが「優れたTNFD開示」を初公表、トップ2社は気候との統合報告で高評価
-*-*-*-*-
2025年8月29日付 年金積立金管理運用独立行政法人「2024年度 サステナビリティ投資報告」HP:
https://www.gpif.go.jp/esg-stw/esginvestments/2024_sustainability.html
○ 中国の反不正競争法改正の概要と企業における対策のポイント
-*-*-*-*-
<主な改正の概要>
項目
改正の概要
(1)収賄行為の禁止を追加
へ) など
(2)混同行為(誤認される行為)の
規制範囲の拡充
断使用する行為の禁止
する行為の禁止 など
(3)ネットプラットフォームに
おける禁止行為の明確化
の事業者に対して虚偽の取引や評価(いわゆる「サク
ラ」行為)、故意・悪質な返品などを実施する行為の禁
止 など
(4)大企業などによる中小企業への
優越的地位の濫用規制
方法などの取引条件を強要することや、支払いを遅延さ
せることを禁止 など
(5)域外適用の追加
者に損害を与えると判断される場合、同法や関連法規に
基づいて処理
※2)JETRO「反不正競争法改正版が可決、中小企業への支払い遅延の禁止など明記(2025年07月04日)」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/07/0a933405e9be2dde.html
※3)JETRO「『事例から学ぶ』中国における商業賄賂規制の最新動向と日系企業への実務的示唆」
https://www.jetro.go.jp/world/reports/2025/02/5482b1b3afc84354.html
2025年9月 日本貿易振興機構(JETRO)HPなど
○ 営業秘密管理に関する実態調査結果を公表 生成AIの利用状況に差異
-*-*-*-*-


「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」をもとにMS&ADインターリスク総研にてが作成
2025年8月29日付 独立行政法人情報処理推進機構セキュリティセンター
「『企業における営業秘密管理に関する実態調査2024』報告書」
https://www.ipa.go.jp/security/reports/economics/ts-kanri/tradesecret2024.html
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【お客さま事例】脱炭素を“きびだんご”で推進!? 岡山県の和菓子店でカーボンフットプリント(CFP)表示の実証実験を開始しました
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国内における排出量取引とカーボンクレジットの最近の動向【リサーチレター(2025年9月)】
カーボンプライシングとは、CO2などの温室効果ガス(GHG)排出に対してコストを課すことで、企業や社会全体の脱炭素化を促進する仕組みである。日本国内でも、様々な形態のカーボンプライシング制度がすでに存在する。その中でも今後国内で利用拡大が期待されるのが、「炭素税」「排出量取引」「カーボンクレジット」の3つである(図表1参照)。
炭素税は、石炭や石油などの化石燃料の消費に課される税金である。日本では2012年10月に「地球温暖化対策税」が導入され、全ての化石燃料に対してCO2排出量に応じた税率(289円/t-CO2)が上乗せされている。しかしこの税率は海外と比較して低く、企業のCO2排出削減への強いインセンティブにはなっていないと の指摘がある。一方で、2028年度から導入予定の化石燃料賦課金は、現行の地球温暖化対策税と類似するものの、より柔軟な税率変更ができ、政府はその価格を「徐々に引き上げていく」方針を示している。
排出量取引制度(ETS)※1は、政府が企業などにGHG排出の上限を設定し、その枠内で余剰分や不足分を企業間で取引する制度である。国内では東京都や埼玉県が独自に実施しているほか、国の制度としてGX-ETSが存在する。
| 種類 | 概要 |
|---|---|
| 炭素税 | 化石燃料等の利用によるCO2排出量に 比例した課税を行う。 |
| 排出量取引制度 | 政府が対象事業者のCO2排出枠を設定し、 事業者は自らの排出量に応じて、 その過不足分を他者と取引する。 |
| カーボンクレジット | CO2排出を削減する事業等によるCO2削減量を 証書化して、自主的に取引を行う。 |
(環境省『参考資料集』(2022年11月7日)より筆者作成)
※1)排出量取引制度は英語で、ETS(Emission Trading System)という。
カーボンクレジットは、企業が森林保護や省エネルギー機器の導入などによって達成したGHG削減量や吸収量をクレジットとして発行し、他企業との間で取引できる仕組みである。カーボンプライシングにおける「クレジット」とは、排出削減実績を主張する権利を、一種の手形のように「証券化」したようなものと理解できる。クレジットの創出者は販売することで、脱炭素のための資金調達が可能となる。クレジットの購入者は、削減が困難な排出量を相殺(オフセット)することができる。
特に「排出量取引」と「カーボンクレジット」は、2026年度以降、国内で大きな動きが予想される。これらについて、次章以降で現時点での検討状況を概説する。
日本の排出量取引制度である「GX-ETS」は2026年度以降、CO2の直接排出量(Scope1)が10万トン以上の事業者を対象に義務化される。現在、その詳細設計の検討が進んでおり、2025年7月に、経済産業省は算定方法や不履行時の罰則、今後の検討の進め方などについて、より踏み込んだ情報を公表した(図表2参照)


