万引き抑止サーベイ 現地調査と先端AI技術の活用で「未然に抑止」し、不明ロスを大幅削減
¥0
アンケート調査「フィッシング詐欺に関する実態調査」【リサーチレター(2026年6月)】
近年、スマートフォンやパソコンの普及に伴い、個人情報を不正に取得しようとするフィッシング詐欺の被害が社会問題となっている。巧妙化する手口により、年代やITリテラシーに関わらず多くの人々が被害に遭うリスクが高まっており、被害防止のための啓発や対策の重要性が一層増している。
本調査は、フィッシング詐欺に関する被害実態や対策意識について、幅広い年代を対象にアンケートを実施した。現状の把握と今後の課題を明らかにすることを目的とした調査である。本報告書では、アンケート結果をもとに、被害の発生状況や対策の実施状況、年代別の傾向などについて分析を行った。
2026年1月30日~2026年2月4日の間に、インターネットによる調査を実施した。
20~29歳、30~39歳、40~49歳、50~59歳、60~69歳の年齢5区分毎に男女100人
スマートフォンでSMS(ショートメッセージ)を受信できる回答者が対象
| 地域 | 回答者数 |
|---|---|
| 北海道・東北 | 106 |
| 関東 | 417 |
| 中部 | 160 |
| 関西 | 182 |
| 中国・四国 | 75 |
| 九州・沖縄 | 60 |
| 全体 | 1,000 |
アンケート結果を、「詐欺被害に対する認知」、「詐欺の被害状況」、「詐欺被害の手口」、「詐欺被害対策」の順にまとめた。
全回答者(n=1,000)に対して、自身が詐欺に騙されないと思っているかどうか質問したところ、「絶対に騙されない」もしくは「おそらく騙されない」が54.7%、「騙されるかもしれない」もしくは「騙される可能性が高い」が45.3%となった。


全回答者(n=1,000)に対して、直近1ヶ月以内にフィッシング詐欺と思われるSMS(ショートメッセージ)を受信したかどうか質問したところ、45.2%の人が「受信した」と答え、54.8%の人が「受信していない」と答えた。


直近1ヶ月でフィッシング詐欺と思われる連絡をSMSで受信した回答者(n=452)に対して、直近1年間でフィッシング詐欺と思われるSMSを何通受信したかを質問したところ、13.3%が「1通」、38.1%が「2~5通」、13.9%が「6~10通」、34.7%が「11通以上」と回答した。


直近1ヶ月でフィッシング詐欺と思われる連絡をSMSで受信した回答者(n=452)に対して、受信したSMSがどのような相手を装ったフィッシング詐欺だったかを質問したところ、経験がある人のうち61.5%が「宅配業者」、48.7%が「ECサイト」、43.4%が「クレジット会社」からのSMSを受信したと答えたことが分かった。


全回答者(n=1,000)に対して、フィッシング詐欺と思われるSMSで被害にあったことがあるかどうか質問したところ、7.0%が「被害にあった」、8.9%が「被害にあいかけた」、84.1%が「被害にあっていない」と回答した。


SMSフィッシング詐欺被害にあった回答者(n=70)に対して、フィッシング詐欺による合計被害額を質問したところ、「1万円未満」が38.6%、「1~10万円未満」が17.1%、「10~100万円未満」が14.3%、「覚えていない」が30.0%となった。


被害にあった、もしくはあいかけた回答者(n=159)に対して、フィッシング詐欺の手口を質問したところ、「金融機関」が45.9%、「宅配業者」が37.1%であった。


被害にあった、もしくはあいかけた回答者(n=159)に対して、フィッシング詐欺被害にあったもしくはあいかけた理由を質問したところ、「話が本当のように感じられた」が39.0%であった。


全回答者(n=1,000)に対して、この1年間で、フィッシング詐欺に対する対策を実施したかを質問したところ、「何も実施していない」が58.6%であった。


全回答者(n=1,000)に対して、正規の案内であるにも関わらずフィッシング詐欺であると誤認し、本来開封すべき受信物を開封せず、その後正規の連絡先とトラブルに発展した経験があるか聞いたところ、「ある」が4.8%、「ない」が95.2%であった。


3.調査結果を年代別に分析した結果、いくつかの特徴的な傾向と考察が得られた。本章では、年代別分析の結果とそこから得られた考察を述べる。
図5で示しているフィッシング詐欺の被害状況を、年代別に分析した。その結果、「あった」、「あいかけた」を合計すると、20代が26.5%、30代が15.5%、40代が13.5%、50代が9.0%、60代が15.0%となった。全体平均15.9%に対して、20代が平均を10.6%pt上回る結果となった。


フィッシング詐欺に騙されないと思うかという図1の回答を年代ごとに集計し、回答傾向を分析した。
図12は、回答者を年代ごとに表示した回答結果である。「絶対に騙されない」と「おそらく騙されない」の合計を見ると、20代が61.5%、30代が52.0%、40代が46.0%、50代が53.0%、60代が61.0%となった。全体平均54.7%に対して、20代が平均を6.8%pt、60代が平均を6.3%pt上回る結果となった。


フィッシング詐欺に関する対策の実施状況は、図9の通り、58.6%が「何も実施していない」であった。これを、年代別に分析した結果が図13である。20代が67.0%、30代が57.5%、40代が56.5%、50代が56.5%、60代が55.5%となった。
全体平均58.6%に対して、20代は平均を8.4%pt上回る結果となった。
本調査から、SMSを用いたフィッシング詐欺は幅広い年代にとって身近な脅威であることが分かった。全回答者の約半数の45.2%が直近1ヶ月以内に不審なSMSを受信し、被害経験があると答えた回答者は7.0%、被害にあいかけたと答えた回答者は8.9%であった。怪しいSMSは宅配業者、ECサイト、金融機関など、日常生活と密接に関わる業者を装ったものが多く、被害要因は「話が本当のように感じられた」ことが最も多かった。一方、フィッシング詐欺に対する対策を何も実施していない回答者が、全回答者のうち58.6%と過半数であり、フィッシング詐欺に対する注意喚起や対策の浸透は十分とはいえないことを示唆している。年代別の分析を行ったところ、被害経験、詐欺に対する認識、詐欺対策において、20代にやや特徴が見られた。幅広い年代への注意喚起に加えて、20代に対する啓発も、今後さらに検討する余地が残されていると考える。
本調査が、実効性の高い被害防止策の検討に役立つことを期待する。
¥0
保険の役割とは?社会課題のリスクを分かち合う“社会の仕組み”
¥0
HumanX 2026参加レポート① グローバルAIカンファレンスで語られたこととは?
MS&ADインターリスク総研でシリコンバレーに駐在する野中聡です。まず、HumanXとはどのようなカンファレンスなのか簡単に説明します。
HumanXは、アメリカ・サンフランシスコで開催されるAIをメインテーマとする世界最大級のカンファレンスです。2026年は4月7日から9日までの3日間にわたって開催され、78カ国から6,500人以上が参加しました。
会場は、講演やパネルディスカッションが行われる「セッションエリア」、AIプロダクトを持つ企業が多数出展する「EXPOエリア」、数多くの参加者が面談を実施する「ネットワーキングエリア」の主に3つのエリアに分かれていました。
そうしたエリアでは、AI領域をリードする著名人による講演、大小さまざまな企業によるAIプロダクトの紹介、参加者同士の交流が行われ、会場は熱気に包まれていました。



会場では数々の講演が行われていましたが、その中から特に多くの学びが得られたと感じた講演の内容をご紹介します。
はじめにご紹介するのは、ドイツのメルセデス・ベンツでCIO(最高情報責任者)を務めるKatrin Lehmann氏の講演です。
「The Human Edge of AI: How Mercedes‑Benz Drives Innovation and Adoption(AIの時代に“人間らしさ”で勝つ:メルセデス・ベンツの革新と実装)」と題した講演の中でLehmann氏が強調したのは、AI活用の本質はテクノロジーそのものではなくAIを使う“人”と“組織”にあるということでした。
同社では、先進的なAIツールを全社規模で導入したものの、そのツールを社員が利用しないという現実に直面したといいます。そのとき、同社が重要な課題として認識したのが「社員の行動変容」だそうです。
そこで同社は、AIの活用を社員に押し付けるのではなく、リーダー自身の行動によって方向性を示す姿勢を重視したということです。具体的には、経営層が実際にAIを使い、学び、失敗する姿を見せたそうです。これによって組織内に心理的安全性が広がったといいます。
また、社員は“信頼できないもの”は使わないと考え、全社的にAIを学ぶ時間を設けることでAIに対する不安をやわらげ、活用の広がりにつながったのだそうです。
こうした環境整備の効果もあり、同社ではソフトウェア開発において従来8カ月かかっていたプロセスを8日に短縮したケースもあったといいます。
最後にLehmann氏は次のように話し、講演を締めくくりました。
「AIは目的ではなく手段であり、真に価値を生むのはAIによってエンパワーされた人材が、よりよい製品・サービス・顧客体験を生み出すことです」


HumanX 2026講演会場の1つ。多くの人が集まっていた。
次にご紹介するのは、アメリカ・アトランタに本社を置きデータ・AI・プライバシーの管理を支援するソフトウェア会社のOneTrust社でCIO(最高イノベーション責任者)を務めるBlake Brannon氏の講演です。
「Agents Governing Agents(AIエージェントによるAIエージェント管理)」と題した講演の中でBrannon氏は、次のような事例を紹介しました。
「ある企業で、AIエージェントに『売り上げを30%増加させよ』と指示を与えたところ、AIは顧客を分析して“経済的に困窮しているが、どうしても購入する必要がある顧客”を特定し、高い価格を提示。この事実が明るみになって顧客が反発し、数千人が契約を解除する事態になった」
その上でBrannon氏は、AIエージェントの数が2028年までに人間の従業員数の約4倍に達すると予測されていることから、人間のコンプライアンスチームがすべてをチェックするのは不可能となり、先ほどのような事態を防ぐことができなくなると指摘しました。
こうしたことを受けて、AIを使ってほかのAIエージェントを監視・制御する仕組み「エージェント・コントロール・プレーン(Agent Control Plane)」が近年注目されていると話しました。
Brannon氏によると、エージェント・コントロール・プレーンの具体的な動作は次の表のような仕組みになっているということです。
| 1 | 監視 | 単なるアクセス履歴ではなく、データの使用目的までAIが常時監視。 |
|---|---|---|
| 2 | 評価 | 人間のコンプライアンス基準をシステム化し、行動の妥当性を即時判定。 |
| 3 | 介入 | ポリシー違反を検知するとプロセスを停止。違反理由と正しいルールをAIエージェントに直接入力。 |
| 4 | 再実行 | 入力されたルールに基づき、AIエージェント自らロジックを修正。 |
Brannon氏の話を聞いて、紹介されたようなAIによるブランドき損が日本でも起きれば、企業は存続を危ぶまれるくらいのダメージを受けるリスクがあると感じました。深刻な人手不足に直面する日本では、AIエージェントの活用は避けては通れない道だと考えられるので、こうしたリスクにどう対応していくのか真剣に考える必要があると思いました。


HumanX 2026の会場には巨大なスクリーンも設置されていた。
今回、最後に紹介するのは、AIに関するスタートアップ企業などの創設者ら3人が登壇した「Building for Security, Compliance, and Real-World Risk(セキュリティ・コンプライアンス・実務リスクを見据えた設計)」と題した講演です。
この中で紹介されたのは採用活動にAIを導入したニューヨーク市の事例で、同市は、透明性を担保するためにAI導入にあたっては外部監査を義務付けていましたが、監査を合格しても運用してみるとAIによる差別や偏見などが発覚するケースが相次いだということです。
要因としては、AIは常に学習することから導入時点から(AIからの)回答内容が徐々に変化してしまうことが考えられ、導入時点だけの監査には意味がないことを示しているといいます。
こうしたAIの傾向を把握せずにAIを導入して誤った判断を下したことで訴訟になった場合、企業はAIを正しく管理していたことを法廷で証明できなければ、巨額の賠償リスクに加えてブランドき損の恐れもあるということです。
特にアメリカでは、こうした訴訟のリスクは非常に大きく、このリスクに対する“恐怖”が企業に実効性のあるAIガバナンスの導入を促す最大の原動力になると指摘しました。講演の内容を聞いて、AI規制のあり方について日本でも参考になる点があると感じました。
AIの活用が進めばAIの規制も強化する必要がありますが、実効性のあるAIガバナンスを実現するためには一過性のチェックに終わることなく、AIの挙動を継続的にモニタリングする体制の構築が不可欠と言えます。
HumanX 2026では、AIの最新活用事例だけでなくAIをどう安全に使いこなすかという論点が強く印象に残りました。