(経済産業省GXグループ『排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針』(2025年7月2日)より筆者作成)
経済産業省は、排出枠の割当方法の具体案やベンチマーク、上限・下限価格 などについては今秋にかけて議論を重ね、2025年末を目途に制度のとりまとめをする方針である。特に注目される「ベンチマークの水準※2」については、個別業種ごとに専門的な知見を要するため、「製造業(石油精製、鉄鋼、化学、紙パルプ、セメント、石灰製造等)」と「発電部門」の二つのワーキンググループを立ち上げて、それぞれ算定式を検討する予定だ。
2026年度以降GX-ETSが本格化することで、カーボンクレジットの取引もより活発になると見込まれる。第2フェーズ(2026年度~)のGX-ETSでは、排出枠の超過分の償却に利用できるクレジットの上限を、直接排出量の10%までとする案が示されている。また使用可能な適格クレジットとして、二国間クレジット制(JCM)とJ-クレジットの2種類が挙げられた。経済産業省は、クレジットの使用を認めた理由として、排出枠の価格形成を促進し、制度対象者に削減インセンティブを与えるためとしている。さらに、DACCS※3などの 除去・吸収 系の先進的なプロジェクトを制度内に取り込むための手段としても、クレジットの活用を位置付けている。
※2)ベンチマークの水準は、業種ごとに、各社の製品生産量あたりの排出原単位を比較し、同業種内の上位X%に相当する水準が設定される。排出枠の割当量は、基準活動量(2023年度~2025年度の生産量等の平均)にベンチマークを乗じて算定する。
※3)工学的プロセスにより大気中から直接CO2を分離・回収するDAC技術と、地中に貯留するCCS技術を組み合わせた技術。
カーボンクレジットは大まかに、「国連・政府が主導し運営される制度」と「民間セクターが主導し運営される制度」の2種類が存在する(図表3参照)。2つ目の民間主導の制度は、規制や政策に関わらず、自主的にクレジット発行・活用が行われる性質を持つことから「ボランタリークレジット」と呼ばれる。
カーボンクレジットの創出方法は多岐にわたり、排出削減や吸収に資する技術ごとに「方法論」として、適用範囲や排出削減・吸収量の算定方法、モニタリング方法などが規定されている。


(国土交通省航空局『航空脱炭素化に向けたその他の課題』(2023年3月30日)より筆者作成)
JCMとは、日本とパートナー国の間で、日本の企業や政府が技術や資金の面で協力して対策を実行し、得られるGHG削減・吸収量を、両国の貢献度合いに応じて配分する仕組みである。2013年に運用が開始され、2025年7月時点で30か国のパートナー国が存在する。
J-クレジットは、2013年から国が運営する制度である。創出されたJ-クレジットは、国内の法制度(温対法・省エネ法)への報告や、海外イニシアチブ(CDP・RE100)への報告、企業の自主的な取り組みなどの用途に活用できる。
J-クレジットの取引チャネルとしては、以下の3つがある。
3つ目の東京証券取引所においては、J-クレジットの74種類の方法論が9種類に中分類化されて、累計・標準化した売買区分を基に取引が実施されている点が特徴である。
J-クレジットは年間約100万-150万t-CO2のペースで新規に発行・認証されており、2013年度の制度開始から2025年3月までの累計発行量は約1,200万t-CO2となっている。主要な海外ボランタリークレジットの直近の年間発行量は約2億6,000万-3億t-CO2規模※4であることから、J-クレジットの発行量はかなり少ないことが分かる。またJCMクレジットの累積発行量は約77万t-CO2と、さらに少ない状況だ。ある米調査会社の試算によれば、GX-ETSの義務化対象見通しとなる300-400社の全企業が排出量の10%相当分のクレジットを購入する場合、2030年の年間需要は約5,400万t-CO2規模になる可能性がある。実際には、すべての対象企業がクレジットの上限量を利用しない場合でも、足元の供給量とは大きな乖離があり、供給と需要のギャップが顕著になることが懸念されている。
こうした需要の高まりは、J-クレジットの価格の上昇からも推察できる。東京証券取引所のカーボンクレジット市場のデータによれば、直近のJ-クレジットの価格上昇がみられる(図表4参照)。例えば、最も取引量の多い「再生可能エネルギー(電力、図表4左上参照)」では、2024年6月時点では4,200円/t-CO2を下回っていたのに対し、直近の2025年6月時点では5,600円/t-CO2を上回っている。また2番目に取引量の多い「省エネルギー(図表4右上参照)」では、2,000円/t-CO2以下だった価格が、この1年間で5,000円/t-CO2近くまで上昇していることが読み取れる。こうした価格上昇の背景には、GX-ETSが適格クレジットとなることを見越した需要の増加も一因として考えられている。
※4)Barbara K Haya, Tyler Bernard, Aline Abayo, Xinyun Rong, Ivy S. So, Micah Elias. (2025).
Voluntary Registry Offsets Database v2025-06, Berkeley Carbon Trading Project, University of California, Berkeley.
Retrieved from: https://gspp.berkeley.edu/berkeley-carbon-trading-project/offsets-database