HumanX2026には、非常に多くの企業が協賛していた。
重要なのは、AIは単に導入するだけでなく人・組織・ガバナンスと一体で設計すべき経営課題だという点です。
AI活用を広げるには、社員が安心して使える環境づくりやリーダー自らが実践する姿勢が欠かせません。
一方で、AIエージェントの活用が進むほど、誤った判断・差別・ブランドき損・訴訟といったリスクも高まります。
そのため導入時の1回限りのチェックではなく、継続的なモニタリングと改善を前提としたAIガバナンスが必要になります。
AIを「活用する力」と「統制する力」を両立できるかどうかが、今後の企業の競争力を左右するカギになるかもしれません。
MS&ADインターリスク総研では、
AIをはじめとする最先端技術にいち早く触れて
新たなビジネスの創出につなげるため、
2名の駐在員をシリコンバレーに派遣しています。
現地の情報などについてご関心のある方は、
以下のフォームよりお気軽に
お問い合わせください。
¥0
【終了】回答共有型クイズ方式WEB訓練体験会 ~災害対応を“自分ごと”で学ぶ、参加型WEB訓練~
¥0
回答共有型クイズ方式WEB訓練|災害時の初動対応を“自分事”にするWEB訓練
¥0
電動キックボード利用者の飲酒運転の実態は?シェアリング利用者500人にアンケート調査を実施
普及が進む電動キックボードでは、シェアリングサービスのアプリダウンロード数が500万件を超え、稼働中の電動キックボードの台数は2万台以上にのぼっています。
その一方で、警察庁によりますと、2025年1月から11月末までに発生した、電動キックボードを含む特定小型原動機付自転車が関わる飲酒事故は42件と、事故全体に占める割合は11.8%でした。この飲酒事故率は、自転車の0.8%、一般原動機付自転車の0.6%と比べると10数倍となっています。
こうした中、MS&ADインターリスク総研がシェアリングサービス利用経験者500人を対象に実施したアンケート調査では、飲酒運転に関連して次のような質問も行いました。
まず、電動キックボード運転時に「守れていなかったかもしれない」交通ルールについてです(図表1)。「守れていなかったかもしれない」交通ルールのうち「飲酒運転の禁止」を挙げたのは17.4%でした。


次に、図表1の結果について、電動キックボードの運転頻度別の集計を行いました(図表2)。その結果、いずれの項目についても、運転頻度が高い回答者ほど「守れていなかったかもしれない」という回答の割合が高くなる傾向が見られました。
運転頻度が高くなると交通違反をしてしまう可能性も増えるため、この相関関係は自然なものですが、「飲酒運転の禁止」について週に2~3回以上運転する回答者の36.2%が「守れていなかったかもしれない」とした点は無視できません。
| 飲酒運転の禁止 | 車道の左側通行 | ながらスマホ運転の禁止 | 二人乗りの禁止 | 二段階右折 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 週に2~3回以上(n=116) | 36.2% | 39.7% | 21.6% | 22.4% | 26.7% |
| 週に1回程度(n=118) | 16.9% | 32.2% | 16.1% | 11.9% | 16.9% |
| 月に1回程度(n=83) | 9.6% | 18.1% | 12.0% | 6.0% | 16.9% |
| 月に1回未満(n=183) | 9.3% | 10.9% | 7.7% | 8.2% | 13.7% |
ここでは、図表1で示した、「飲酒運転の禁止」を「守れていなかったかもしれない」と回答した87名の分析を行いました。この回答者群は、本調査における「電動キックボードに関する交通ルールの理解度」の設問において、「詳しく知っている」と「主なものについて知っている」の合計が93.1%(図表3)でした。
また、「他のユーザーと比べて、電動キックボードを安全に運転できているか」の設問において、「そう思う」と「ややそう思う」の合計が91.9%でした(図表4)。この回答者群の交通ルール理解度と安全運転の自己評価がいずれも高い傾向が見られます。




本調査の結果は、交通ルールは十分に理解していて、安全運転に自信がある人でも電動キックボードで飲酒運転をしてしまう可能性があることを示しています。似たような傾向はスイスで2025年に行われた電動キックボードの事故防止に関する調査結果にも見られました。そこでは、回答者の85%が「飲酒後は電動キックボードの運転はできない」という認識でしたが、48%が過去に飲酒運転をしたことを認めています。
また、ノルウェーでは2023年に電動キックボードの運転前に「飲んでも安全だと認識されているアルコールの量」についてアンケート調査が行われました。その結果、回答者の約56%が電動キックボードに乗る前にグラスワイン1杯相当のアルコールを摂取しても安全であると回答しました。ちなみに、同国の基準ではグラスワイン1杯相当のアルコールは飲酒運転となる可能性が極めて高くなります。
前述のノルウェーの調査では、飲んでも安全だと考えるアルコールの量が高い傾向がみられるのは、「若い人」「シェアリングサービスを頻繁に利用する人」「教育水準の低い人」であることが指摘されています。図表2で示した、運転頻度が高い回答者ほど飲酒運転の禁止が守れていなかったかもしれないと回答する傾向は、本調査の結果が上記の指摘の一部と符合する可能性を示しています。
現在、ノルウェーのオスロでは、深夜から早朝にかけて、電動キックボードのシェアリングサービスの提供を止める規制が行われています。このような措置は飲酒運転の抑止に効果がある反面、公共交通機関が利用できない時間帯の移動手段を提供するという、本来のシェアリングサービスの目的を損ねることになります。日本でもこのような措置が導入されるのでしょうか。電動キックボードの利便性とリスクの妥協点をどうすべきかの議論が進むことを期待します。
【参考文献】
警察庁(2025)『パーソナルモビリティ安全利用官民協議会第12回資料3』
警察庁(2025)『事務局説明資料 第13回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁(2026)『事務局説明資料 第14回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁『特定小型原動機付自転車に関する主な交通ルールについて』
日本マイクロモビリティ協会(2025)『日本マイクロモビリティ協会安全対策について』
Karlsen & Fyhri (2021) “The joy and trouble with e-scooters”
Hackenfort et al. (2025) “Prevention of e-scooter accidents”
Mehdizadeh et al. (2023) “Drunk or Sober? Number of alcohol units perceived to be safe before riding e-scooter”
電動キックボードユーザーの意識と運転の実態 ~アンケート調査結果より(2026年版)
https://rm-navi.com/search/item/2443
「自分は周囲より安全運転ができている」と考える人が7割超? “自信過剰”をもたらす認知バイアスの罠とは?
https://rm-navi.com/search/item/1953
¥0
【終了】<2026世界禁煙デー企画>研修動画:吸う人も吸わない人もみんなで考えよう!タバコについて
¥0
RBA認証取得支援(RBAコンサルティング)|実務負荷を最小限に抑えながら、確実なRBA対応と認証取得を支援
¥0
火山災害に備える企業のリスク管理と事前対策【災害リスク情報(2026年5月)】
本章では、火山噴火の概要と企業活動・事業継続に与える影響について解説する。
日本全国に活火山が分布しているという事実は「どこに立地する事業所であっても、火山噴火により直接・間接的に影響を受ける可能性がある」ことを意味する。特に、物流・サプライチェーンが全国に展開されている現在、自社が火山の近くにない場合でも、取引先・物流拠点・重要インフラが影響を受けることで操業が停止するリスクが潜在している。
企業としては、単に「活火山が多い国である」という事実を知るだけでなく、まず自社およびグループ会社・主要取引先がどの火山のどのような影響を受けうるかを把握することが重要である。
気象庁は現在111の火山を活火山と認定している*1。そのうち、火山防災の観点から監視・観測体制の充実が必要な火山として51火山が指定されており、これらの火山については気象庁及び関係機関が24時間体制で観測・監視を行っている(図1)*2,*3。