(注釈)左軸:売買高(t-CO2)、右軸:加重平均価格(円)
(日本取引所グループ『市場開設以降の売買状況(2023年10月11日~2025年7月31日)』〈2025年8月8日取得〉)
対象企業が実際にどのくらいクレジットを使用するかは、GX-ETS の排出枠割当量の算定基準となるベンチマーク水準に大きく左右される。ベンチマークの水準が厳しく、企業への割当量が少ない場合、企業はクレジットを活用して排出量の一部を償却しようとする動機が強まる。一方、ベンチマークの水準が緩やかで割当量が多い場合、クレジットの利用量は少なくなると考えられる。
上述した通り、現時点ではベンチマーク水準や割当量の具体案は示されていないため、クレジット需要の予測は困難である。これらはクレジット市場の動向を左右する重要な要素となるため、継続的な検討状況の確認が必要である。
カーボンクレジットについては、取引の在り方についても国内で議論と整理が進められている。金融庁は2025年6月、「カーボンクレジット取引に関する在り方」と題した報告書を公表した。本報告書では、取引の透明性や健全性確保のための基本事項、関係者やインフラに関する論点を整理している。
本報告書ではカーボンクレジットに関わる保険についても触れられている。プロジェクト開発者、貸し手・投資家、カーボンクレジットの購入者、各種仲介業者などの市場参加者は、図表5の通り、多様なリスクにさらされている。リスクが大きいクレジットは、一般的に価格が低くなる傾向がある。報告書では、リスク管理の一手段として、保険サービスの活用を紹介している。当社グループの三井住友海上火災保険株式会社は、J-クレジット制度のプログラム型プロジェクト運営者向けに「J-クレジット補償保険」を提供している。また海外でも、カーボンクレジットのリスクに関わる保険の提供例がみられる。
カーボンクレジットにまつわるリスクに対処するための保険の提供は、購入する企業のリスク管理の高度化に寄与する。さらに、保険会社や再保険会社がプロジェクト関連のリスク評価や引受審査を行うことで、プロジェクトに「第二の目」を提供する役割を担う。自然災害や環境、政治リスクなどへの保険付保は、品質の証となり、カーボンクレジット取引の信頼性向上や高品質プロジェクトへの投資拡大につながると考えられる。


(金融庁『カーボン・クレジット取引に関する金融インフラのあり方等に係る検討会報告書)』(2025年6月20日)より筆者作成)
カーボンクレジット市場・制度は現在、黎明期であることから、実務面でも課題が残っている。カーボンクレジットを利用したオフセット商品に関する主張もその一例だ。英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の報告書「Global trends in climate change litigation: 2025 snapshot」によれば、企業によるカーボンクレジット利用に対する法的異議申し立てが世界中で急増している。2015年から2024年の間に提起されたと161件のクライメート・ウォッシング訴訟※5でのうち、3分の1以上がカーボンクレジットに関連していた。クレジットの購入者は自社のバリューチェーン内での排出削減努力を最優先し、クレジットによるオフセットは補完的手段として活用することが大原則である。また、カーボンクレジット市場への参入を検討する企業は、関連制度や商品性、取引実務に関する知識や経験を深めるためのキャパシティビルディングが、今後さらに重要となるであろう。
※5)グリーン・ウォッシュ(greenwashing;見せかけの環境配慮)と同様の意味であり、企業が脱炭素目標に向けた進捗状況や気候変動対策への取り組みについて、虚偽または誤解を招くような情報を発信すること。
【参考文献】
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