活火山は日本全国に点在しており、2026年4月時点で北海道から鹿児島県まで13の火山に対し、噴火警報(周辺海域)及び噴火警報(火口周辺)が発令されている*4。中でも桜島(鹿児島県)や薩摩硫黄島(鹿児島県)では活発な噴火活動が続いているほか、浅間山(長野県)や草津白根山(群馬県)、雌阿寒岳(北海道)では噴煙や火山性地震が観測されている。
特に近年、社会に大きな影響を与えた噴火事例として2014年の御嶽山噴火が挙げられる。御嶽山では水蒸気噴火に伴う噴石等により、行方不明者を含めて63名が犠牲となった。この噴火は、大規模噴火の前兆である地殻変動が観測されてから、わずか10分ほどで噴火が発生しており、火山予測の難しさを露わにした事例といえる*5。
また、2021年には東京都の福徳岡ノ場海底火山で爆発的な噴火が発生し、噴出された大量の軽石が房総半島まで漂着した。この影響で離島航路の運航に支障が発生し、タンカーが着岸できないことによる電力供給の不安定化が懸念されたほか、海上保安庁の巡視艇が航行不能になるなどの問題も発生した。これは、火山災害が港湾・海運・エネルギー供給といったインフラや産業活動にまで影響を及ぼしうることを示す事例である*6。
大規模災害の中でも特に身近な地震は、突発的に発生することが多く、その被害も短時間のうちに広範囲に及ぶことが多い。地震による建物やインフラ等の被害は、ほとんどの場合、発生直後に集中して現れ、余震が収まった後は集中的な復旧作業が可能となる。一方、火山災害は継続的な噴火により、終息までに数年を要することもあり、影響範囲も広域に及ぶ場合がある。特に火山噴火による広範囲の降灰は、直ちに停電や断水を引き起こすものではないが、水道や電気、交通機関へ段階的に被害を広げていくと考えられる*7。そして除灰によってある程度状況に改善が見込まれる点においても、火山災害の被害は他の自然災害と比べて特殊であるといえる。内閣府は火山災害に対する平時からの備えとして「生活を継続する備え」「直ちに避難するための備え」「除灰作業の備え」を継続し、各段階に応じた対応を速やかにとることができるよう計画を立てることを勧めている*8。
企業にとって、長期的な火山災害は、数週間から数か月にわたり生産や販売などの経済活動に影響を及ぼすことを意味する。自社拠点に直接的な被害がない場合であっても、サプライチェーンが被災することで、原料の調達や製品の出荷、従業員の出退勤が困難になるなど、間接的な被害が生じる。このように、火山災害は自社の被害にとどまらず、サプライチェーン全体に及ぶ長期的な事業リスクであるといえる。
火山災害の主な種類と概要は表1のとおりである。火山災害では、甚大な被害をもたらす火砕流や溶岩に注目が集まりがちであるが、これらの影響範囲は比較的限定的である。一方、火山灰は風によって拡散し、遠隔地にも被害を及ぼす可能性がある。そこで本稿では、特に広範囲に大きな影響を及ぼす火山灰に着目して解説する。

| 災害種類 | 特徴 | 影響範囲 (火口からの距離) | 主な災害事例 (大規模な事例や最近の事例を中心に) |
|---|---|---|---|
| 火山灰 | 火口からの噴出物のうち直径が2mm以下のもの。ガラス片・鉱物結晶片から成る。水を含むと重くなる密度増)。乾燥時は絶縁体だが水を含むと導電性を持つことがある。 | ~数百km程度 |
|
| 噴石 | 気象庁では概ね直径20~30cm以上のものを「大きな噴石」、直径が数cm程度のものを「小さな噴石」と呼称する。 | 大きな噴石:2~4km程度 小さな噴石:十数km |
|
| 火砕流 | 噴煙や細かく破砕された溶岩が高温の火山ガスや周りの空気を取り込んで山腹斜面を高速で流れ下る現象。大別すると噴煙柱崩壊型と溶岩ドーム崩壊型の2種類がある。温度は数百℃、速度は秒速10~100m以上になる場合があるとされる。 | 通常は10km程度だが、過去には155kmにも及ぶ事例もある(阿蘇カルデラ形成時)。 |
|
| 溶岩流 | マグマが火口から液体として地表に流れ出たもの。1000℃以上の高温で触れたものは燃え上がる。速度は比較的遅く時速数km程度。到達距離・範囲はマグマの量や地形で決まる。 | 富士山では火口から約50km離れた地点まで到達した例もある。 |
|
| 火山泥流・土石流・洪水 | 火山泥流とは火山噴出物と水が混合して流れる現象。火山に降り積もった雪や氷が火山活動で融解して発生するものを融雪型火山泥流と呼ぶ。また、斜面に降り積もった火山灰などの火山噴出物が降雨によって崩壊して土石流が発生する場合もある。流速は時速数十km程度。泥流や土石流が河川に流れ込んで下流側で洪水が発生する場合もある。土石流・洪水は噴火終了後も数十年間にわたり頻発する。 | 地形や斜面の傾斜角、積雪量などにより影響範囲は異なるが、谷筋や河川に流れ込むと遠方まで達する。浅間山天明噴火では、洪水が江戸まで達した。 |
|
| 山体崩壊・岩屑なだれ・津波 | 火山活動(噴火や地震)により山体が崩壊して岩屑なだれとなる。流れ出た土砂が海まで到達した場合は、津波が発生し対岸で被害が生じる場合もある。日本史上最大の火山災害は山体崩壊による津波が原因(1792年 雲仙岳“島原大変肥後迷惑”) | 崩壊した山体の体積などにより影響範囲は異なる。 |
|
火山“灰”は、一般的に想像される木や紙の灰とは異なり、ガラス片や鉱物結晶片などから構成される。乾燥状態では、風や人・車の動きによって容易に舞い上がり、空気中に長時間漂いやすい。一方、水分を含み湿潤状態となると、重量が増して泥濘化する(図2)*10。これらの特性から、以下のような被害が予想される。
特に工場・倉庫等の大スパンの構造では降灰荷重による損傷・倒壊リスクがあるほか、空調・冷却塔・通信設備など屋外設備が降灰の影響を受けることで操業停止や品質不良のリスクが生じる。敷地面積が広い場合は除灰作業に多大な人員と時間、費用が必要となり、再稼働への大きな妨げとなる。これらを踏まえ、企業は建物・設備・従業員・物流の観点から、火山灰に対する具体的な対策を事前に検討しておく必要がある。
加えて、降灰は長期間に及ぶ場合があり、堆積厚が増すことで被害が甚大化する。そのため、除灰作業は降灰中であってもこまめに行う必要がある。降灰から身を守るゴーグルやマスク、除灰用のほうきやスコップの準備は不可欠である。


図2.湿潤状態の火山灰
(中央防災会議 大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ*10)
全国に活火山が分布する日本においては、火山灰によって広範囲かつ各地で被害が発生する可能性がある。企業としては、自社の事業に関わるサプライチェーンの一部または全体に被害が及ぶことを想定した対策が重要である。次項では、経済的損失が特に大きい首都圏を対象に、公的機関が想定する富士山噴火の影響について紹介する。
2025年内閣府は「首都圏における広域降灰対策ガイドライン」*7を発行し、宝永噴火と同程度の降灰に備えた応急的な対策や事前の準備事項を示した。ガイドラインによれば、首都圏の降灰被害の特性として、以下の3点があげられる。
火山活動は一般的に、活動休止期間が長いほど大規模になる傾向がある。富士山は前回の大規模噴火(宝永噴火)から約300年が経過しており、宝永噴火以前には約5600年にわたっておよそ180回の噴火が起こったとされるにもかかわらず、近年は小規模な鳴動や噴気を除いて沈静化しているように見える。そのため、富士山で再び火山活動が始まる可能性は無視できず、次の火山活動が大規模なものである可能性も否定できないと指摘されている。過去の火山活動のほとんどは小から中規模の噴火であり、大規模噴火が生じることは稀だが、発生時の被害は甚大である。
噴火史に残る最も大きな噴火の一つである宝永噴火では、16日間にわたって断続的に噴火が続き、宮地(1984)の調査によれば、粒径が0.5mm程度の火山噴出物が茨城県霞ヶ浦周辺まで到達したことが示されている*11。これらの情報を鑑みると、富士山で再び大規模噴火が発生した場合、首都圏全域に火山灰が降り、人命や経済活動に深刻な影響を及ぼすことが予想される。
2020年、中央防災会議は富士山噴火時の降灰について、既往最大規模の宝永噴火と同程度の規模を想定し、風向の異なる3つのケースを対象に社会的影響を検討した*10。図3に示すケース2(西南西風卓越)では、15日間の噴火で首都圏のほぼ全域が降灰の影響をうけ、東京では0.01~4.0 cmの降灰堆積が想定されている。これは、視界不良による鉄道や自動車の運行停止、停電やこれに伴う上下水道の停止など、ライフラインに深刻な影響を与える値である(図4)。また、火山灰の被害は時間の経過とともに広範囲に広がり、内閣府は道路上の火山灰を緊急的に除去するために少なくとも4日間を要すると試算している*7,*10。この間、首都圏を中心とした物流が停滞することにより、サプライチェーンが断絶し、その影響は全国に波及すると考えられる。

また、同ガイドライン*7は、特に企業等事業者に対し、従業員や利用者等の安全確保対策を求めている。首都圏で鉄道が停止した場合、自力で出勤や帰宅が困難な従業員が多数発生する。東京都は首都直下地震発生時の都内の帰宅困難者を最大4,151千人と試算しており*12、火山災害が発生し降灰が続いている場合は健康被害や視界の悪化により自宅が近距離であっても帰宅が困難であることから、帰宅困難者数は大きく増加する可能性がある。また、災害発生直後に多くの帰宅困難者が徒歩による移動を試みた場合、緊急輸送道路の閉塞や渋滞が生じ、緊急車両の通行が困難になることで復旧の遅れにつながるおそれがある*12。企業には従業員および利用者の帰宅を抑制し、数日間安全を確保する体制が求められる。
同ガイドライン*7は、富士山噴火に対する行政の対応方針を示すとともに、企業にとっては、BCP等を策定する際に自社の立地や業種、サプライチェーン等の条件に照らして、火山災害の前提条件や想定シナリオとして活用することが期待できる。


本章では、企業・事業所が火山災害に備えて具体的に何をすべきかを、(1)リスクを知る、(2)対策を検討する、(3)計画を立てる、(4)訓練・周知する、の4段階に分けて整理する。本章の内容は業種を超えて共通する項目であるため、自社の拠点構成や業務内容に照らし、火山対応計画や防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画(タイムライン)の作成に役立てて頂きたい。
2026年3月に内閣府より公開された啓発映像*8では、火山灰の被害が段階的に進行することが強調されている。火山灰は噴火後ただちに停電や断水をもたらすわけではなく、滞在・避難・除灰のうち取るべき行動を適切に選択するためには、居住地や拠点の地域特性のほか、従業員や来訪者などの特性を加味する必要がある。
まず、対象の拠点に発生しうる噴火リスクを把握するため、自治体などの公的機関が公開している近隣の火山噴火に関するハザードマップを活用し、各拠点のリスクを抽出する必要がある。図5は桜島の降灰ハザードマップであるが、桜島で火山災害が発生した場合、火山灰の直接的な影響を受けるのは鹿児島県を含む近隣3県であることが分かる。一方、降灰による物流の寸断などの間接的な影響は、原材料の不足や船舶、航空機の遅延といった形でその他の地域にも及ぶおそれがある。また、火山灰は噴火後も地表に残留するため、長期間にわたり土石流が発生しやすい状態が続く。特に斜面では、降灰後に降雨があると土石流が発生する可能性が高まるため、長期的なリスクとして十分に注意が必要である。

これらの情報を踏まえて、事業影響度の分析を行う。内閣府は災害時を想定した事業継続計画について、従業員および経営への被害を最小限にするため、拠点横断的な対応だけでなくサプライチェーン等の依存関係にある企業・団体をも対策検討の範囲に入れるよう推奨している*14。事業を構成する業務を洗い出し、それぞれについて業務が中断した場合の影響度を評価し、優先度を設定する。非常時にはすべての業務を継続することが困難になるため、事業に不可欠な業務から継続・早期復旧に取り組む必要がある。そのため優先業務をいつまでに復旧させるかの目標や、それに不可欠なリソースを特定しておく必要がある。多くの場合、業務継続に必要なリソースは多岐にわたり目標時間内に確保することは困難を伴うため、この中で特に確保できなければ復旧が困難であるリソースを、ボトルネックとして把握することが求められる。
前項で把握したボトルネック(拠点・設備・資材・ライフライン等)について、火山災害発生時にどのような被害が及ぶかを把握した上で、対策を検討する必要がある。火山災害の中でも火砕流や溶岩流など、生命に危険を及ぼすおそれが高い災害の場合は、速やかな避難が求められ、企業が事業を継続することは困難である。一方、火山灰による被害は比較的生命への危険が低いため、一定の予防的対策を講じることが可能である。火山活動による経済的打撃を最小限に抑えるため、業務継続に不可欠な設備や業務について、火山灰による被害を想定し、事前に対応策を用意しておくことが重要である。
例えば、富士山等の噴火による降灰は発電機や空調フィルタの目詰まりを引き起こす可能性があり*15、目詰まりによって換気・冷却ファンが停止した場合、機器内部で冷却不足による発熱が進行するおそれがある。さらに、火山灰に含まれる火山ガス成分によって短絡が発生したり、モーターの摩耗による故障が生じたりする可能性もある。発災の時期によっては、空調設備の室外機に不具合が生じることで屋内の室温を適切に保つことが困難となり、倉庫等では保管品の品質に懸念が生じるほか、屋内へ避難している従業員等に健康上のリスクが生じることも考えられる。
さらに降灰の影響は、特に交通・電力・水道分野に大きな被害をもたらすと考えられる*7,*10。事業所敷地内の雨どいや排水管、排水溝に火山灰が流入すると、上下水道が閉塞し、日常生活や経済活動に大きな支障が生じる可能性がある。
以下に、降灰への対策が必要な箇所およびその対策の一例を示す(表2)。

| 対策を講じる箇所 | 対策内容 |
|---|---|
| 開口部(窓・扉) |
|
| 屋外設備(空調・冷却塔など) |
|
| 屋外保管品 |
|
| 屋内設備・保管品 |
|
| 雨どい・排水管 |
|
また、首都圏における生産・消費活動の停滞は全国に大きな影響を及ぼすと考えられる。発災時は緊急輸送が優先となるため、主要道路が啓開されてからも生産物や原材料の輸送、輸出入には困難が伴う。さらに従業員が出張等の目的で発災地に滞在していた場合、通信網の混乱などにより安否確認の難しい状態が続くことが考えられる。サプライチェーンを構成する企業で事業継続に支障が発生した場合、サプライチェーン全体で生産が回復しない。サプライチェーンから受ける影響、あるいはサプライチェーンに与える影響を最小限にとどめるため、特に影響の大きい製品については平時から複数拠点で生産を行うか、非常時には代替拠点へ生産設備を移設し生産を再開する、外部へ生産を委託するなど対応を検討しておく必要がある*14。
さらに自社の要員の確保も不可欠である。重要業務を担う要員の事前育成・確保のほか、他拠点からの応援を受け入れる体制・手順の構築、および手順の共通化が事前に求められる。加えて災害時には、従業員とその家族や取引先を含めて健康に配慮した対策を整えておく必要がある。火山灰は、その粒子が非常に細かく、呼吸により肺に入り込むことや、目や皮膚を刺激することが考えられる。安全な作業環境を維持するため、表2のとおり、開口部の閉鎖と換気口、通気口の防塵フィルターを少なくとも1週間以上の対策を目安に備蓄しておく必要がある。また、降灰中の屋外作業には火山灰用のゴーグルおよびマスク、軍手の着用が不可欠である。水・食料・トイレ等の防災備蓄品とあわせて、これらの対策も確認しておきたい。
事業継続の観点から、火山災害によって想定される段階的な被害を踏まえて、行動計画を時系列に応じて定めておくことが望ましい。発災時に組織として迅速かつ効率的に対策を進めるためには「誰が・何を・どのタイミングで」実施するかを明確にし、時系列ごとの対応をまとめたタイムラインの策定が有効である。本項では、このタイムラインについて紹介する。
火山災害の中でも火砕流や溶岩流の被害を受ける可能性のある地域に拠点が立地している場合、前述のとおり原則として人命安全が優先であり、噴火中の業務継続や早期の再開を検討することは難しい。この場合は、あくまでも安全を確保したうえで在庫や代替生産等の手段をもって供給を再開させることが考えられる。反対に降灰のみが予想される拠点では、物的被害が比較的軽微となりやすく、時系列に応じて対応することができる。以下に富士山噴火によって降灰が想定される首都圏の事業所を想定したタイムラインの例を示す(表3)。表3は、あくまでもタイムラインの一例であり、実際には各事業所の特性に合わせて作成することを推奨する。
タイムラインを作成する際には、対応開始のトリガーとなる情報を確実に入手できる体制を整備することが重要である。気象庁は広域に降灰を引き起こす大規模噴火(プリニー式噴火)が発生したと判断した時点で「噴火の発生」及び「火山灰の影響が想定される地域への火山灰警報(仮)」を発表する*16としており、これらの情報を見逃さないようにしたい。また、気象庁や東京都、各事業者の提供するプッシュ型通知サービスへの登録も、情報獲得のため有効である。
さらに、ガイドライン*7では降灰による被害の様相を4段階に設定している(表4)。降灰のみが発生する地域であっても、その量が30cmを超える場合には、木造家屋の倒壊や土石流のリスクが高まるなど、除灰作業には十分な注意が必要である。段階に応じた対策の検討・実施のため参考にして頂きたい。
火山灰は時間経過に伴い堆積厚が増していくため、降灰による影響もまた経時的に変化する。ただし、継続的な除灰などの対応によっては状況の改善が期待されるため、必ずしも悪化していくだけではない。また、水災などと比較すると火山活動は予測が難しく、前兆から噴火までの時間が短い事例もあり、リードタイムが十分に確保できない可能性がある。そのため、噴火の発生可能性が高まった場合や火山災害が発生した場合、速やかに情報を獲得し、状況に応じた防災行動と事業継続対応を並行して取り組まなければならない。実際の降灰量と降灰の見込み、従業員・来訪者等の特性に応じて「生活の維持」「避難」「除灰」の行動がとれるよう、計画を立てることが望まれる。

¥0
ESGリスクトピックス(2026年5月)
¥0
GX-ETSでJ-クレジット需要は増える?2026年のカーボンクレジット市場を解説
過去のコラムでカーボンクレジットの概要を紹介しています。あわせてご参照ください。
2026年度のカーボンクレジット市場を見るうえで、重要なキーワードは3つあります。
国内では、GX-ETS※1が本格化します。その影響で、制度で利用が認められている「J-クレジット」と「二国間クレジット制度(JCM※2)」への関心が高まっています。また世界では、パリ協定6条に基づく国際的なクレジットに注目が集まっています。

※1 GX-ETSにおけるGXとは、「Green Transformation(グリーントランスフォーメーション)」の略。ETSは、「Emissions Trading System(排出量取引制度)」の略。
※2 JCMとは、「Joint Crediting Mechanism(二国間クレジット制度)」の略。
※3 NDCとは、「Nationally Determined Contribution(国が決定する貢献)」の略。各国が自主的に設定する温室効果ガス削減目標を意味する。
GX-ETSとは、二酸化炭素(CO2)を多く排出する企業が対象となり、決められたCO2の排出枠をもとに排出削減を行い、その過不足分を他の企業と売買する制度です。日本政府はこの制度を通じて、脱炭素型の産業構造への移行を目指しています。
2026年度から始まる第2フェーズ※4では、事業活動の中で直接排出しているCO2量(Scope1)が10万トン以上の企業が義務の対象となりました。電力やエネルギー、鉄鋼、素材分野などの企業300~400社が含まれ、日本全体の排出量の約6割をカバーする見込みです。
また本制度は排出削減が困難な場合、排出枠の購入に加え、「J-クレジット」「二国間クレジット制度(JCM)」を排出量の10%まで使用し、相殺(オフセット)※5できる仕組みです。この流れを受けて、特に「J-クレジット」は当面の実務で使いやすく、制度義務化を契機に需要の増加が期待されています。
J-クレジットの需要の展望を見据える中で重要となってくるのが「排出枠の上下限価格」です。なぜならGX-ETSでは、排出枠価格が高騰した場合でも、その上限価格を支払えば義務を履行したことになるからです。2025年12月、経済産業省はGX-ETSの排出枠の上下限価格の案を示しました。2026年度の上限は1t-CO2あたり4,300円、下限は1,700円です(図表2)。一方、J-クレジットの価格※6は2026年4月2日時点で、省エネルギーは4,800円、再生可能エネルギー(電力)は5,199円と、GX-ETSにおける排出枠の上限価格を上回っています。このため、現時点ではGX-ETS第2フェーズにおける義務の対象企業がJ-クレジットを購入する経済合理性は高くありません。上限価格の水準とJ-クレジットの足元の価格動向を踏まえると、GX-ETSでJ-クレジット需要が本格化するのは、しばらく時間を要すると考えられます。
J-クレジットの価格を決めるのはGX-ETSにおける需給バランスだけでなく、クレジットの創出費用、品質、プロジェクトの種類、購入者のクレジットの活用目的も影響します。そのためJ-クレジットの価格が排出枠の上限価格に必ずしも収斂しません。J-クレジットそのものの需要喚起のためには、J-クレジット独自の魅力や付加価値を付けていく必要があるでしょう。

※4 GX-ETS第1フェーズ(2023~2025年度)では、企業が任意で参加し、自主的に設定した排出削減目標に取り組む形態であった。排出枠の義務的な割当や罰則はなく、第2フェーズ以降の義務化に向けた「試行」の位置づけとして機能していた。
※5 相殺(オフセット)とは、できる限り温室効果ガス(GHG)排出量の削減に努め、そのうえでどうしても排出せざるを得ない分を、排出量に見合った削減活動に投資することで埋め合わせる考え方。
※6 J-クレジットは、GHG排出削減を実施するプロジェクトや技術の内容によって、さまざま種類が存在する。東京証券取引所では、J-クレジットの種類を「省エネルギー」「再生可能エネルギー(電力)」「再生可能エネルギー(熱)」「再生可能エネルギー(電力・熱混合)」「森林」「再生可能エネルギー(電力:木質バイオマス)」「農業(中干し期間の延長)」「農業(バイオ炭)」「その他」の9つに区分し、市場を運営している。
次にグローバルに焦点を向けたカーボンクレジットの動きについて紹介します。
長年「ルール設計の段階」であったパリ協定6条がついに「実装とNDCへの活用の段階」へと移行しており、2026年はまさにその転換点となっています。
2024年11月バクーで開催されたCOP29では、パリ協定6条の合意がなされ、完全運用化が決まりました。6条はカーボンクレジットの国際的な取引に関する詳細ルールを定めています。6条に沿った形で発行されたカーボンクレジット(以降、6条クレジット)は、各国のGHG排出削減目標(NDC)に活用できるのが特徴です。つまり、6条クレジットのルールに沿って他国で創出されたGHG排出削減量を移転し、自国のNDCの目標達成にカウントすることができます。
6条クレジットはNDCの目標実現に向けた大きな後押しになることもあり、日本を含め各国が6条クレジットの運用に向けて制度づくりなど準備を進めています。
6条クレジットには具体的に「6条2項」と「6条4項」の2つの仕組みの活用が期待されています(図表3)。2025年以降には、実際に6条クレジットを発行し、各国のNDCへ活用する事例も出てきました。

国内ではGX-ETS第2フェーズにおける適格クレジットとして、そしてグローバルではパリ協定6条に沿ったクレジットとして、JCMクレジットへの期待が高まり、取組みが加速しています。
JCMとは日本とパートナー国の間で、双方の企業や政府が技術や資金の面で協力して対策を実行し、得られるGHG排出削減量をカーボンクレジットとして、両国の貢献度合いに応じて分ける仕組みです。日本は32か国(2026年4月時点)とJCMの協定を結んでおり、世界で最もパートナー国が多い国です(図表4)。政府は、JCMの活用による累積のGHG排出削減量を、「2030年度までに1億トン、2040年度までに2億トン」という野心的な目標を掲げています。

JCMによる削減量(クレジット発行量)の実績は現状、J-クレジットと比較し限定的です。一方で上述したGX-ETSの動きによって、民間企業の取組みが活発になっています。例えばASEAN地域では、水田での水管理によりメタン排出の削減を行う手法(通称「AWD(間断灌漑)※7」)を活用した、企業のJCMプロジェクトの参画事例がここ数年で多く見られるようになりました。農業分野のカーボンクレジットを、実際のGX-ETSなどの制度活用につなげようとする流れが読み取れます。
また日本政府は、パリ協定6条に沿った形でJCMクレジットを発行し、日本およびパートナー国のNDC達成に向けた活用を目指しています。実際、2025年11月には日本-タイ間で、2026年1月には日本-モルディブ間で6条に沿った形でJCMクレジットが発行されました。こうした実際の成果を受けて、JCMを活用した6条クレジットのさらなる創出が期待されています。
※7 AWD(Alternate Wetting and Drying:間断灌漑)とは、数日おきに水田に水を満たした状態と水を落として干した状態を繰り返すという手法。土壌に存在する嫌気性のメタン生成菌の働きを抑え、メタンガス発生量を減らすことができる。
国内ではGX-ETSに大きな注目が集まっていますが、世界に目を向けると、NDC達成に向けた6条クレジットの実装も着実に進んでいます。多くの国が2030年を目標年とするNDCを掲げる中、残された数年で排出削減を進めることは喫緊の課題です。
J-クレジットは、これまでの自主的な活用に加え、GX-ETSの適格クレジットとしての新たな役割を担い始めています。また、JCMについても、GX-ETSでの活用に加えて、6条クレジットとしてNDC達成に活用されることへの期待が高まっています。
こうした動きを踏まえると、2026年は「カーボンクレジット実用化が本格的に進み始める年」と位置づけられるでしょう。
【参考文献】
COP30が示す地球の現状と今後 ~アメリカ不在でも進むネットゼロ~【RMFOCUS 第97号】
https://rm-navi.com/search/item/2493
※関連するサービスメニュー
「脱炭素/カーボンニュートラル支援」
¥0
企業倫理研究の最前線 善意が悪を生む?健全な職場づくりに必要なこととは
¥0
環境省 生物多様性の価値評価の検討指針を公表 企業が今後押さえるべき実務上のポイントとは?
¥0
SoN(自然の状態)指標の最終案 TNFD、GRI、SBTNでは具体的な活用方法の検討進む
¥0
EvilTokensで拡大するデバイスコードフィッシング 正規認証を悪用する攻撃の実態と対策
デバイスコードフィッシングは、OAuth 2.0の拡張仕様であるデバイスフロー(OAuth 2.0 Device Authorization Grant)を悪用した攻撃である。デバイスフローは本来、スマートテレビやIoT機器など、ブラウザや文字入力に制限があるデバイス向けに設計された認証方式である。利用の仕組みは以下のとおり。
MS&ADインターリスク総研にて作成
Microsoftのほか、Google、Salesforce、GitHub、AWSなど多くの主要クラウドサービスがこのフローに対応している。
攻撃者はデバイスフローを悪用し、正規の認証基盤を介して被害者のアクセストークンを詐取する。攻撃に正規のIDプロバイダー(Microsoft)が使われるため、被害者が不審に思わず処理を進めてしまう可能性がある。
以下は、実際に悪用されているMicrosoftのデバイスフローを利用したデバイスコードフィッシングの流れである。
MS&ADインターリスク総研にて作成
この攻撃の特徴は、被害者が正規のMicrosoftのページで実際に多要素認証を完了させることにある。被害者自身が正規サイトで操作するため、FIDO2※3(パスキー※4)など、フィッシング耐性が高いとされる認証手段であっても、正規サイト上で認証させることで回避される可能性がある。


MS&ADインターリスク総研が加工して作成
※「Continue to Microsoft」ボタンを押すとMicrosoftの正規認証画面に遷移する


MS&ADインターリスク総研が加工して作成
※3 パスワード不要で生体認証やセキュリティキーを使ってログインする認証規格
※4 スマートフォンやPCで生体認証や暗証番号を使って、パスワードなしで本人確認してログインできるFIDO2をベースにした仕組み
2026年2月中旬に登場したEvilTokensは、デバイスコードフィッシングをPhaaSで提供する攻撃ツールキットである。Sekoia社によると、同ツールはTelegram※5を通じて販売されており、専門知識の乏しい攻撃者でもフィッシング攻撃を大量かつ効率的に実行できる環境を提供している。
EvilTokensの主な特徴は以下のとおりである。
このようにPhaaSで提供されることで、デバイスコードフィッシングの実行ハードルは大幅に低下したとみられる。実際、Sekoia社の調査では、2026年3月19日時点で、EvilTokensの招待制グループには約280人の利用者(攻撃者)が参加していたことが確認されている。※6
EvilTokensの運営者は、現時点ではMicrosoftに限定されているフィッシングページを、今後GmailおよびOktaに対応させる計画を公表している。※7これが実現した場合、攻撃対象は企業の主要なクラウド認証基盤全体へと、さらに拡大する恐れがある。
※5 高い匿名性と秘匿性が特徴の無料チャットであり、サイバー攻撃者間の情報交換などに広く使用される
※6 Sekoia社「EvilTokens: an AI-augmented Phishing-as-a-Service for automating BEC fraud - Part 2」
https://blog.sekoia.io/eviltokens-an-ai-augmented-phishing-as-a-service-for-automating-bec-fraud-part-2(最終アクセス2026年4月13日)
※7 Sekoia社「New widespread EvilTokens kit: device code phishing as-a-service - Part 1」
https://blog.sekoia.io/new-widespread-eviltokens-kit-device-code-phishing-as-a-service-part-1(最終アクセス2026年4月13日)
対策方法としては以下のような対策が考えられる。
※8 Microsoft社「Storm-2372 conducts device code phishing campaign - Mitigation and protection guidance」
https://www.microsoft.com/en-us/security/blog/2025/02/13/~(最終アクセス2026年4月13日)
デバイスコードフィッシングは多要素認証を回避できる恐れがある。さらに、EvilTokensの登場やAI機能の搭載により、言語の壁を越えた大規模なフィッシング攻撃が展開される可能性も高まっている。
本稿が、こうした攻撃手口への理解を深め、各社におけるセキュリティ対策の強化につながる一助となれば幸いである。
¥0
電動キックボード利用者の8人に1人は交通ルールを知らない?アンケート調査から見える実態とは
本調査では回答者に電動キックボードに関する交通ルールの理解度について聞きました。その結果、「詳しく知っている」と「主なものについて知っている」の合計は87.8%となりました(図表1)。
一方で、「よく知らない」と「ほとんど知らない」の合計は12.2%となりました。これは、シェアリングサービス利用者の大半が電動キックボードに関する交通ルールを理解しているとしたものの、約8人に1人は、ルールを十分に理解せずに利用している可能性を示唆しています。利用者に対する交通ルールの周知をいかに徹底できるかが、引き続きの課題だと考えられます。


図表2は、図表1の電動キックボードに関する交通ルールを「よく知らない」と「ほとんど知らない」の回答データの合計を、性別年代別に表したものです。ここでは、電動キックボードに関する交通ルールを「知らない」と考えている回答者の割合は、各年代において女性が比較的高いことがわかります。


電動キックボードのシェアリングサービスに登録するには、交通ルールのテストに合格しなければなりません。本調査では回答者にこのテストをどのようにして合格したかを聞いています(図表3)。その結果、「自分で考えて回答した」と「事前に勉強して自分で回答した」の合計は81.4%でした。
その一方で、「交通ルールをよく知っている人に聞きながら回答した」「インターネット上の回答例を見ながら回答した」という、自らの知見や事前の学習ではなく、いわば他力を利用して合格した回答者の割合は11.6%です。


図表4は、図表3の「よく知っている人に聞きながら回答した」と「回答例を見ながら回答した」のデータの合計を、性別年代別に表したものです。いわゆる他力・ネットを頼りに合格した回答者の割合は、各年代において女性の方が多いことがうかがえます。この結果によれば、20代と50代女性のシェアリングサービス利用者の約5人に1人はこの方法でテストに合格したことになります。


本調査では、回答者の87.8%が主な交通ルールを把握している一方で、12.2%は十分に理解しておらず、登録テストでは11.6%が他者や回答例に頼って合格していることが分かりました。さらに、交通ルールの理解に不安がある回答者は、女性の割合が高い傾向が見られました。
電動キックボードによる交通違反防止には、シェアリングサービス利用者への交通ルールの周知徹底が必要だという共通認識があります。本稿が、その一助となれば幸いです。
【参考文献】
警察庁(2025)『パーソナルモビリティ安全利用官民協議会第12回資料3』
警察庁(2025)『事務局説明資料 第13回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁(2026)『事務局説明資料 第14回パーソナルモビリティ安全利用官民協議会』
警察庁『特定小型原動機付自転車に関する主な交通ルールについて』
日本マイクロモビリティ協会(2025)『日本マイクロモビリティ協会安全対策について』
電動キックボードユーザーの意識と運転の実態 ~アンケート調査結果より(2026年版)
https://rm-navi.com/search/item/2443
電動キックボードの法改正から2年、交通違反や事故の現状は?
https://rm-navi.com/search/item/2306
¥0
GPIFが高評価したサステナビリティ開示のポイント|マテリアリティ・財務影響・ガバナンス
¥0
不確実な時代こそ、サステナ戦略には長期視点が必要
¥0
食品安全の視点で見る加工食品の海外輸出のリスク対策 【第4回】食品輸出業務を踏まえたFSMSの見直しや運用上の留意点
¥0